2012年5月アーカイブ

豚の人工授精と精液希釈剤

  ~家畜の改良と繁殖には人工授精が便利~
    (雄は人の手により精液提供)


人間でも人工授精出産が、簡単にできるようになり、時としてそんな行為が話題になります。

そもそも生殖とは、種の遺伝子を将来の子孫に残すための、性的欲望行為ですが、そこには本能に支配されながらも、互いに求めあう感情と愛が仲立ちする、本来は崇高な生殖作業です。

それを人工的に受精させようとする行いは、すこぶる即物的で、人間的道徳感から見たら、少し間違っているようにも思います。

しかし健全な夫婦でありながら、どちらかの生殖機能の欠陥で、なかなか子宝に恵まれない場合、配偶者間で人工授精を行い、無事可愛い赤ちゃんを授かった話は、ハッピーな結果で納得もできます。

ところが非配偶者間人工授精の場合は、配偶者の精子でないドナー(精子提供者)が何者か分からない、最も分からないことが条件になる出産だけに、生まれた子供に対し、複雑な感覚が残り難しい問題です。

そんな人間の人工授精生殖と比較すると、豚や牛などの畜産動物の人工授精の目的ははっきりしています。

家畜改良の迅速化と経費節減と作業合理化の、人間本位の利益追求の目的で、動物の意思も生殖の道徳感など、少しも入っていません。

また、優秀な遺伝子の系統は、沢山の子供を生み発育が早く肉質が良かったり、多くの牛乳を生産すると分かれば、その優秀な遺伝子を普通の能力の家畜に植えつけても、その子孫は遺伝的進化で生産性が高くなり、経済的に利益となります。

畜産動物へ人工授精の利点を箇条書きにしますと

1、優秀種畜の高度利用
2、家畜改良の促進
3、遺伝能力の早期判定
4、受胎率の向上
5、自然交配が不可能な家畜にも可能
6、精液の遠距離輸送が可能
7、雄の飼養頭数削減で経費節約
8、伝染病予防が行いやすい
9、遺伝子資源の管理保存がしやすい
10、経済的に利益性が高い

などがあげられます。

強いて欠点を挙げますと

1、1回の種付けに雄精液採取など時間が掛かる(精液購入だとかからない)
2、受精精液の採取技術と受精技術の習得、採取場所の設定などの準備
3、精液活性のないまま注入すると生産に問題が起きる
4、生殖器に損傷を与える
5、種雄と器材の管理が悪いと伝染病が蔓延する
5、作業従事者の能力によって成績に問題が出る

などがあげられます。

しかし、畜産動物での人工授精はかなり以前から、経済行為として行われていた実績があるのは、利点が多かったからです。

人工授精がもっとも早く普及したのは牛で、一説には250年の歴史があるとも言われます。

そして現在、野生の牛や長期間放牧している大牧場の自然交配を除いて、牛舎飼育されている牛たちは、雌の体に雄が乗る本交配で生まれる牛は、ほとんどありません。

ことに日本の黒毛和牛などは、肉質までもが血統に影響されることがわかってますので、優秀な雄の精液は引っ張りだこです。

これも人工授精が普及しているからできることです。

ことに牛の精液は凍結し長期保存ができるため、雌の発情にあわせ、解凍して適宜に使用できるのでますます人工授精の便利さが目立ちます。

また優秀な血統の牛が外国に居る場合、わざわざ生きた牛を移動させず、精液だけを凍結して持ち運べば、経費も削減されリスクも少なく、牛の改良は進みます。

そんなところにも人工授精の利点があり、ことに哺乳動物では、雄の生殖器から上手に活力ある精液を取り出すことができ、多くの雌に無駄なく授精できるメリットもあります。

牛の改良ではもっと進んで、優秀な血統の雌牛に排卵剤を飲ませ、優秀な雄の精子を人工授精し、複数の受精卵を受胎させ、その受精卵を取り出し、複数の普通の雌牛の子宮にそれぞれ一個づつ受胎させますと、一編に血統的に優秀な牛が、普通の牛から数頭同時出産することができます。

これはET法(Embryo Transfer)と言う胎児移植生産法で、業界ではかなり普及をしています。

こうなるとまさに「腹は借り腹」の例え道理の方法が、まかり通る産業となります。

このように人工生殖産業はすすんでいます。

血統を重んじる競走馬以外は、犬も猫もその他動物園で見られる多くの動物も、人工授精で繁殖させることが、これからも重宝がられそうです。

卵生動物の鶏のひよこ生産にも、人工授精が一昔前はかなり行われていました。

私も50年前、雌種鶏をケージ(籠)飼育し、雄鶏から自分で精液を搾り、人工授精した経験を持っていますが、いまは人件費の関係で、自然交配飼育が一般的です。


   ~豚の精子は1回の射精で500億個~


さて豚の人工授精は、牛と比較すると新しく、まだ50年前後の歴史しかありません。

牛と違い体型が小さいだけに、雌雄を自然的に交配させるのは簡単で、人工的な技術もさほど必要とせず受胎も確実で、習慣的に人工授精を行わなくても、差し支えありませんでした。

今日現在でも、この本交配で繁殖をしている養豚業者の数はかなりおります。

ただし、1回の交配で1頭の雌豚にしか、受精できないので、せっかくの雄精液はかなりの無駄となります。

そもそも雄豚の1回の排泄精液量は250cc、その中に500億からの精子が生存しています。

このものすごい数の精子を希釈分散して、雌1頭に10分の1の50億、20分の1の25億を注入しても充分受胎をします。

それだったら、1頭の雄の精液を1頭の雌豚だけに使うより、10頭の雌に使って受胎可能できるなら、それに越したことはない、そんな根拠から人工授精の経済的優位性も検討され、やがて普及されるようになりました。

ことに産業が大型化し、母豚頭数も何百頭、何千頭、あるいは1万頭を越える農場となりますと、それに必要な雄種豚を余計に抱える費用もばかにできず、人工授精の技術の進歩があれば、それに切り替えることも容易でした。

基本的には自然交配の農場の場合、1頭の雄豚が抱える雌豚の数は大体13頭ぐらいで、好事家の目から見ますとハーレム状態でうらやましいかもしれませんが、残念なことに同じペン(部屋)で同居しているわけではなく、隔離された専用の豚舎の中で雄豚は飼育されています。

交配が必要なときだけ、柵から引き出され雌豚との会合を持ちます。

また種雄としては、精液放出量と精子活力度が絶えずチェックされ、能力が少しでも落ちれば、すぐに肉豚市場行きです。

自然交配と比較すると人工授精の農場では、1頭の雄豚は75頭の雌豚に精液を分配することが計算上可能で、自然交配の6分の1の数で用が足ります。

ただし種雄としての能力は一層厳しく査定されます。

1頭の雄が、75頭の雌を支配するとは、ますますうらやましく見えますが、ところがそうとは限りません。

可哀そうな事に、人工授精農場の雄は、精液を射精の訓練のため、第1回目だけ本物の雌豚と性交させますが、それ以後は雌の発情臭を嗅がされ、雌に似させた擬似台に乗っかり、人工授精師の手によるペニスの摩擦で、専用の精液採取ビンに射精させられます。

これらの作業場の話は後半に詳しく述べますが、人工授精とはとにかく、豚の生理とか本能を上手に人工的に操作し、子豚をいかに経費少なく生産するかに目的が合わされていますので、雄豚は人間の手の感触しか知らずに射精する、可哀そうな残酷な物語となります。

採取された精液は、希釈液で薄められ、少しの時間溶液と馴染まされ、人工のペニス(カテーテル)に装てんされ、人間の手によって雌豚の深部まで注入され、性交の喜びもないまま精液を子宮に送り込まれます。

系統にもよりますが、豚は1回に10頭以上あるいは12頭、14頭まで出産する多産系動物でお産も軽いです。

それを年2回から2.3回ぐらいの割りで出産させます。

ですから1頭の雌豚は少なくとも1年間に23頭ぐらいの子豚を生みます。

それゆえ養豚産業では、農場の規模を現す数値は、雌母豚の数量の多寡で表します。

「あの農場は母豚が800ですから、中堅の農場です」といいますと1年間に18000頭から18400頭の肉豚を生産している農場を表し「あの養豚業者は大きい、5農場あわせて5000頭の母豚」といえば10万頭以上の肥育豚を年間生産していることになります。

それほど母豚中心の生産指数が、経営の良し悪しを判断する指標となりますので、母豚1頭あたりの生産子豚数は重要です。

もし1回の出産で8頭しか生産しない母豚と、12頭生産する母豚とを比較すれば、年間18頭と27頭その差は9頭になります。

9頭しか生産しない農場は、肉豚販売量が12頭より少なく、経費が同じでしたら、利益は大幅に落ち込みます。

それだけに自然交配にしろ、人工授精出の生産にしろ、母豚の子豚生産能力が重要です。

当然生産性向上のため、飼育技術と栄養、遺伝的交配、病気対策、さらに人工授精の技術面でも、たえず改良を進めめなくてはいけません。

その改良のなかに、精液を希釈する希釈剤の良し悪しも大切な条件になります。

次回後半は、豚肉ができるまでの生産農場での作業から、人工授精のテクニック、希釈液の目的使命まで詳しくお伝えしましょう。




お断り、来週6月6日より8日まで、名古屋のポートメッセ名古屋で国際養鶏養豚総合展(IPPS)が開催され、弊社も出展いたします。

畜産資材を展示し、筆者も名古屋へ出張いたします。

そのため来週はメルマガをお休みいたします。


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