食の安全と中国

〜お金儲けのためなら安全も無視〜
(危ない中国産食品を良く知るのは中国人)

中国産の食品の安全性について、面白い統計調査があります。

これは日本と中国双方の消費者に行った調査で、日本は中国からの輸入物、中国は当然自国で生産された食品についてです。

まず日本人の97%が、中国産は不安があると答えたのは、いままでの中国産食品が起こした不祥事から見たら至極もっともだと思いましたが、中国での調査で中国人の79%が中国産食品の安全性に不安があると答えていたことには驚きました。

中国人そのものが、国内で生産された食品、ことに農作物と畜産物、さらに加工食品まで、安心して食べられないものだと認識していることになります。

中国食品がどんな状態で生産されているか、消費者はよく分かっていて賢明と言いたい所ですが、そんな危険な食べ物でも、食べて生活しなくてはならない中国の人たちは、気の毒で可哀そうな状態だと憐憫を覚えます。

こんな状態になった背景は、中国共産主義国家が持っている宿命だとでも言いましょうか。

農地の国有化と農本主義により、建国以来人民を飢えさせてはいけない使命感が、生産拡大の至上命令となり、とにかく何が何でも多く作った人が褒められる産業として、食料が生産されてきた過去があります。

当然、化学肥料に頼り農薬の使い放題が生産性をあげる一番の近道で、品質の安全より生産性が優先し、農畜産物食品の汚染や農薬、抗生剤等の残留はマイナス点にならなかった基準が、中国の食品の常識になったところに、要因があります。

そこへ持ってきてここ数十年、開放経済の流れで化学産業が急激に発展し、その工場から排泄される汚水の垂れ流しが、河川や湖沼に重金属の汚染をもたらし、それが農業用水に使われ、さらに生活用水にまで使用され、農作物の汚染をより深刻な状態にさせました。

さてさて困ったことですが、輸入者としての日本人は、危険と思えば輸入を差し止めることが出来ますが、中国人はそうゆう訳には行きません、その解決は中国政府と中国の人たち自身にゆだねる以外ありません。

こんな中国製の農産物や食品に対し、インターネット上に、中国人の書き込み意見がいくつも拝見させられ、現在の中国人の自虐的なつぶやきが聞こえてきます。

「こんな危険な食品でも食べなければ飢えて死ぬ、食べれば毒で死ぬそんな運命」とのおもしろいジョークがありますが、笑えない現実なのでしょう。

さらにきついのは「官僚は飢え死にするより、毒で病死したほうが良いと考えている」農薬使い放題と、化学工場などの汚水取締りと規制の強化をしないことを皮肉ってるのでしょう。

「中国人は毒を浄化する、肉体的強さがある」とか

「米から大量の鉛や水銀が検出される、一石二鳥の効果で、偉大なる科学的進歩」

「政府は米や食品に重金属汚染量の標記を義務つけるべき」

こうなると、皮肉と言うより自虐です。

消費者の悲しみの声の裏側にやりきれない思いも感じます。

ツイッターはまだまだ続きます。

「中国ではお茶を飲んではいけません、農薬茶、毒茶です」

ことにお茶は熱湯で煎じます、溶け出したのはお茶の成分より農薬成分の方が多いと言うことです。

そんな理由からか、台湾に押し寄せる中国人観光客のお土産の第一番に、台湾産ウーロン茶があることを台湾の友人から聞きました。

お茶だけでなく、乳児用粉ミルクも大切なお土産のようで、同じことは日本観光の中国人のお土産は電気製品とブランド品と粉ミルクのようです。

乳幼児を持つ中国のお母さんたちは、中国産の粉ミルクを信用しません、外国資本のスーパーマーケットに陳列される外国ブランドの粉ミルクは、瞬く間に買い占められ払底するようで、ヨーロッパの輸出国は、中国への輸出を規制するようになったと聞きました。

「下水道の汚水から精製油を作る話」「美容院、床屋、病院などから集めた毛髪でアミノ酸醤油を生産」「ネズミ、キツネ、ミンクなどの肉を赤色発色させ羊肉として流通」「死んだ豚を買い付けて、加工肉として販売」など、私たちが驚くような実態が最近までまかりとっていた中国ですが、さすがに全て摘発され禁止になったようです。

そんなことがあってか、先日3月23日の新聞に、上海の黄浦江に合計で1万5000頭以上の豚の死骸が浮揚しているニュースが掲載されていました。

鳥インフルエンザ発生の最中、豚に感染したかと騒がれましたが、そうでなく死んだ豚を引き取って流通する業者が、取り締まりに合い捕まり、処分できなくなった養豚業者が、仕方なし川に捨てたと分かりました。

この豚は黄浦江上流の浙江省の嘉興にある養豚地帯が捨てたもののようですが、この地区は合計で750万頭の大生産地で、今までも死んだ豚の河への放棄は行っていましたが、下流の上海市などの職員は、たいした数ではないと処理していたようです。

しかし今回の数は大量で世間に知れ渡ってしまい、問題が大きくなりました。

なぜかと言えば、この河の水は上海市の水道水だからです。

豚の死骸が何回も流れている河の水を何の抵抗なしに、水道水に供給する市の職員の衛生観念が、ある意味で中国人の衛生感であり水道水の安全基準なのでしょう。

最も中国人は生水を飲みませんから、少しぐらい病毒菌が混じっても煮沸すれば問題ないというのが、生活習慣かもしれません。

こんな役人の神経も問題なら、何の抵抗もなく川に捨てる養豚家の神経も問題です。

また何の理由でこんな大量な豚が、一編に死んだか私は疑問になります。

一説には飼育環境と管理の劣悪、あるいは薬品の間違えと多給などが死亡の原因と思われますが、血液検査の結果ではサーコウイルス(多臓器発育不全症候群)が検出された報告があるようです。

ただサーコウイルスは、子豚に発病し死亡率も20%ぐらいですので、子豚だけでなく大きな豚もあったようなので原因が分かりません。

世界の豚生産数の45%以上を持つ中国、儲かれば無法でもマナー違反でもお構いなしの産業人、おそらく無茶な管理と薬のやりすぎで、殺さなくても良い豚まで殺したのでしょう。

薬漬け畜産で、あらゆる肉から抗生剤の残留が見つかる中国の実体は、一朝にして治るものではないでしょう。

世界的に有名なケンタッキーフライドチキンの中国産鶏肉から、違法な抗生物質が検出され、さすがの政府も営業停止命令を出したのはつい最近のことです。

しかし、こんなことは当たり前で、たまたま検査されたから見つかったので、全ての鶏肉、鶏卵、アヒル肉、豚肉、牛肉、養殖魚のうなぎ、鯉、なまずなど、恐ろしいほど抗生物質と農薬が残留しています。

中国料理の定番フカヒレの40%以上は人造フカヒレであることは有名な話です。

春雨の原料である緑豆の粉と、海藻からとったコラーゲンとを練り合わせたもので、植物性のフカヒレです。

鮫の乱獲が問題になっているとき、資源保護のためになると嘯く中国料理人がいますが、問題は偽者のフカヒレを本物らしく、また値段も本物と同様に高くしているところでしょう。

下水から採取した食用油も、リサイクルで資源の再活用だ、と威張る中国人もいるようです。

中国語に「向銭走(シャンチェンゾウ)」と言う新語があります。

お金儲けに向かって闇雲に邁進する意味のようですが、お金儲けのためなら、何をやっても構わない、やがて国が富み経済発展すれば、世界中から尊敬される、国家のためなら無法も通る、の論理はいかがなものでしょう。

昨年秋北京を訪問し、中国の高級公務員を定年された要人と会食した際「ここの食堂の肉は、薬品を一切使わないで飼育されたもので、安心ですから」と何回も強調されたことを覚えています。

またその人の口から「政府要人もこの肉は安心だとして、食べていますから」と、安心安全を定義する妙な例えをしていました。

中国の人は、いや中国をリードする要人たちは、中国の食品の不安を、もっとも知っているよい証左でのようにも思います。

食の安全はもう少し続けます。