たまごの話

〜卵の良さは色と硬さと安全性〜
(世界一の日本の卵)
「たまごは物価の優等生」と言われて久しいです。

その最大の理由は、終戦後70年たって全ての食品が何十倍、何百倍と価格が騰がったのに、たまごだけがほとんど変わらず1個20円前後の値段で推移していることへの驚きと称賛です。

私が知る限りでは70年前、日本そばの値段、風呂や銭湯の入浴料、電車の一区間の運賃と卵の値段がほとんど変わらなかったですが、そばは500円、銭湯も500円以上、電車は160円と変わりましたが、卵はせいぜい2倍になっただけです。

とにかくその卵が昨年の後半は、近年にない高値で推移し、卵価安で経営が苦しかった養鶏家を喜ばせました。

「たまごが高いなった」消費者は卵は安いものとの思い込みがあるだけに、少し値が上がると敏感に反応します。

たしかに昨年の後半1パック10個で250円にもなりました。

その卵の卸価格が年初からだいぶ安くなっています。

クリスマスから正月と卵需要が増え価格も高かったが、需要が一段落した反動で毎年のことですが、年初は安くなります。

実際の相場は1キロ250円(市場卸値)していたものが170円台にまで下がりもしました。

ただ1月20日現在は180円前後です。

さてさてなぜに卵の価格が気になるかと言いますと。

「たまごが安い」と消費者の思い込みが強いから、少し上がるとすぐに反応します。

またスーパーマーケットなどの営業戦略で、安い卵を売ることで生鮮食品全体が安いだろうとのイメージを作らせ、購買意欲を持ってもらうおとり商品の代表が、卵であると聞いたことがあります。

それだけに昨年のよう卵価が高いと、儲けなしで「安いたまご」を販売し、目玉商品としてお客サービスをした店も、卸値が下がりほっとしてると思います。

それほど卵の価格が庶民感覚の中にしみこんでいるということになります。

それはとりもなおさず、卵がどんな家庭の冷蔵庫の中に買いおかれ、最も身近な手軽な食品として重宝されているからです。

日本での卵の流通形態は、透明なプラスチックの容器にL、M、Sなど、大きさ別に10個入ったものが、スーパーマーケットでも街角の小さな食料店でも同じように売られ、衛生的です。

ほとんどの卵が10個入りの容器に入っているのは、生まれた卵をきれいにし、傷や中身をチェックし、サイズ別に仕分けるパッキングセンターで作業され、賞味期限を印字したシールが張られて出荷しているからです。

全ての卵は楕円の大きいほうを上に、反対側の少し細い殻を下にパックされています。

これは生理科学的に法則があり、太い殻の方には気室という空気が入った空間があり、それが卵の上部だからです。

雛を孵化する孵卵機に卵をセットするとき、この上部を上にして並べ温めますと、雛の頭部がこの大きい方にあることがわかります。

卵がなぜ楕円形で、太い方と細い方があるかと言えば、親鳥が巣で抱卵するとき巣の中からこぼれ落ちないために楕円になったのです。

卵をてテーブルの上で転がすとその理由がわかります。

転がった卵はぐるぐるとまわって元の位置に帰ります。

これが大切で、家禽になる前の鶏は野生で、おそらく飛翔してたでしょうし、高い木の上に巣を作りその狭い場所で卵を産み、転がってもまた巣の中心に返ってきて親鳥の腹の下に入る、物理的形状を生物学的に作ったのでしょう。

もしピンポン玉のような丸い球体ですと、戻らずそのまままっすぐ転がり、巣の外へ転落します。

ちなみに親鳥の体温は42℃前後で、羽の下で温められる卵は39℃前後で21日目に雛になります。

その間親鳥は足で卵を転がし、卵黄から受精した雛が、卵の中で絶えず中心にいて発育するようします。

転がさず片側によりすぎますと殻と雛が癒着し孵化できません。

いまは人工的な電気孵化器の中で何万個と種卵をセットしますが、親鳥の足と同じよう転卵しながら発育させます。

雛になる卵は受精卵で、食料にする卵と違い種卵と言います。

種卵受精卵と言っても特別の卵ではなく、雄の精液が卵黄の胚芽に受精されているので、これを温めますと発育始めます。

そこで15℃前後の低い温度で保管しますが、1週間が限度で精子の活性が無くなります。

これは食卵として食べられますが、卵としての栄養には変わりありません。

ただし雄1羽に雌10羽を同居する施設と、雄の餌だけが余計に必要となりますし、面積当たりの飼養数も少なくまた管理に手間もかかりますので、食べる卵より生産コストが高いです。

卵をたくさん産む採卵鶏は、その両親の雄鶏、雌鶏の血統が大切で、その組み合わせも育種会社で決定し、勝手に違う雄雌を交配しても、できた子孫の鶏は卵を産みません。

この優秀な交配を作るため育種会社は、さまざまな鶏の遺伝子を解明し、丈夫で病気に強く、少ない餌で沢山の卵を産む、雄系雌系の鶏を選抜し、その組み合わせを何代にもわたって実験し、現在市販されている卵を作る雌どりを育種しています。

それを業界ではハイブリッド育種と言います、ある意味では遺伝子の操作ですが、植物の遺伝子組み換えとは違い、あくまで組み替える遺伝子は鶏です。

ただ、いろいろな系統の遺伝子が入っていることには違いがなく、最後に交配される雄系と雌系が決められ、その交配して生まれた鶏は少ない餌で沢山の卵を産むのです。

この改良技術があったから、卵は物価の優等生にもなることができたのです。

その生産性の良い雌鶏に違う雄を交配して採卵鶏を作っても、卵をあまり生みません。

遺伝子がバラバラになって分解してしまうからです。

昔ならったメンデルの法則を実験的に見るようです。

その意味では、現在の産卵鶏は雑種の遺伝子組み替えの優れ鶏ですが、一代のみで子孫が作れない産卵目的だけの機械のようなものです。

この改良の基礎は、世界中にある地鶏の中から、優秀な遺伝子を見つけ出すことから始まっています。

余談ですがブロイラー鶏肉もさまざまの遺伝子の交雑鶏から作られ、種卵を産ませる目的と、さらに少しの餌で沢山のブロイラー肉を生産できる、太る遺伝子も組み入れますのでより難しいです。

卵も白い色の卵と赤い色の卵がありますが、これも遺伝子の違いで、白い羽の鶏は白い卵、赤い羽根や黒っぽい羽根の鶏は赤い卵を産みます。

卵の栄養面では変わりません。

赤い卵は暖色で美味しそうな感じがするし、白い卵は清潔で馴染みがあります。

人それぞれの好みで選べばいいでしょう。

赤い系統鶏と白い羽の鶏を親にもった交雑鶏もあり、中にはピンクの桜色の卵を生む鶏もいます。

このような順列組合せ的な遺伝子操作があって、今日の卵が産まれています、それだから育種改良された親鳥は当然値段が高いのです。

その高い親鳥を飼って種卵を作り、卵生産の産卵雛を販売する種鶏孵化場あり、その雛を買って育て卵生産する養鶏場とに産業は分かれますが、いずれにしろ現在の鶏は、少ない餌で卵をよく生むので、卵が安い食品でいられるのです。

次に卵の品質について良く聞かれます。

殻がしっかり厚く、黄身が硬く色濃く、白身が盛り上がった卵がよい卵との認識が消費者は持っています。

その通り原則的には間違いありません。

ただし黄身の色は餌の中のカロチロイドの量によって変わります。

また脂に溶けやすい色素によって人工的に変えられます。

飼料のトウモロコシの黄色が強ければ、卵は黄色が強くなります。

赤色、黄色の色素の高いパプリカ、紅花、マリーゴールドなどの植物の粉末を餌に適当に入れますと、黄身の色は色濃く、赤いパプリカは卵の黄身を赤くさせます。

目下話題になる飼料米を多く使えば、コメは白くカロチロイドが少ないので、黄身は自動的に白くなります。

しかし餌に黄色の色素の植物粉末を入れれば、たちまち黄色くなります。

この卵の色にこだわるのは日本人だけで、欧米やアジア圏では色にはあまりこだわりません。

また黄身が硬く、白身が盛り上がる条件は、育種的血統と鶏の年齢と卵の鮮度が大きく影響し、それと餌の内容が加わります。

まず若い鶏から生まれた卵は硬く、老鶏から生まれたものは盛り上がりに欠け、大きな開きがあります。

また生まれたての卵と1−2週間以上経過した古い卵とは硬さが違います。

時間が経過すると白身の中に内蔵していた炭酸ガスが抜け、弾力と緊張感が無くなり盛り上がりません。

ですから若い鶏から生まれた生みたての卵は、だいたい割り箸で掴んでも崩れません。

卵殻も同じよう若い卵は厚く、老鶏は薄くなりますし、餌の良し悪しでも違いが出ます。

このように黄身、白身、弾力感、色気にこだわるのは、日本の生卵をご飯にかける習慣が、鮮度と色彩を重視したからと思います。

それと生で食べる安全な卵の条件として、新鮮さと中毒菌(サルモネラ、カンピロバクター等)が混入していないことです。

日本の採卵鶏はサルモネラ対策のため、予防ワクチンが摂取されていますし、さらに私どもが提供しているプロバイオテック(生菌剤)と酵素を、サルモネラ菌、カンピロバクター菌、大腸菌、ビブリオ菌などの中毒菌対策に使用し、鶏の腸内で繁殖するこれらの有害菌を制御しています。

当然薬品ではないので、卵に移行することがなく、飼料栄養の吸収もよく安全で黄身白身の硬い卵を生産しています。

諸外国では生卵をそのまま食べる習慣がないので、黄身白身の色彩や硬さをあまり問題にしないし、加熱しますのでサルモネラ菌などもあまり注意しません。

それがため私は、外国旅行中生卵は絶対食べませんし、半熟の目玉焼きも食べません。

半熟卵を食べ食中毒で苦しんだ経験が何回かあるからです。

それだけに、よい卵の条件は色彩、硬さなど見た目が美しさも大事ですが、新鮮さと衛生的な管理が大切です。

その意味では日本の卵の品質は世界に誇れます。

余談ですが、TPPは日本の畜産の危機です。

しかしこの高品質の卵は輸出商品として高い評価を受けるものと思いますし、日本食普及と日本食ブームと聞きます、この日本食の評価をさらに上げるのに、日本独特の「卵かけごはん」の美味しさも味わってもらいたいものです、それには安全でおいしい日本産卵に限ります。

いずれにしろ、栄養的に見ても、手軽るさから見ても、価格から見ても、全ての料理に適合する卵をもっと食べましょう。

ちなみに現在日本人一人当たりの卵消費量は、年間約330個、世界で3番目の消費量ですが、そのうちの50%ぐらいが殻つき卵として、家庭で消費されているもので、あとはマヨネーズやケーキやお菓子また加工食材として多岐にわたります。

卵については、まだまだ面白い話がありますが、今回はここまでにしましょう。