日本語による三国交流会

〜タイ、ベトナムの日本語学科の学生との懇談〜
(草の根の国際交流の意義ある親善)

2016年の2月の18日から22日までの5日間、私はタイに滞在、国立のタマサート大学 ランシットキャンバス(Thammasat university Rangsit)で、日本、タイ、ベトナムの「三国交流会」に出席し、有意義な3日間を過ごしました。

このイベントは日本の国際交流基金の援助を得た、認定NPO法人「アジアの新しい風」が主催した、タイとベトナムで日本語を学ぶ大学生と、お互いの文化や教養を交換し合う交歓会で、今回はタマサート大学からのお招きで開催できました。
日本人の間で「国際交流」という言葉が重要視されてから久しいです。

地球上の多くの国の人々と交流を持ち、友好親善を成し遂げ、互いの国の実情、風俗と文化、地理と歴史、言語と食べ物などを理解し合うことは、世界平和と相互の発展につながる広大な理想で、賛成者も多いです。

その中で地理的条件から見て日本は、アジアの国々との交流を深めることが優先順位と思う人もまた多いです。

私個人としても、アジアの国々へは訪問の機会も多く、多くの知己友人もおり、アジア諸国との交流の大切さをよく理解しています。

そんな私の気持ちを納得させるグループが「新しいアジアの風」でした。

数年前この「新しいアジアの風(通称アジ風)」のメンバーの一人になり、会が行うイベントで中国、タイ、ベトナムの若者たちと交流をする機会を持つようになりました。

このNPO法人は日本語を学ぶアジアの学生達に、会員がインターネットを通して日本語でコミニケーションを行うI(アイ)メイト(internet mate)方式があり、日本語の正しい使い方から、日本の文化や風習などの伝達を、パソコンやスマートフォンで交換し合い、日本語勉学の生徒との親善を深めています。

会員の多くは定年退職した熟年が多く、教養的にも経済的にもゆとりがあり、ボランティア精神も旺盛で手弁当協力ですが、孫のような学生達とのコミニュケーションはそれなりの生きがいかもわかりません。

また中国の北京精華大学、ベトナムのハノイ貿易大学、タイのタマサート大学の日本語学科に、日本語教師を派遣するなどの事業も行ってもいます。

さらに今回のタイでの三国交流会や日本での留学生たちとの交流会など、さまざまの形で日本語を勉強する学生の応援もしています。
国際交流と簡単に言いますが、多くの国の人々と仲良くなるには、まず言葉によるコミュニケーションが大切です。

世界で多く使われている英語によるコミュニケーションも見かけますが、日本人としては日本語を話してくれる人との会話が最も望ましい思うのは当然です。

それゆえ、日本語を習う学生には、いろいろな形で応援しようと言うのが人情で、このNPO法人もその一つかもしれません。

ただうれしいことには、アジア諸国の学生たちの中に日本語を学ぼうという気分も旺盛で、例を挙げれば今回訪問したタマサート大学には一般教養学科に日本語科があり、一学年50人からの生徒が存在することです。

4年学級ですから200名前後の学生が、日本語を話したり日本語で物を考え、日本語で日本文化と歴史地理まで勉強していることです。

さらに私を驚かせたことは、19日の午前中に訪問した4000人からの生徒がいる、タマサート大学付属高校でも日本語講座があり、多くの学生が日本語を学んでいることでした。

この学生たちの歓迎余興は、日本の少女グループAKB48のダンスで、続いて行われた小グループでのデスカッションでも、日本語でいろいろ質問され、私も答えに窮窮しました。

さらに言えば、タマサート大学以外の有名大学も日本語講座があり、タイ一国だけでも日本語を勉強している学生数はかなりの数となります。

面白いことに、日本語を習うきっかけとなったのは、日本のアニメや漫画、音楽やアイドルグループの歌などポップカルチャーが入り口のようでした。

勿論タイ、ベトナムには多くの日本企業も進出し、日本ブランドの車や電気製品、ファッションから日本料理まで、日本を意識する環境は多くなってもいます。

その環境を追い風として、生きた日本語を勉強してもらい、もっと深く日本と日本人を知ってもらおうという小さな試みが、私たちが参加している「アジ風」の仕事のようです。

今回のイベントの主催者、タマサート大学のタサニー先生の言葉の中にも「Iメイト交流による効果や、日本文学本を読んだ感想コンテスト、作文コンテスト、日本でのホームステイなど、アジ風の協力が語学力向上に役立つ」と日本人との直接的交流の成果を評価しています。

同じ意見は、ベトナムのハノイ貿易大学の日本語教師チャン・ティ・トウ・トウーイさんの言葉のなかにも「2008年から始まったアジ風との交流で、多くの学生が直接に日本人と付き合い、その影響は大きく日本とベトナムの相互理解にも役立つ」と感謝しています。

日本政府が政策として行う交流事業と違い、貧しい個人のポケットマネーでささやかに行う交流ですが、メール交換の中にも、来日した留学生や、短期訪問の学生たちに対する会員の「おもてなしの」の心が、人間の感情を揺さぶり、本当のフレンドシップが構築されてきてると思います。
さて今回の交流会は盛り沢山の企画でした。

サークル討論の「国際結婚」については、10−12名が司会者のリードで自由に意見を言う形で、私もあるサークルの司会者として出席者に発言を求めましたが、20歳前後の女子学生からはなかなか意見が出にくく苦労しました。

続いてベトナムの女子学生による民族舞踊、タイの女子学生によるタイの地方の伝統的衣装のファッションショウと踊り、さらにベトナムコーヒーの美味しい入れ方、タイの草木による魚の擬態製造など。

圧巻だったのはアジ風の会員の一人、歌手の金井ユウさんの独唱でした。

アジアの風のテーマソングに始まって、SMAPの世界に一つだけの花、アニメソングのドラエモンの歌のタイ語版、タイで最もポピュラーな歌、ベトナムの歌など、会場はやんやの喝采とホールを埋め尽くす踊りの輪で、アンコールが絶えない盛り上がりでした。

音楽には国境がなく、誰でもが参加できる情感があり、唄の詩と旋律の中で気持ちが高揚し、理屈なくわかりやすく楽しめます。

音楽の持つ無限の力を知らされました。

最後は日本文化の一つ、書道の練習です、アジ風の会員の一人書道家の藤原先生の指導で、タイ、ベトナムの学生たちには初めての挑戦、お手本の教材の漢字を理解しながら、墨痕鮮やかに半紙に筆を運ぶという訳にはいかず、初めての人には難しく、学生は戸惑いながらも懸命でした。

私も昔ならった書道のイロハを思い浮かべ、学生たちに筆の使い方を注意しながらも、しどろもどろの書道実習でした。

初めてにしてはそれなりの成果がでたと学生は喜び、新しい日本文化にチャレンジした興奮を覚えながら、時のたつのも忘れたようです。

このような交流の数々が、本当の生きた交流と思います、草の根的な交流の中で、民族間の垣根を越え、また年齢の差も感じさせないコミュニケーションが増築されることに意義があります。
南国タイに夕闇が迫り、三国交流のイベントも終わりました。

このイベントを通じて、三国の友好がますます発展し、日本語と日本文化が一段と理解を深めたことを信じて、この稿を締めます。