台湾、インド、タイに訪問して(3)

〜発展途上国返上、タイ経済の発展と活気〜
(豊富な食材でかもし出すタイ料理の美味)

数多くある入国審査のカウンター前は、どれもこれも40人50人と長い
行列、遅々として進まない審査手続きに苛立った、タイ訪問の初日が
始まりました。

タイのバンコク国際空港「スワンナプーム」への到着は早朝の6時30分、
インドのバンガロールから4時間半ほどのフライトですが、睡眠がよく
取れず、寝ぼけた頭と疲れた体で、ごった返す旅行者の渦に翻弄され、
「おいおいこれはどうしたことだ?」タイの入国審査は外国人旅行者に
対し不親切、こんなに時間がかかるとは大変失礼ではないか。

26年前から何十回となく訪問し、友人も多くいる親タイ派の私ですが、
この早朝の喧騒と30分以上も待たされる入国手続きに、いささか怒りが
沸いたほどです。

もっともこのスワンナプール国際空港は、面積では成田空港の4倍近く、
空港ビルディングの広さは56万平米を越える世界一の面積を持っている
アジア最大のハブ空港です。

ヨーロッパ、アフリカ、中東、南アジア、オセアニア、アメリカ西海岸、
日本、韓国、中国などから、前日の午後から真夜離陸した航空機が、
早朝一編に到着するスケジュールになっているので、入国審査カウンターが
70以上あるといっても、大変な混雑が発生します。

これら入国者は半分が観光、半分がビジネスのための訪問と思われますが、
このようにタイを訪れる外国人の数は年々増え続けています。

それと言うのもタイは、いま旬を迎えた発展著しい途上国で、観光資源を
沢山持ち、バカンスにはもってこいの設備の整ったリゾート地も完備し、
ましてそれが安価で過ごせる魅力がありますので、休暇をタイで過ごそうと
する外国人も沢山います。

さらに産業の発展は、世界各国から外貨を集め、工場を誘致し東南アジア
一番の工業製品の輸出国に変貌しようとしています。

理由のいくつかに地理上、地政学上東南アジアのほぼ中央に位置し、良質な
労働力と、タイ人の優れた国産感覚、急激に整備されたインフラストラク
チャー、民主主義の何にも梗塞されない自由体制、などがあげられ、
外国人も住みやすい環境があります。

それゆえビジネス目的での訪問者も多く、さらにタイ在中の外国人の数も
東南アジア一だと思います。

ゆえに個人的にはこの国は、すでに途上国ではなく、立派な経済大国と
思いたくなるような、全てに活気がみなぎっている今日この頃です。

一昔前のタイは農業国で、輸出製品も農業産品が多かったが、現在は輸出の
90%が工業製品に取って代わっています。

産業構造はいまだ農業が40%、製造業は15%ですが、GDPに占める
位置は、農業12%、製造業35%と逆転しています。1人あたりのGDPは
5000USドルを越えています。

しかし、この国は政治的な混乱がここ何十年となく続き、発展のブレーキに
なっていることも、皆さんよくご存知でしょう。

いま国外にいる元首相タクシン派と、反タクシン派との間で、赤シャツと
黄色シャツに別れ、国を二分する政治闘争が1昨年まで続いていたことを
皆さんがよく知っていると思いますが、あのような闘争がなかったら
もっと充実した、国家となっていたでしょう。

もう一つ、昨年夏から秋にかけて発生した、チャオプラヤー川の氾濫による
洪水がなかったら、昨年の経済はもっと発展していたでしょう。

しかしあのような天災がありながら7.8%の成長率を上げる底力がタイ
にはあります。

ご存知のよう、日本企業のタイ進出は1300社を超える数で、昨年の
洪水につかり被害を出した工業団地の企業は、ほとんど日本から投資移転
した企業の工場でした。

その被害にもめげず、タイ産の日本ブランド商品はアジア諸国はもとより、
本家の日本へ逆輸出されている事実は、タイの労働者の質の高さと生産性の
素晴らしさを証明する事になります。

私とタイ国との付き合いは足掛けで27年になります。

タイ産の鶏肉と焼き鳥を生産し、日本に輸出する仕事のお手伝いをすること
からスタートしました。

それから70回ぐらい、韓国、台湾に次いで数多く訪問してる国で、知己
友人も多くいますし、タイの皆さんのやさしさ、タイの食事の美味しさ、
タイのホテルの快適さ、全て気に入っています。

さらに加えれば、ものすごい暑さと、交通の渋滞とガソリン臭さがなければ、
もっと好きになれるでしょう。

ことにタイ料理は中華風な雰囲気を持ち、程よい辛さとスパイシーな風味、
新鮮な海産物が私の好みに合います。

その食事を楽しみに、レストランを選び、ホテルを選定しています。

私の最近の定宿は、ラチャダーピセーク(Rathadapisek)通りにある、
エメラルドホテルです。

以前は日本人に馴染みの繁華街タニヤ、パッポンがあるスリオン通りの或る
ホテルでしたが、交通渋滞で時間が無駄になる理由で、15年前ほどから
昔の国際空港ドンハンに近く、交通の便利性も考えラチャダー通りに変え
ました。

このホテルはなかなか便利で地下鉄駅が目の前だし、近くにロビンソン
デパートがあり、まして気に入ってるのは、周囲にいくつもの美味しい
レストランがあることです。

今回もその一つ、カニ料理で有名な「ソンブーンシーフードレストラン」に
当地の代理店の社員2名と、わが社4名の合計6名で夕食を食べに行き
ました。

この店の本店はサイアムスケアー近くで、各界の有名人が訪問する名店で、
日本人としてはタイ王室と関係の深い秋篠宮や、小泉元首相などが訪れた
こともあるのが自慢のようです。

私たちが食事したのはその支店ですが、4階建てのビルに客席400を
超える大きなレストランですが、この日も超満員の盛況でした。

それだけ食い物の味にうるさいタイ人の舌を魅了させる、秘伝の味が
この店の料理にあると思ってもいいでしょう。

私はすでにこの店には何度となく通っていますので、どんな料理が私の
舌に合うか、また同伴する日本人には何を注文したらよいか、大体
経験的に分かります。

なんと言ってもこの店の代表的料理は、ストーンクラブ(石蟹)の
カレー味の卵がふんわりかかった炒め料理で、名前をブンバッポンカリー
といいます。

人数により大振りのカニを、2匹、3匹と使い、食べやすいサイズに
カットし、カレー炒めの後卵をかけた料理ですが、その味の微妙な
風合いは、多くの日本人の舌には合います。

さらにそれを上回る味と思えるのが、20センチ以上もあろうかと
思われる大型のシャコのガーリックフライです。

ニンニクとナンプラーの味がマッチし、大型のシャコの味を一段と
引き立てさせます。

日本ではなかなか味わえない醍醐味です。

同伴しているわが社のスタッフたちも、異口同音にその味には感嘆
します。

そのほか白身魚の蒸し物、タロイモの裏ごし団子のフライ、空芯菜の
炒め物、白エビのボイル、そして最後にデザートとしてマンゴーと
ココナッツミルクで炊いたもち米のカオニャオマムアンとなります。

このマンゴーのデザートはことに日本人の好むところで、最高級の
マンゴーの芳醇な香りと甘さ、ココナツ風味の甘味なもち米の
歯ごたえは、まさに南国エスニックの味となります。

そのほかスープとあと一品、タイ米のサービスがつき、ビールを6本
ほど加えて、6名で約4000バーツを少し越える値段、日本円で
1万2千円ほどの安さ、ちなみにカニカレー炒めが一番高くて
2500円ぐらいです。

翌日代理店の社長に招待されたタイ料理レストランでは、仔豚の
丸焼きが出ましたが、おそらく日本円で3000円ぐらいでしょう。

タイには中華料理の店も多く、北京ダックを食べさせる店、フカヒレ
専門店などなかなかの味を演出する店がありますが、日本のようには
高くなく、北京ダックで1羽2000円から3000円で充分です。

ところで私の年齢になりますと、こんな料理を毎日食べていたら病気に
なります。

「昼は簡単なものにしよう」そんな要望に同伴者も付き合ってもらって、
タイ名物の屋台などでどんぶり1杯の麺類ですごすことがあります。

今回も、となりのスーパーマーケットのコンコートにある、いくつも
出展している店内屋台的な店で、米の粉でできた麺のセンミー、
センレック、コイテオなど、丁度かけうどんのようなスープ麺として
食べて、体の調整をします。

1杯日本円で130円ぐらいの安い食事ですが、このスープの味は
捨てたものではありません。魚介類で摂ったスープにナンプラーと
唐辛子の味が、妙にマッチし美味しさをかもします。

こんなことを書いていると、タイに食事のために訪問したように見えますが、
いやいやしっかりとビジネス相手と、宿泊しているホテルで何回か会談を
しています。

そして先方と真剣に討議した内容は、農作物、鶏肉、養殖エビなど日本に
輸出している食品の安全を確保するために、私どもの薬に変わる畜産の
生菌剤と、農産物への有機フミンの使用を進めました。

その後、帰国した我々に対し、タイサイドから新しい動きが起りそうな
気配なので、タイ産の輸入食料品の安全性が一つずつ改善されることを
期待しています。