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ノーベル賞と土壌微生物の価値

〜畜産動物の薬漬けを止めさせた生菌剤〜
(無限の土壌微生物は宝の山)

2015年度のノーベル賞、生理学・医学賞が日本の大村智(おおむらさとし)博士に決定し、生理医学では3人目の日本人受賞者となりました。

新聞、テレビなどを通じてご存知の方も多いと思いますが、この大村博士の受賞理由は、土壌微生物の放線菌を採取し、その菌が出す化学物質を薬品として同定し開発の端緒を作ったことです。

この薬品が、動物に寄生する原虫病被害と、人間に寄生し多大な身体的被害をもたらす寄生虫を防ぎ、寄生虫病撲滅に対する功績を評価されたものでした。

薬品名は「イベルメクチン(Ivermectin)」と呼ばれ、動物薬としては犬のフィラリヤ、馬、牛、豚の内部寄生虫駆除から、外部寄生虫のダニなどの駆除に、かなり長い間使用されています。

「この薬は効果があり長く使用していますが、日本人が発明した物とは知らなかった」

酪農家の一人は、英文名と輸入品であることから、外国の有名大手製薬会社の創作と思いこんでいたようです。

生産者だけでなく、この薬を取り扱う動薬販売業者の何人かも、日本人が開発したとは知らなかったようです。

私も大村博士のことは、寡聞にして知りませんでした。

しかし日本や世界の微生物学会や生理科学学会では有名人で、各国のアカデミー学術会議の分野での受賞歴も数多いようです。

ことに、今回の受賞理由の最大の功績、アフリカや南米などで流行した原虫による失明病の「オンコセルカ病」の対策で成功し、2億人以上の人命と失明を救った事実は、

「世の中に役立つ仕事を一つでも二つでもやりたいという研究心は、北里研究所の美学の精神で、それにより人々が救われることが何よりもうれしい」と発言しています。

こんな精神が、大村博士の心底に脈々と流れていることも、評価の対象になったのでしょう。


巷間伝わる話では、製薬会社からの特許使用料報酬250億円を、北里研究財団やご自分で開いた科学者を育てる学校設立に寄贈したり、薬品を低開発国に無料配布したりで、国際はもとより国内の社会環境や人類、学術、科学界に貢献している、崇高な精神の持ち主のようです。

受賞が決まった日に求められたコメントに、「土の中を探す泥臭い仕事でも、コツコツと細菌を見つけることにを精進したことを認められ嬉しい」

「微生物にはまだまだ分からないことが多く、その中には人に役立つものがいっぱいある筈だ。そう言うものに若い人も興味を持ってもらい、さらに研究が永続することを望む」と結んでいます。

多くの教え子のほとんどは、「普段は飄々として掴みどころがないが、本質は強い信念の人で、カリスマ性がある」と評価しています。

日本のノーベル賞受賞者の多くは、東京大学、京都大学、名古屋大学など、日本を代表する頭脳集団の組織からの排出者が多いですが、大村博士は地方の山梨大学出身、故あって北里大学で教鞭をとり、東京大学で薬学博士、東京理科大学から理学博士の称号を取得しています。

その後、北里大学で研究財団を作り、組織の学術面と経済面で安定させましたが、何れにしろ地方大学出身の学徒に変わりありません。

地方大学と言えば、翌日ノーベル物理学賞受賞した梶田孝明博士も埼玉大学という地方大学出身でした。

ただ違うところは梶田博士は東大の研究室で研究、カミオカンデという素粒子発見の壮大な設備の中で、宇宙からの降り注ぐニュートリノの物量を測定した実績成果に対し受賞したものです。

それに対し、大村博士は設備も装置も無く、金もかけずに土の中の微生物をひたすら検索、泥まみれになりながら今日の栄誉を得たことです。

ところでこの成功の陰には「無限に存在する土壌微生物」が陰の主役を務めたことを、私たちも知っておく必要があります。

いまさら申し述べる間でもなく、私たちが生活している土壌の中には、さまざまな微小生物や菌類が生息しています。

伝えるところによりますと、1グラムの土壌の中に、1億からの微生物が生息しているとも聞いています。

それらの微生物が、悠久の地球の歴史の中で自然を形造り、全ての生命体を育んできたのです。

私たち人類が生まれ、そして生命体が維持できたのもこの微生物のおかげです。

私たちの生活に密着している微生物の利用は、食品だけ見ても、味噌、醤油、酒、酢、漬物から納豆、ヨーグルト、チーズなど数えきれません。

またご存知の各種の抗生物質の多くが、この土壌微生物が発生する物質を利用して開発したものです。

大村博士発見のイベルメクチンは放線菌が出す物質を利用しましたが、同じよう放線菌からはストレプトマイシン、エリスロマイシン、テトラサイクリンなどの抗生物質、ブレオマイシンなどの抗がん剤もあります。

青かびから発見したペニシリンは、人類を感染症から救った薬品として、20世紀の奇跡でした。

このように微生物が私たち人間の健康を含め、畜産、農業、水産業の病原菌被害をいかに防御したかは枚挙にいとまがありません。

ただしこれらの薬品を、安易に大量に長期に使用した結果、病原菌に耐性ができ効果が無くなったり、食品に残留した薬剤が身体に影響する恐ろしさも危惧されます。

実際、大村博士開発のイベルメクチンも、使用量を間違え大目に使用すると、そのリアクションは大きく、死亡につながる怖いもののようです。

そのような傾向は、人間だけでなく畜産や農業の分野でも問題になっています。

薬付けの畜産経営、残留農薬汚染の農産物と言われて久しいです。

「豚肉も鶏肉も養殖魚も野菜も、危険がいっぱい心配で食べられない」という主婦からの苦情が後を絶ちませんでした。

その心配をなくすために私たちは、同じ土壌微生物を利用した、抗生物質に替わる善玉微生物の生菌剤(プロバイオティック)を開発し、数多くの畜産動物、水産養殖魚の病原菌感染症を防ぐことに成功しました。

抗生物質と違い、大量投与でも危害が発生せず、使用した畜肉や卵に残留もしません。

分かりやすく言いますと、私たちが日常食べている、納豆菌や乳酸菌の仲間を利用したものでもので安心です。

その結果、抗生物質では治らなかった病状までにも効果的であったと評価されました。

その効果の働きを簡単に説明しますと、我々の微生物が発生する物質、この場合は酵素が悪玉菌の細胞壁を溶かし、生存権を奪い繁殖を阻害する作用があったからです。

微生物は、自分の仲間を増やすために、いろいろな物質を放出して仲間(コロニー)を増やします。

中には他の微生物を殺して自分の仲間を増やす者も多くいます。

その一つが大村博士が発見した放線菌で、寄生虫の神経に作用して麻痺させたり、または線虫などの細胞壁に作用し、生命を奪うなどの働きをします。

これはある種の微生物が持つ先天的性質で、ある意味では個性と言えるでしょう。

こんな独特な個性のある微生物は、そんなに沢山あるものではありません。

土壌1グラムに1億も存在する菌を、何十回、何百回と繰り返し探索しても、個性的菌はなかなか見つからないです。

ただこんな無駄な努力を繰り返しているうち、偶然に珠玉の菌を発見することがあります。

これは努力というより幸運と言った方がいいでしょう。

ペニシリンもストレプトマイシンも、発見しようとした意識とは別の偶然が、大発明になったのです。

大村博士も「伊豆(静岡県)のゴルフ場の土壌の中から」と、発表してます。

もし博士が、ゴルフに行かなかったら、土壌に興味がなかったら、採取した土壌を分析しなかったら、分析した土壌に有能菌がいなかったら、今回のノーベル賞はなかったかもしれません。

まさに人生何があるか分かりません。運が良かったということでしょう。

さて私どもの生菌剤に話を戻しましょう。

この主要菌も土壌から発見したものです。

それも整備されたゴルフ場などではなく、荒涼としたシルクロードの砂漠の中からの発見でした。

真夏は70℃、真冬はマイナス20℃にもなろうとする、過酷な乾燥した砂漠の砂の中で、何千年も眠っていた菌かもしれません。

この菌は枯草菌と言ってカプセルに入っている芽胞菌で、発芽繁殖の条件が整わなければ、何年でも何百年でも耐え忍ぶことができる強い菌です。

この菌の発見者は、私の古い友人、台湾の資源微生物研究所の林慶福博士です。

シルクロードの観光旅行があり、その砂漠地帯に立ち入り、砂を持ち帰らなければ、この抗生物質の代替えの力を持つ生菌剤はなかったでしょう。

これも偶然であり、幸運でした。

この林博士も大村博士同様、土壌菌はじめ自然界に生存する微生物を沢山採取し、その中から珠玉の菌を発見し貯蔵、いまや合計で5000種類を超える有能菌をこの資源微生物研究所は所有しています。

それらの菌を利用し、人類の健康増進に寄与する物質の開発をはじめ、畜産動物の発育増進、有機農業を促進する微生物、環境整備、公害対策などに適応した物質を開発し、各分野に普及し幸運をもたらしています。

大村博士同様、日本の東京大学で学び理科大学で博士号を取得した、台湾を代表する微生物博士で、同時に酒造りの専門家でもあります。

もう20年前ごろでしたか、東南アジアと日本の養鶏産業のコンサルタントをしていた私は、あまりにも安易に使いすぎる抗生物質の危険性を察知し、林博士に安全な抗生物質に替わる製剤の開発を相談、手持ちの菌株の中から、シルクロード菌をふくめ複数の菌を選択、それぞれの個性を生かした、総合的能力を高めた製剤を作りました。

この製剤は目下日本をはじめアジア各国で使用され、薬を使わない畜産動物に愛用されています。

隠れた話と言えば、ペットや小鳥、観賞魚などにも最適と思います。

さぁこのように、私たちの目に見えない微生物は、いろいろな個性と働きを持っています。

林博士との対話でよく聞く話は、「まだ発見されていない微生物も多く、これまで利用された微生物はごくごくわずか、発見と開発は無限に広がっている」

「ただ微生物は良いものばかりではなく、病原菌もいます。またすばらしい能力を持ちながら増殖の時アフラトキシン(毒物)が少しでも出たら、使えない菌も沢山あります」と話します。

たしかに、人類、動物、植物の生命体を侵す病原菌は沢山あります。

これらの病原菌の大繁殖で生命を脅かされたり、大流行で多くの人々が死に、世界の歴史が変わった事実もあります。

このような悪玉微生物との闘いを人類は続けてきました。

その対策に有用微生物を素にした薬品を開発し、人類を病魔から救い、動植物の生存を助けました。

まさに微生物を研究し微生物の本質を知り、それに対応するために微生物を利用する、まさに微生物同士の葛藤の中から、科学の進歩が見える一面でもあります。

今回のノーベル賞も、その無限に存在する微生物との対話をされた大村博士のたゆまぬ努力を評価したものです。

このことは、全く同じ過程を実行し土壌微生物の隠れた力を引き出して、畜産動物の抗生物質離れを促進した林慶福博士の功績に対し、賞も報奨金もありませんし、無冠の成果ですが、世界が認めたものと私は見ます。

大村博士は80歳、林博士も81歳、同じ世代の微生物研究者ですが、林博士はまだ新しい発見と開発に心血を注いでいる研究の徒で、この若い部脳は現在、人の健康に寄与する大発明に取り組んでいます。

近い将来その成果を発表するときがあるでしょう。

成功を祈ります。

人畜共通感染症の恐ろしさ(その3)

〜世界中で収束しない細菌性食中毒〜
(薬剤多用で出現した耐性菌が、人と動物に共通感染の心配)


世界の歴史に影響を与えた、小動物ネズミと吸血昆虫のノミを媒介して、大流行感染症(パンデミック)を起こした細菌性の人畜共通感染症の代表は「ペスト」です。

この「ペスト」は紀元前ギリシャでの記録がありますが、紀元540年代に東ローマ帝国の治世を揺るがした大流行となり、人口の三分の一が死亡し、やがて帝国は衰退の一途をたどった歴史は有名です。

再度14世紀のヨーロッパで大流行、皮膚出血が顕著な症状で、その出血跡が黒ずむため「黒死病」とよばれ恐れられたようで、死者が3000万人と当時のヨーロッパの35%ほどの人口が失われた、記録に残るパンデミックスでした。

このように人畜共通感染症の流行性疾病は、人類の歴史を変えます。

1918年に大流行した「スペインかぜ」も、第一次世界大戦を終息させる要因になったとも伝えられ、その後の世界の歴史に影響をあたえました。

この「スペインかぜ」は「鳥インフルエンザ」の変異株が強毒化して人間の細胞の中で暴れまわったと言われています。

ここ数年毎年のように、いろいろな違ったウイルス株で、世界のどこかで発生している鳥インフルエンザが、1918年のよう人間にたやすく感染する変異株に変わった時、防ぎようのないパンデミックスになるかもしれません、要注意です。

細菌性の感染症で多くの命が失われた病気に、不治の病と言われた「結核」があります。

20世紀中ごろ抗生物質の発明でこの病原菌を抑制するまで、根本的な対策がなく、各地に専門療養所が開設されていました。私の友人の一人が山梨の八ヶ岳で転地療養しているのを見舞ったことがあります。

治療法は美しい空気と、栄養を十分取ることで体に抵抗力と免疫力を作る方法しかなかったので、抗生物質の出現は画期的な福音でした。

抗生物質はなにも結核菌だけでなく、細菌性の感染症対策にも効果的で、人類の寿命が飛躍的に伸びたのも、抗生物質によるところが大です。

この細菌は人に感染する「結核菌」で、マイコバクテリューム(Mycobacterium tuberulasis)という名前ですが、同じ菌で牛の結核菌のM.bovis(ボービス)があり、この菌は人間にも感染する人畜共通感染症の「結核」です。

結核菌ではないエルシニア菌で発病する人畜共通感染症に「仮性結核」があります。

エルシニア菌はペスト菌もその仲間ですが、仮性結核はブタ、イヌ、ネコ、ネズミ、ウサギ、サル、そうして人にも感染し、動物の症状は顕著に表れませんが、人では発熱、喉頭炎、呼吸器障害、胃腸炎などが発生しますので「仮性結核」と呼ばれたのでしょう。

同じエルシニア菌の異なる種で発病する病気に、名前そのまま「エル二シア」があり,ややこしいですが哺乳動物全てと鳥類にまで感染し、人では発熱、腹痛、下痢が発生します。

古くからある人畜共通感染症に「豚丹毒」と「ブルセラ症」があります。

どちらも家畜伝染予防法に決められた届け出が義務つけられた病気です。

「豚丹毒」は人の感染症「丹毒」とは菌も違い症状も若干違いますが、関節炎やリンパ腫、ひどい症状は敗血症にまで進みます。

豚丹毒と言う名前ですが、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ネズミ、鳥類にまで保菌動物がいるので注意が必要です。

豚そのものにはワクチンがあり、発病は少なくなっていますが、産業としては注意が肝要な疾病です。

「ブルセラ症」の発病の話は日本の畜産界では少なくなりましたが、ウシ、ブタ、イヌなどこの病気にかかると繁殖障害で不妊、流産など症状は顕著です。

人間は発熱、発汗、頭痛など風邪の症状と同じ状態になります。

動物由来の細菌で食中毒発生件数を、厚生労働省の発表を見ますと、最近は圧倒的に「カンピロバクター」の件数が多くなっています。

その次が「サルモネラ」で両方とも、鶏由来での鶏卵と鶏肉が感染源となっています。

この二つの病気は疫学調査が進んでる国のなかでは、日本より欧米での感染率と死亡率は高く、発展途上国では統計的に少ないです。

腹痛、下痢ぐらいではあまり病院には行かないのかもしれません。

ちなみにアメリカのサルモネラ被害を、CDC(病気管理予防センター)の発表をみますと、2012年度入院の患者数は19000人、死亡は360人との大きさに驚かされます。

もっともサルモネラ感染がすべて鶏卵や鶏肉ではなく、ピーナッツなどほかの食品が保菌していて発病したものと、怖いのは可愛がっているイヌ、ネコ等のペットから、またカメやヘビからの感染もさせられたケースも含まれます。

「カンピロバクター」についてイギリスの2007年の発表では、入院22000人、死亡110人とありますから、最近の人畜共通感染症の被害の中では群を抜きますし、そんな状態が毎年同じように継続していることが問題です。

この病原菌を鶏由来と言いましたが、ペットもブタ、ウシもこの病原菌は保有しています。

ことにサルモネラ菌は爬虫類、両生類などに多く、欧米ではこれらのペット動物から感染しているケースも多いです。

日本の死亡事故で社会的に話題になった「病原性大腸菌」の「O157]「O111]菌は、テレビ、新聞などに大きく取り上げられましたので、病原菌の名前を記憶している人が多いと思います。

これら食中毒を起こす細菌は保菌動物の、トリ、ウシ、ブタなどの家畜にはほとんど症状が出ません。

ただし動物の腸管内では増殖し、鶏卵の中、鶏肉の表面や内臓、ウシの肉はもとより肝臓その他の内臓に付着し、加熱調理が十分でないと容易に経口感染で腸炎を起こします。

ことに怖いのは「O157]などの菌は毒素を産出し、その毒素で出血性の腸炎が進行し重篤になることです。

といってこれらの病原菌抑制のため、家畜に薬品を使うことは、治療対策として獣医の許可のもと使用はできますが、基本的には法律で禁止されていますので、予防対策がありません。

そこで私たちは、サルモネラ、カンピロバクター、病原性大腸菌など、人畜共通感染症細菌の動物腸内での繁殖を抑制し、生産物への汚染を防ぐ有機的な生菌製剤を開発しました。

この製剤の生菌は納豆菌、乳酸菌のような安全性の高いもので、なお細菌の細胞壁を溶解する酵素を加えた混合飼料です。

この生菌酵素飼料を、配合飼料に混合し与えますと、人畜共通感染症以外の家畜、家禽の細菌症、原虫による発病も抑え、さらに少ない餌で肉、卵、牛乳を沢山生産することに役立っています。

それはとりもなおさず、無薬、無菌の肉、卵、牛乳を生産する目的で、市場の評価も高いです。

勿論家畜だけでなく、イヌ、ネコ、はじめ小鳥からハトなどに使用すれば、薬にかわる健康製剤として喜ばれ、糞の悪臭除去にも効果的です。

実際レース鳩の愛好家の多くが、飼育鳩の健康と病気治療のため、使用されています。

さて細菌ではないが、消費者に大きなインパクトを与えた病気に「狂牛病」があります。

通常「BSE」と呼ばれ、ウシの脳細胞が海綿状になる脳炎で、その原因がプリオンというたんぱく質に変質したことによるものと分かりました。

ただ問題なのは、このたんぱく質は煮ても焼いても揚げても変わらず、食べた人間の脳細胞たんぱく質が、プリオンにより海綿状となり脳炎を起こすことです。

1980年イギリスでウシに発症し、そのウシの残差物で作った飼料用肉骨粉を食べたヨーロッパ各国のウシが発病し、その飼料肉骨粉が日本に輸入され、2005年に我が国でもウシに発生しました。

アメリカも同時期に発生があり、大量に輸入されていたアメリカ産牛肉の輸入ストップとなり、有名牛丼チエーン店が販売を中止し、社会的話題が大きくなったのもこの「BSE」で、つい最近のことです。

このように畜産動物と私たち人間との間は、ある時は労働力として、さらに食糧として、居住を同じくしながら、深いつながりが人類の起源から続いています。

ところが同じような恒温の哺乳動物、または家禽なので、細菌もウイルスも原虫も、それを媒介する吸血昆虫なども同じように共通しています。

そこで人間と動物の間で共通する病気が発生するのです。

さらに申せばその治療法として開発された、病原菌、原虫を殺す薬剤までも、同じものが使われます。

それゆえさらに新しい問題が発生します。

これは人畜共通感染症対策の負の部分です。

ことに20世紀の大発明抗生物質や抗菌剤に対して病原菌やある種の原虫が、耐性を持ってきたことです。

耐性とはその薬の薬効作用に対抗する性質の菌に変わり、薬の効能効果が無くなることです。

それは薬の使い過ぎにより、細菌が自己防衛のために変身させてしまったからです。

ことに畜産動物への薬の使用が大きな問題になります。

現在世界中の、ウシ、ブタ、ヒツジ、トリ、アヒルなど合わせますと、世界の人口の10倍を上回ります。

その動物は経済性を求めて多量の抗生剤を継続的に使用しています。

それは人間が感染症対策で使用する何百倍の数量でしょう。

もし病原菌が人畜共通とすれば、その細菌は家畜感染により耐性を持つことがより早く容易となります。

さらに薬品漬けにされた動物の肉、卵の中には薬品が代謝しきれず残留します。

それを食べ続けた人間の体の中にいる隠れた細菌は、いつの間にか耐性ができてしまいます。

その人の体力が弱りその耐性ができた細菌が繁殖し発病した時、全ての薬剤の効果がなく、治療が困難になります。

この連鎖が、感染症ではないがもう一つの人畜共通感染症の隠れた恐ろしさと思うのは私一人でしょうか。

当然、世界の畜産界全体も気づき、また行政も薬事規制で対応しますが、病気発生の現場で働く生産者は、背に腹は変えられず薬剤使用に踏み切ります。

そしてその量が年ごとに増え、病原菌はますます対抗して強くなり、生産物への薬品残留はますます多く危険となります。

どこかで断ち切らねばなりません。

私の知る限りでも、発展途上国では薬剤耐性で薬品効果が減少し、前に紹介した私どもの生菌酵素飼料を使用したいとの申し込みがこの頃増えています。

やがては家畜と病気、薬品と耐性、畜産生産物の安心安全を求め、代替薬品的なものを求める時代となり、世界的にオルタネイティブ(Alternative)が大きな話題になるでしょう。

人間の英知が創造した薬品の数々が、ルールなしに使われた結果、単なる粉末にしかならない前に、さらに人間の英知で「人畜共通感染症」の感染予防対策を考えなければいけません。












    〜タイのエビはブラックタイガーから白エビに〜
     (始めてみた、種エビから稚エビが生まれるまで)

室内温度40度、額から頭皮の中から出た汗が、顔を伝わってメガネを曇らせます。
肌から噴き出す汗はたちまちに下着から、着ているワイシャツをびしょびしょに濡らしていきます。

卵から稚エビを孵化させる、コンクリートづくりの水槽がいくつも連なっている孵化室内の温度は、人間の体温をはるかに上回る、まさにサウナ風呂状態。

「これがいま孵化したてのエビの子どもです」

タイ語で説明する担当者の言葉を、私の友人タイグローベスト飼料会社(THAI GROBEST)社長PICHAI(ピチャイ)さんの英語による通訳で説明を受けます。

透明なフラスコ入れられた海水の中、目を凝らしてじっと見ますと、たしかにいくつもの小さな黒い点が上下左右にうごめいているのが見えます。

「孵化したての稚エビは、ミジンコのようなプランクトンと同じです」

「孵化させる水温は何度ですか」

「30度です。明かりを与えない暗い水の中で受精から2−3日で孵化します」

「ただ室温が高いのはどうしてですか」

「室温を高くすることで、孵化する海水の温度が下がらない様にするからです」

タイのリゾート観光地として有名なプーケット島の隣、パンゴナガにある
タクシンマリン(TAKSIN MARINE)のプーケットエビ孵化場視察、2009年7月26日先週のことです。

ご存知のように、タイのエビ養殖は盛んで、世界に知れた主産地、また養殖の先進地でもあります。産業規模としても100億バーツ(280億円)に達する主要産業で、日本にもかなりの冷凍エビを輸出してもいます。

そのエビの餌を作っているのが私の古い友人ピチャイさん、彼の勧めもあって初めてエビ産業の要にもなる、稚エビ養殖の本髄を見せてもらう幸運を得ました。

齢がいくつになっても好奇心が強く、初めてのものの視察や体験は気持ちがわくわくします。

訪問後すぐに事務所で紹介された社長のTAKSIN(タクシン)さんはまだ40代、このエビ孵化事業を始めたのは3年前と言います。

「このエビはブラックタイガーですか」

「いや違います。ホワイトシュリンプです」

「白いエビですか。ブラックタイガーではない。白と黒では大きな相違ですね(笑い)」

ブラックタイガーは、養殖エビの代表的品種で、誰でもが知っているブランドです。
でもタクシンさんは、はじめからホワイトシュリンプ(白エビ)だけの孵化を手がけたようです。

友人のピチャイさんに聞きますと。

「いまタイはブラックタイガーから、殆どホワイトシュリンプに変わっています」との答えでした。

その理由の第一は矢張り経済性でした。

発育速度はブラックタイガーとそれほど変わらないようですが、育成率にかなりの相違があるようです。

ちなみに私が知る、ブラックタイガーは70%前後の育成率でしたが、このホワイトは85%と丈夫です。

育成率の良し悪しが、飼料の効率の差になりますから、少ない餌で沢山のエビが生産されることになりますので、ホワイトの方が儲かります。

このホワイトで100日飼育して、50から60匹で1キロになる発育体重のようです。
換算すると1匹18gから20gぐらいの大きさで、飼料の要求率で1.5と言います。

すなわち1.5キロの餌で1キロのエビが生産されることになります。20gのエビで30gの餌を食べたことになります。

エビの餌はタンパク質が高く40%を越えます。

以前10年前ごろ友人のピチャイさんに、肥育用の餌の価格を聞いたことがありました。
その時は確か1トン日本円換算で10万円ぐらいと記憶していますが、そのご主原料の魚粉が大幅に値上がりしてますので、現在は13万円ぐらいになりましょうか。

13万としますと、1キロ130円、エビ1匹が食べる量が30g、1匹の餌代は3.9円となります。

それに稚エビの価格、栄養剤、薬品代、人件費、光熱費、償却費、運搬費、加工費、冷凍費もろもろの経費がかかって、今のエビの原価が出来上がります。

ちなみに先週のタイのホワイトエビの相場価格は、20gもので1キロ日本円換算約300円、1匹6円と言うことです。

円高かもしれませんが、日本人から見ますと実に安いです。

それでは実際稚エビはいくらか、ピチャイさんに聞きますと0.2バーツとの答えでした。0.6円です。

「安いですね、実際1匹の雌の親エビが1回何個の卵を産むのですか」興味ある質問です。

「ホワイトシュリンプで約20万個、そのうち孵化して商品になるのが50%。
ブラックタイガーはもっと多く200万個の抱卵もありますが、孵化率は悪い」

さらに聞きますと、孵化場での親の管理と孵化技術、病気対策や親の選別、孵化した稚エビの品質など、エビ養殖が成功するか否かは、この孵化場の良し悪しにかかっているようです。

孵化場社長のタクシンさんは、その点を強調します。

現在の種エビ(親エビ)は全てアメリカのハワイのブリーダーから輸入してるようです。
ブラックタイガーの育種はタイ国内で出来るが、ホワイトは原産がハワイの近海、ハワイで増殖したものを仕入れます。

その遺伝的要素、病気の有無、発育上での管理、特別の生き餌生産などの技術が、タクシンマリンの真骨頂のようです。

ちなみに飼料はグローベストの高い品質の餌を食べさせていますが、なおかつ稚エビの飼料や、種エビの餌に、生きたゴカイ、牡蠣、捕獲したての白魚など新鮮な生き餌を食べさせることにより、より丈夫で健康的な稚エビの生産が出来ることを強調していました。

ゴカイは自らが養殖し、そのためだけに専用のハウスを設け、細かな管理をしています。

エビは必ずしも強い生き物ではなく、ストレスに弱く、水温に敏感、酸欠があるとダメージが大きいです。ことにアンモンニアには最悪のようです。

30度の水温は、孵化時の温度で、一般の種エビは約25度の水温、溶存酸素を保つため、エアレーション(酸素供給)設備も完備稼動しています。

種エビの雄と雌は普段は別飼育で、雌が抱卵して卵を産む準備が出来たら、その水槽に雄を入れ自然交配を行い、それが終わりますと、また雄は雄水槽に移動と言う、つかの間の会う瀬だけしか許されません。可哀想な話です。

もっと可哀想な残酷物語は雌です。

雌は卵を産みますと、片目を切り落とされます。目を一つ失うのです。雌エビは自分の身体の変調を自覚し、モット子孫を残さないといけない、その本能的な生理現象で、すぐの抱卵をします。

そうして無事卵を産みますと、人間はもう一つ残った目を切り落とします。雌エビはさらに本能的に子孫を残そうと、健気にも卵を作ります。

1匹の雌はたちまちの間に3回も卵を産み、短い一生を終わります。

人間が考えた経済的効果から生まれた、エビ飼育のテクニックです。動物愛護の観念からは許されないとも思いますが、最も原生動物に近いエビの生産システムとしては許されているのでしょうか。

タクシン孵化場の稚エビは、タイ国内はもとより、近隣諸国にも輸出されています。
2−3センチになった稚エビは特殊なプラスチック袋に入れられ、酸素を充分くわえ25度の水温に調節され、送られます。

海外など遠方には20度と活動しない低い温度をキープするようです。

もし30度を超える温度となれば、稚エビは活発に活動し、仲間同士が狭い袋の中で争い、傷つき死亡するものができ、それが発するアンモニアガスで全滅してしまうようです。

如何に温度管理が重要で、かつまた酸素が大事で、アンモニアが大敵だと分かります。

エビに限らず、養殖産業は病気との闘いです。養鶏も養豚も牛肉産業も養殖魚も、絶えず新しい病気との闘いです。

その背景には、自然環境とかけ離れた、人間本位の経済効果優先の人工環境を作り上げ、その中に無理やり押し込んだ結果の、動物や魚がダメージを起こすのです。

エビ産業もあらゆる病気との闘いで、一時は白い斑点が出る、ホワイトスポットウイルス病で、地域によっては全滅状態になったところもあります。

今日現在もこの病気の脅威はいつもあります。それらの病気に打ち勝つには、まずもって健全な稚エビが大切。ウイルスのキャリア(感染源)には絶対ならない、抗病勢がある体質をもっている、こんな稚エビを生産することが、産業として最も望んでいるところです。

その要求を満たす努力が、設立して3年目のタクシンエビ孵化場にあるので、こんなに大きな農場にもなれたのでしょう。

全ての施設を見学、40度の孵化室はともかく、プーケットの昼間の温度そのものも33度ぐらい。この温度があるので、エビ養殖産業も盛んなのでしょう。

しかし私の身体はこの暑さにはいささかバテます。温度管理も大切、暑い気温は酸素不足にもなりそうでした。

とにかく施設から施設への移動は、ジリジリと照りつける南国の太陽をもろに受ける野外の歩行です、広大な面積を歩き続けることは、高齢者には体にこたえました。

ところが次から次へと新たな発見のある見学、私の好奇心を満足させるには短い時間、事務所に戻ってクーラーの冷風にあたり、さらに質問する私にピチャイさんは

「おくむらさん、いくつになっても新しいことに興味があるだ、こんな知識を得れば、すぐにエビ養殖の大先生になれますからね」

大きな声で笑いました。

北海道の旅

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−雪解けの下の土壌を採取して−
   (環境変化の中で有用菌発見の旅)

久し振りに北海道への旅をしました。

私の朋友、台湾の林博士と、取引先の孫社長とを同道しての
旅でした。

目的は二つ、ひとつは観光、もう一つの目的は、私達が共同で
開発した畜産用の生菌剤(プロバイオティク)のテスト結果に
ついて、北海道大学の農学部教授との意見交換でした。

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