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世界の食肉、鶏卵はどう変わるか

〜家畜福祉のアニマルウェルフェアの流れ〜
(世界最大の畜産展示会VIV ASIAに出展して)


2015年の3月10日から14日まで、私はタイのバンコクに滞在しました。

2年ごとの開催される畜産と水産養殖の展示会「VIV ASIA」が開かれ、
私達も今回は3回目の出展、3日間多くの外国人と接し、忙しい毎日を過ごしました。

ご案内のよう世界的に経済が活発化し、食生活も変わり、
動物タンパクの需要が高まり、牛豚鶏肉や鶏卵など生産量もそれに伴い拡大、
そんな情勢が如実に現れた展示会で盛況でした。

ましてアジア全体の人口と家畜の頭羽数は、世界全体の60%以上、
それゆえ展示会への出展に期待をかける関連産業の意気込みもおのずから違います。

主催者の発表によりますと、出展者は874社、前回より178社増加しているようで、
この展示会の効果が評価されての出展が多くなっていると思われます。

その中で、世界最大の人口を抱え、経済発展著しく、家畜の飼養頭羽数が
世界一の中国からの出展者が最も多く140社、地元のタイが84社、
その他ヨーロッパからはオランダ、フランスが多く、
今回はアメリカと韓国が目に付き、残念なことに日本からの出展は少数です。

来場者は3万人を超え、出展者の担当を人数に加えると、
3万5千人以上の畜産関係者が集まったことになります。

来場者の顔ぶれも、開催地のタイは勿論多く、それに次いで西アジア、
中近東、アフリカからの見学者が目立ち、中国、韓国ベトナム、フィリピン、
マレーシア、インドネシアなどアジア系の国々を圧倒してました。

そのなかで日本人の姿がさびしいのは、日本の畜産が午後の産業となり、
伸長が止まっていることを表す一つの現象かもしれません。


さて今回、展示各社の意識の違いを、過去3回出展した私の目から見て、
大きな変化を感じたトレンドに二つ気が付きました。

一つは家畜を飼養する環境改善、
もう一つは疾病対策への抗生物質から代替物質への移行です。

ご存知のよう現在、家畜を飼育する環境は、
効率と利益率追及に焦点があてられており、
家畜動物が快適な過ごすには過酷と判断すせざるを得ない、飼育条件かもしれません。

また過酷な環境が生んだ疾病対策には、抗生物質乱用で対処し、
中には成長促進用の抗生物質漬けの飼育法が当たり前でした。

この家畜を飼育する環境を人間本位の発想でなく、動物の生理を考えに入れた
快適環境と、薬漬け疾病対策を変えようと言う意識が、
今回の展示会で強く感じたことです。

ことに家畜を飼育する施設は、動物の生理を考慮した環境を作り、
気持ちよく卵を産ませ、肉を生産し、
子孫を繁殖させようとする飼育法と施設のモデルが展示されていました。

言葉を変えて言えば「家畜福祉」「動物愛護」の意識が大きくクローズアップしたことです。

この気運と運動を「アニマルウェルフェア Animal welfare」として
世界共通の言葉にもなっています。

「アニマルウェルフェア」の定義は、動物を
1)飢餓と渇きから自由に開放
2)苦痛、傷害または疾病からの自由
3)恐怖および苦悩からの自由
4)物理的暑熱の不快からの自由
5)正常な行動ができる自由
となります。

卵を生産する鶏を例にとれば、現在の飼育環境はワイヤーケージ(金網の箱)の
中、1羽1羽区画され、1羽あたりA3の用紙一枚ぐらいの面積の中で、
自由が奪われ、自動で送られた餌を食べ水を飲み、前に傾斜した金網の上で産んだ卵は、
自動的に前に転がり、ベルトコンベアーで卵処理工場に運ばれ、
そこで10個づつ自動パックされます。

排泄した糞はベルトコンベアーで舎外に運ばれ、その糞は発酵され堆肥になります。

鶏舎内の明かりは、現在はLED照明で昼夜点灯され、
その光で餌を食べ水を飲み卵を産みます。

それゆえ鶏は太陽の光は生涯知りませんし、土の上を歩いたこともなく、
金網の上で一生を終えます。

空気は換気扇で送られ、鶏舎内の温度により空気量と風速はコンピューター管理されます。

このように自動化、機械化された鶏舎は、極端に人力を省力し、餌の量から
水の量、空気の容量まで合理化されています。

無駄のないコスト削減が最大の目的で、なおかつ人工的に鶏の生理に合う
ぎりぎりの環境と餌の量を計算し、最高の産卵を求める、これが近代養鶏法です。

そのおかげで「卵は物価の優等生」とも褒められてもいますし、
糞と隔離されまた土を踏まないので、病気感染のリスクは少なく、
卵の汚染ががなく衛生的で、密閉された鶏舎は野鳥や野ネズミの侵入危険も少ないので、
流行の鳥インフルエンザ対策にもなっています。

ただし誰が見ても、合理化という名のもとに人間本位で作られたもので、
鶏は自由に羽ばたくこともできず、福祉と愛護からは遠いところにあります。

さて、このアニマルウェルフェア運動の起こりはヨーロッパから1960年代に
始まり、いまやその普及率はEU全体に及び、各国は法制化されているところもあります。

理想の鶏飼育環境は、土の上と太陽の下で飼育し、
1羽最低1平方メートルの面積をもち、自由に行動できる環境を示唆しています。

ましてケージバタリーに1羽づつ閉じ込める飼育法は禁止で、
野外の太陽光の鶏舎でなくても、屋内人工光線鶏舎でも、
鶏が自由に行動できある一定の面積を持つ飼育環境なら許可されます。

旧来のケージバタリー飼育では立体式で、5層6層にケージを積み上げる鶏舎もあり、
土地の有効活用ができますが、平飼い方式では飼育羽数は少なく、
鶏舎1棟あたりの収容羽数も5分の1以下で最大では10%以下になりますが、鶏は快適です。

ただしすべての面でコストアップとなり、卵の価格は高くなるのは止むええません。

最近のニュースを例にとると、アメリカのカルフォルニア州は法律で、
ケージバタリー方式の鶏の飼育は禁止、またその卵の販売を禁止したため、
カルフォルニア州の卵は12個1ダース当り日本円で280円と高騰し、
カルフォルニア以外の卵価格は1ダース180円と100円の開きとなりました。

ただしこの高い価格でも、鶏にやさしい環境になればその価格を受け入れる住民が多いと聞きます。

このように動物福祉、アニマルウェルフェアに賛成する傾向を見ますと、
文化、教養、知識が進んだ国で、経済的にも政治的にも安定し、
さらに宗教的な考えも影響する欧米社会のようです。

このアニマルウェルフェアの波は当然日本にも波及し、農水省はじめ養鶏、
養豚の産業人の間で検討が行われています。

ただし日本の消費者の意識の中に、畜産動物の福祉的な環境整備に関心を持ち、
動物本位の飼育形態を作るべきとする消費者運動が起こりにくいのではないでしょうか。

一つには卵を除いて、牛肉豚肉鶏肉の多くが輸入肉で、輸入原価が安いことは、
輸出国でもアニマルウェルフェアで生産されてない肉ということになりますし、
まして消費者サイドから見れば安くておいしくて安心安全が担保されれば、
それで十分との考えがあります。

さらに効率と合理化経営などの緻密な飼養法の開発は、日本人の得意とするところで、
地価の高い日本で、一単位の面積でどれだけ高い生産量を産出するかが、
利益の分岐点にもなっていることです。

自動化、機械化、コンピューター管理の飼育法が価格の安い卵を作り、
糞との隔離は衛生的で生食をする日本人が安心できます。

そんなこんなで、世界先進国の潮流に迎合し、
為政者が法律で家畜の環境改善を制定しない限り、
日本ではアニマルウェルフェアは生産段階からは起こりにくいでしょう。

ただし、薬漬けの疾病対策にはおおくの消費者は大賛成でしょう。

化学薬品メーカーはおおむね大企業、政治的なパワーも強く、
畜産国のアメリカでも薬規制の行政指導がやりにくい傾向でしたが、
消費者サイドの要望が残留薬品を嫌い、ことの抗生物質離れの流れが出来つつあります。

このトレンドがはっきり表れたのが今回のVIVアジア展示会でした。

この流れについては次回にお送りします。



人畜共通感染症の恐ろしさ(その1)

〜エボラ出血熱から鳥インフルエンザまで〜
(ペット、家畜、吸血昆虫からの感染症)


「人畜共通伝染病(Zoonosisズーノーシス)」と言う言葉は、前回、我が家の
ハクビシン騒動顛末のなかで使いました。

動物から人間へ感染する伝染性の病気の総称です。

犬、猫、小鳥などのペット、牛、豚、鶏などの家畜、ネズミ、サル、ハクビシン、蝙蝠等の野生動物、蚊、蚤、ダニなどの身近に生息する吸血昆虫などが持つ病原菌が宿主となって人間に感染し、深刻な病気を発生させることを「人畜共通感染症」とか「動物由来感染症」といいます。

ハクビシンも11年前中国で発生した恐ろしいSARS(重症急性呼吸器症候群)発症の中間宿主として、ウイルスを伝播(でんぱ)させた「動物由来感染症」の張本人として処置された過去があります。

ご承知のよう、地球上には私たちの目に見えない微生物や微小動物がたくさん存在し、その中には病原性を持ったウイルスや細菌、原虫、寄生虫などが、自分たちのコロニーを増やすため、適当な動物や植物に寄生し繁殖しています。

その病原体は機会があるごとに、繁殖条件の良い宿主動物に乗り換えることが生業で、最終的に恒温動物で免疫力の弱い人間に寄生することで大繁殖し暴れます。

その前の感染保菌宿主がペットだったり家畜だったり昆虫だったり人間の身近に存在、その動物を介してたやすく感染するのです。

いま世界で大問題になっている「エボラ出血熱」も蝙蝠のウイルスがサルに感染、宿主になったサルから何かの機会に人間に感染、そして人から人へと容易にウイルスが伝播し、完全な予防法と治療法がないまま、患者が増え死亡者が続出する所から、世界の保険機構を悩ましています。

まして、ウイルスの感染速度と拡大は、人間の移動の速さと行動範囲の大きさに比例します。

たとえば西アフリカで発生した「エボラ出血熱」にしても、アフリカはもとより欧米諸国からアジア、中東、中南米、オセアニアまで、人間の往来がある以上は感染の危険度はどの地域も同じです。

これと同じ潜在的に恐怖をもたらしている「人畜共通伝染病」のひとつが「鳥インフルエンザ」ではないでしょうか。

ご存知のよう、ここ数年前から世界の養鶏産業に多大な損害を与え、ことにアジア地区では、多くの人命が、このウイルス感染症で失われています。

10年前大問題になった「SARS」は終息し、ウイルスの影も見えませんが「鳥インフルエンザ」は現在でも、いろいろな形を変たウイルスとして残存、世界各地で鶏や水禽に被害をもたらしています。

ことに最近中国などで発生しているH7N9タイプのウイルスは、過去流行した強力なH5N1と異なり、鶏には顕著な症状が発生せず、いつの間にか人間に感染する忍者のようなウイルスで、もしこのウイルスが人に感染し、人型ウイルスに変わった時、人から人への感染が容易になり大発生となり、世界中をパンデミック(Pandemic)の恐怖に陥れるか分かりません。

ウイルスの発生原が鶏で、世界中には何百億羽と飼育されているだけに防ぎようがなく、さらに困ることは、渡り鳥はじめ各地方に常住している野鳥がウイルスの伝搬役割をするので、この病気の解決はますます困難です。

鶏の法定伝染病のひとつ、ウイルス病の「ニューカッスル」があります。

鶏にはインフルエンザと同じよう呼吸器障害で死亡率が高いですが、人間は呼吸器感染はなく目にウイルスが入ると結膜炎を引き起こします。

ウイルスの怖い伝染病のひとつに「HIV エイズ」があります。

この病原体もチンバンジーのウイルスが、人間に伝播したものと伝えられています。

この病気もアフリカの風土病的色彩が強かったものが、動物の生存地域まで開発という名のもとに人間が侵略し、容易にこのウイルスに感染、さらに人間交流の拡大により、世界的に感染を広めました。

ことにこの病気は、人間同士の生殖と生理的欲望の行為が、感染拡大と伝播の元凶ですから深刻です。

これらは代表的なウイルス病ですが、古典的なウイルス病に「狂犬病」があります。

この病気は犬と人間に同じような症状が発生、犬は狂い昏睡して死に、人間も神経症になり昏睡状態で死にます。

しかし日本では、飼育犬の狂犬病予防のワクチン摂取徹底で、この病気の心配はありませんが、開発途上国などへの旅行ではまだまだ注意が必要です。

そのほか蚊から伝染する「西ナイル熱」同じ蚊からの「日本脳炎(ポリオ)」1999年マレーシアで話題になった豚からの感染の「二パウイルス」は人間に脳炎を発生させます。

この夏、東京の代々木公園散策で発症した「デング熱」も蚊が媒介し、秋になっても蚊取り線香がよく売れて話題になりましたが、これは熱帯病のひとつで、赤道に近いところでの発症が常識でしたが、近年の温暖化により、亜熱帯以北の国々でも発生が多くなっています。

熱帯病で有名な蚊から伝播する病気に「マラリア」がありますが、これはウイルスでなく原虫病です。

原虫が血管に入り、赤血球を破壊し高熱に侵されますが、困ることにマラリア原虫は患者の中に定着し、媒介の宿主になることです。

このように人畜共通伝染病の中には、原虫や寄生虫などによる疾病もかなりあります。

家畜と関係の深い疾患に「トキソプラズマ」と「クリプトスポロジューム」があります。

この二つとも原虫によるもので、「トキソプラズマ」は妊婦に感染した場合、流産や胎児に先天的障害が起きますので危険です。

豚肉や牛肉の生肉からの感染が話題にされますが、猫なども中間宿主で糞の中にこの原虫のオーシスト(卵)が排泄され、その感染危険度は生肉より高いでしょう。

「クリプトスポロジューム」は5ミクロンくらいの極小の原虫で、ネズミなども宿主ですが、牛、鶏などの糞便を通じ土壌や飲水が汚染され、地域住民に下痢などの集団中毒を起こした事件が各国にあります。

現在でも日本の乳牛と肥育牛の畜産農場ではこの病気に悩まされています。

ことに鶏や牛などに感染するもう一つのコクシジュームという原虫病や、クロストリジューム菌などと合併し発病しますと、血便と下痢便発生で死亡事故も含め被害が大きくなります。

「クリプトスポロジューム」には特効薬がありません。

唯一この3種類の原虫と細菌を殺し治療できるのは、私どもが取り扱っている生菌剤と酵素で、ことに仔牛の斃死を防ぐ実績では世界一で、日本でも予防治療に使われます。

ちなみにこの生菌剤は安全で、人畜共通伝染病の代表、サルモネラ菌、大腸菌O157、カンピロバクターなどの食中毒菌にも効果があり、薬事法で薬剤が使えない鶏卵生産農場では、産卵期間中の病気対策に多く使われていますので、日本産の卵は生で食べても安心です。

さて寄生虫の感染に「エキノコックス」があります。

キタキツネが中間宿主で、それゆえ北海道に発病者が多くいます。

もとより犬にも寄生する条虫の仲間で肝臓障害を起こします。

有名な犬の病気「フィラリア」も原虫病で、蚊などによって伝播しますが、人間にも感染して下痢症状や胃腸炎を起こします。

「アニサキス」は淡水魚から感染する線虫の回虫症です。

魚類からの感染はほかに「肺吸虫症、肺ジストマ」「肝吸虫症、肝ジストマ」鮭や鱒から感染する条虫の「サナダ虫」など、動物以外の魚の生肉(刺身)からの感染も注意が必要です。

日本人は生ものが好きで、生卵から魚の刺身や魚卵、はては牛や豚の肝臓の刺身や鳥や鹿の生肉、スッポンや蛇の生血など、私も過去にこれらの食品を喜んで食べていました。

今でも生卵と魚の刺身は大好物ですが、いずれにしろ絶対安心はないと思います。

ことに動物の生肉と血液や内臓は危険度が高く、寄生虫、原虫の感染だけでなく細菌性の病気の感染はもっと深刻です。

ですから加熱しない生肉や血液は食べないことです。

今回はその危険度の高いウイルスの感染症と、吸血昆虫などの蚊と原虫、寄生虫の感染症を紹介しましたがまだすべてではないです。

また動物由来の病原菌には細菌、真菌(カビ)、リケッチア、プリオンタンパクの狂牛病など沢山ありますが、これらは後半に紹介しましょう。


サルモネラ菌

〜全世界で発病させる食中毒菌の代表〜
(汚染鶏卵は養鶏場の責任、4500万円の賠償金)


3年ほど前2011年8月、宮崎県延岡で発生したサルモネラ食中毒事件で、死亡した70歳代の女性の遺族が、死亡原因になったサルモネラ菌汚染の鶏卵を販売した、生産農場を相手に訴えた裁判が、今年の3月結審しました。

被害者側の訴訟通り、判決内容は加害者の農場の有罪となりました。

その決め手になったのが、鶏卵のサルモネラ菌汚染が立証されたからです。

この事件は2011年8月2日に食料スーパーから買った卵を、8月5日に納豆やオクラと混ぜて夕飯に食べ、一家3人が中毒症状となりその中の1人が死亡した事件です。

食中毒の原因が生の鶏卵にあったと判断した遺族は、食べた卵の殻と、冷蔵庫に保管していた未使用卵と包装されているパックを保健所で検査してもらい、そのすべてからサルモネラ菌が検出され、生産農場の衛生管理に問題があったと断定できたのです。

なお判決には、生産者責任の重大過失を認め、被害者に4500万円の賠償金を支払うよう命じました。

この判決は養鶏業者に強い衝撃を与えました。

それはほとんどの養鶏場もサルモネラ菌皆無と言えず、それを鶏肉から無くすことは、かなり困難であることを知っているからですからです。

そもそもサルモネラ菌は鶏卵だけでなく、鶏肉にも豚肉にも牛肉にも、時により野菜や果物、加工食品などからも検出され、さらにペットの犬、猫、小鳥なども危険ですし、ことに爬虫類の蛇やカメなども多く保菌します。

野外に生息する、野ネズミ、野鳥、ゴキブリ、ハエなどもサルモネラ菌の運搬動物で危険です。

種類も2000種以上あり、その中で鶏卵や鶏肉から検出されるものは20種ぐらい、なかでも腸炎サルモネラ菌(S.Enteritidis)とサルモネラネズミチブス菌(S.Typhimurium)、サルモネラインファンテス(S.Infantis)が多く感染しています。

人間の法定伝染病の腸チブス、パラチブスも同じサルモネラ族です。


日本養鶏協会の発表では、現在の鶏卵は0.03%ぐらいの陽性率と言います。

農水省の発表は0.2%と食い違いますが、いずれにしろ10年前から見ると100分の1ぐらい少なくなっています。

この日本の陽性率は非常に優秀で、汚染の少ない優秀国と言われるデンマーク、スウェ--デンでも1%の汚染率ですし、アメリカやEU諸国も2−5%ぐらいの陽性率、あるアメリカの研究機関の調査では中国やベトナムなどは30−50%という報告もあります。

日本が少なくなった要因は、衛生管理に対する生産者の熱意と、サルモネラワクチンの使用もあったからでしょうが、生卵を醤油と一緒に混ぜて、炊き立ての熱いご飯にかけて食べる「卵かけごはん」に適用する卵を作ろうとの目標も馬鹿にはできません。

ただし日本養鶏協会の0.03%の汚染率と言っても、1万個当たり3個の陽性卵で、100万個ですと300個になります。

もし1日1000万人が、好きな「卵かけごはん」で生卵を食べたとしたら、3000人の人がサルモネラ菌汚染の卵を食べたことになります。

1年間を統計的に見ますと、100万人を超える人が汚染卵を生で食べたことになります。

だがサルモネラ食中毒の患者はそこまで出ません。

1990年代は10000人からの感染が報告されていましたが、最近は300人台です。

というのは、卵が汚染されていても、菌数が少なければ食中毒症状は出ません。

少なくとも菌数が10万個から100万個ぐらいにならなければ、劇症感染にはなりません。

日本は1998年に食品衛生法が改正され、鶏卵の安全の表示基準と規格基準が取り決められ、外気温度と低温流通と低温販売施設などの条件により、消費期限と賞味期限が設定されました。

現在日本の現状は、生まれた卵は傷卵や卵の中に異物があると光で透視して除かれ、正常なものはすぐに塩素系の消毒液で洗浄され、大きさ別に選別し10個入りのプラスチックパックに詰め込まれ、冷蔵室で管理する、パッキンググレーディングセンター(包装規格選別工場)で出荷まで貯蔵されます。

出荷も生産された当日か翌日には、保冷車でスーパーマーケットに運ばれ、店先では保冷棚に陳列され販売されますので新鮮です。

また春夏秋冬の温度差により、表示する鶏卵の賞味期限が決められます。

冬に生産された鶏卵は10℃以下で流通、販売管理されれば57日間。

夏の暑い時期の卵は、平均温度27℃として16日間の賞味期限。

春と秋は平均20℃として25日間と決まり、パッケージに生産者名で賞味期限が印字されています。

ただし政府は生で食べることへの危険性も表示し、過熱を推奨しますが、日本の卵好き人種は低温流通され規格が守られている、産卵から2週間以内の卵は安心して食べます。

というのも、汚染卵も15℃以下の温度で保管された卵は、菌が存在しても卵の中で増殖していないことを知っているからです。

それゆえ、宮崎で起きたサルモネラ感染事件は、すでに養鶏場で強度感染されていたか、または8月の暑い盛り割卵してから食べるまで、かなりの時間が経過し菌が増殖していたかどうかです。

ただ今回は、冷蔵庫に保管されていた同じ卵からもかなりの数の菌が検出されたことが、絶対的証拠になったようです。

さて、ご存知のように卵は生き物です、卵殻には細かい穴があり、そこを通して呼吸をしています。

もし雄の精液が掛かった受精卵なら、38--40度で21日間保管すれば雛が誕生する生命体です。

温度が30度を超えた条件になると、サルモネラ菌が繁殖する培地としては、タンパク質の塊で栄養充分で水分もある卵の中は最適です。

それだけに温度管理が大切です。

ところが東南アジアや台湾、韓国などの卵の流通状態を見ますと、卵トレーに入れたまま箱にも入れず、覆いもしないでトラックに積み込み、太陽が直接卵に当たり、温度が上昇するのも構わず運搬し、そのまま食品店の店頭にむきだしのままに置かれて販売されています。

低温管理がされない流通と販売システムです。

生まれたての卵にサルモネラ菌が10個入っていたとしても、生まれてすぐに低温管理されて、貯蔵運搬されれば、菌は増えませんが、真夏の30℃超えた温度で10−20時間経過しまと、菌数は驚くほど増えています。

菌は30分に一回ぐらいの割合で倍増しますから、10時間経過で1千万の菌数になりますから、生で食べたら完全に急性中毒になります。

もしサルモネラに感染しますと、潜伏期間の12時間を過ぎると腹痛が始まり発熱嘔吐、黒緑色の水様状態の下痢と時には粘血便ともなります。

これらの症状はサルモネラが腸内で繁殖するとき出す毒素のエンテロトキシンが原因で、この毒素のショックで死亡するケースが多いのです。

ただし日本人はじめ東洋系の人は、サルモネラ中毒には強いのか病院まで運ばれる中毒患者が少なく、さらに死亡者も少ないです。

統計的に掌握していないのか、少しぐらいの症状では、病院に行かず市販薬で治してしまうのか、発病が統計的には少ないです。

もっとも加熱して食べるので少ないかもしれません。

しかし同じよう生卵を食べる習慣のない、欧米の発生率はすこぶる高いです。

アメリカの病気管理予防センター(CDC)の報告を見ますと、確認できたサルモネラ食中毒で19000人が発症し、そのうち380人が死亡しています。

同じCDCの2012年の発表では、10万人当たり16.42人のサルモネラ感染と言いますから、3億5千万人口で考えると6万人近い数字になります。

未確認の患者は恐らく120万人、450人ぐらいが死亡していると推定している報告もあり、治療に掛かる費用と人的マイナスを考慮すると、3億65百万ドルの損失になると発表もしています。

ヨーロッパ諸国も同じようにサルモネラ対策に頭を悩まし、サルモネラ(ST、SE)保菌種鶏は淘汰するよう規制がありますが、なかなかその通りにはいかないようです。

個人的見解ですが、日本でこのサルモネラ菌が鶏から発生するようになったのは、戦後ヨーロッパから輸入された種鶏からと考えていますので、そもそも欧米諸国が菌の輸出拡販国だと思います。

それはさておいて、とにかく養鶏場ではサルモネラ汚染を防がなくてはいけません。

その中でことに種鶏場の責任は重いので雛がサルモネラ菌を持参して、採卵養鶏場やブロイラー生産者に販売されないことが重要です。

これも手前味噌ですが、15年前ごろ鶏卵が原因でサルモネラ中毒患者が続出したころ、薬を使わずサルモネラを抑制する生菌飼料を考え、台湾のある研究所にお願いし開発した生菌飼料が、日本ではかなりの成果を上げたと自負しています。

こんな目に見えない地道な努力は、一般にあまり評価されないが、とにかくきれいな雛と卵を作ろうという気持ちは今でも継続しています。

いま日本はワクチン使用が増え成果も上がっているようですが、根本的には皆無になりません。

基本的には養鶏場に「菌を入れない、増やさない、やっつける」を実行していかなくてはいけません。

その暁には、サルモネラだけでなくカンピロバクター、病原性大腸菌の被害が皆無になるでしょう。

それと畜産物も食品であり、消費者に危害を加えない認識を強く持った生産者が増えてくることを願います。

ことに卵は安い商品の代名詞「物価の優等生」ですが、安全安心のためにかかったコストを消費者が認めてくれることをお願いしたいものです。



豚肉、鶏肉、卵の安全性

〜台湾の病気発生状況と薬剤多投の現実〜
(経済的発展淘汰かな生活が安全な肉と卵を作る)


先週、2014年8月26日より28日まで、台湾に仕事で滞在しました。

台湾には、年初めの1月14日から5日間と、7月の第1週にも6日間訪問しましたので、今年は合計3回になります。

その目的はほとんど畜産に関連した、養豚、養鶏場、または飼料会社や取引先の数社です。

そのなかで問題を抱えているのが養鶏場で、ことに種鶏孵化場では生産した雛にまで病気が移行し、生産者との間でクレームが生じている事実を聞かされました。

それがため飼育時に発生する病気対策と、それに対応する予防治療方法、また生産物へ移行しない方策、加えて鶏肉や卵の安全性を確保する飼養管理の話に集中します。

ことに台湾は、鳥インフルエンザ、豚の口蹄疫が終息せず、さらにサルモネラ、大腸菌、クロストリジューム、コクシジュームなど、感染性病気が蔓延し、生産性が落ち込んでいる現状があり、この解決は早急にしなければなりません。

それらの感染症の中には、人間への感染で食中毒を起こす危険もあり、また病気治療に薬品の大量投与で対応する危険が重なり合っている現実を知りました。


ご存知のよう、いま世界全体が食品の安全性に、ことに畜産物の薬品残留と病原菌の汚染ついては、強い関心を持っています。

それは国内で生産するものから、輸入食品全てに対して同じですが、ことに国内産についてはより監視の目が官民ともに厳しくなっています。

ことに経済的に発達し、国民の生活レベルが向上した国々の、食に対する安全性への関心はひときわ高く、台湾もこの数年、政府指導で生産段階から流通段階まで、食品生産上衛生的な危害が発生しないよう厳しい監視が行われていると聞きます。

私の知る台湾の20〜30年前までは、食料生産の現場も、食品市場も食堂も衛生管理がよく整っているとは決して言えない状態で、私が肉や卵の生産現場で衛生面での欠陥を指摘しても「台湾ではかまいません」との答えでしたが、たしかに最近の台湾は急激に変化しています。

ことに食堂の美的水準は、厨房からテーブル、サービスをするウェイトレスからウェイターまで、衛生的マナーと行動は隔世の感があります。

「衣食足りて礼節を知る」ということわざがありますが、豊かさが人間の心と常識を変えていき、見えないところでも正しい行動と、責任を負う心ができるのです。

前に中国での経験で、病原菌が感染した肉でも加熱すれば問題ないと言った生産者の話をしましたが、これは心が貧しさの表れで、中国と中国人の食物に対する常識と無責任さと無智を物語るものです。

病原菌に感染した事実の究明より、結果問題を起こさなければ良いではないかの心では、安心安全の食品はほど遠いです。

ところで私が関係する台湾の畜産業者の中には、まだ心の貧しい、自分だけがよければその肉や卵を食べる人への思いやりが欠ける人が見受けられます。

その一つの表れが、薬品の多投です。

ご存知ない方も多いので少し説明しますが、牛、豚、鶏にも人間と同じように四百四病があります。

ウイルス病からバクテリアの感染症、原虫病から回虫などの寄生虫、ダニや羽虫また蚊などから感染するマラリア的病気など、そのすべてに薬品が開発されています。

また病気によってはワクチンが開発されています。

これらの病気に感染すれば、生産者は薬品を使い治療予防するのは当然で、そのことが即安全性に問題があるとは言えません。

ただし薬品の効果だけに頼りすぎ、大切な病気感染を防ぐ環境整備や、従業員の衛生管理の知識と実行を忘れ、問題が起きたら薬で解決する習慣と、さらに病気侵入を恐れ、予防的に常時使つづけることが問題なのです。

使い続ければ病原菌も薬に対して抵抗力を持ち、病気はいつまでたっても治りません。

さらに困ったことは、畜産に使用する治療薬の多くが、人間の感染症に使用する抗生物質や抗菌剤とダブることです。

これらの治療薬は肉や卵の中に残留することもあり、その肉や卵を人間が食べていますと、知らぬ間に病原菌が薬剤に耐性ができてしまい、本当の病気になった時すべての抗生物質が効かなくなることです。

こんな病原菌を「スーパーバグ」と呼び、全ての薬剤に抵抗性を持つ多剤耐性菌となるのです。

本来薬剤で治る感染症の細菌が耐性があるため治らず、その結果全世界では年間500万人を超える命が失われているとも言われます。

当然この多剤耐性菌の増加原因に、畜産業界の薬品使用の多さが問題にされます。

家畜家禽に発生する病気の治療薬の乱用と、さらに配合飼料に成長促進剤として使用されている薬剤の長期間多投が、他の治療薬の薬効にも影響し、感染症が治りにくくなり、だんだん投与量が増加しなければならない結果も生みました。

畜産物生産は経済行為ですので、コストが少なく生産量が増えれば利益を生みますし、また価格も低下し消費者も喜びます。

それがため、薬害が少ないと認められている抗生物質などが成長促進剤として各国の政府は認証しています。

日本も台湾も同じです。

これが恒常的に長期的に使われていることが、病原菌にどのような変化と耐性を作ってきたかの検証はできていません。

病気を予防したり治すために使う薬が、さらに病気を呼び起こす発火点になる、皮肉な現象にもなっているかもしれません。

さらに問題なのは、この抗生物質が動物腸内に生息する善玉菌を殺して、腸管内の環境が脆弱になることです。

こんな弱い腸管を作っては非常に危険です。

動物の腸の健全性はその動物の健康と免疫向上を図る大事な器官で、善玉菌の乳酸菌やビフィズス菌が失われては、成長も生産性も落ち込みます。

私は台湾の幾つかの飼料会社の研究所の研究員との面会を重ね、台湾の実情と薬品の現状を聞く機会があり、多くの病原菌に薬品耐性ができ効果が無くなっている事実を知りました。

それは今まで、安易に薬品だけを頼りに病気対策を立て、まして大量購入すれば単価が安くなる薬品会社の戦略にはまった結果です。

この話は台湾だけでなく、世界共通の現状のようですが、ことに発展途上国の生産者は、病気対策に考えなしに安易に薬品を使いすぎています。

また薬品会社も代理店も自社で作った都合の良いデータを、知識の薄い生産者説得に使用、営業的に無償サンプルなどばらまいて使用量を増やさせます。

使用量が増えると、薬品残留の肉や卵が増えることで、人間への危害はますます増えますが、生産現場ではそれには神経を使いません。

翻って日本の現状はどうでしょう。

確かに国としての薬品使用量は台湾より多いです。

それは飼育している動物の数が多いからで、実質的には一頭当たりの使用量は台湾よりかなり少ないです。

それは日本の生産者が、可能な限り薬品を使わない生産管理を行い、動物を飼育する環境整備と、畜舎の清掃と洗浄、消毒と燻蒸などバイオセキュリティーの徹底をし、健康管理を図る管理システムを構築した農場が増えたことです。

さらに薬を使わないで動物を飼育する、矜持(心の誇り)を持つ生産者が多く輩出されたからでしょう。

そんななかで、養豚だけは薬品使用量が多いことが気になります。

アメリカなどから沢山の豚肉が輸入されている今日、それを迎えうつ国産の豚肉の安全安心は大丈夫なのか心配です。

鶏卵は薬事法で薬品使用が禁止されていますので、産卵期間中はつかいません。ただし卵生産時でも鶏は病気になりますが、それでも薬が使えません。

使ったらその期間の卵は販売してはいけない法律があり、もし販売したら営業停止など、企業存続に影響する事態になります。

これは大変なことです。

幸いなことに私たちが開発した生菌剤(プロバイオティック)は、腸内で発生する感染症の細菌の増殖を強力に防ぐ能力が優れていて、多くの養鶏家が採用していただいています。

欠点としては薬品より高価なことです。

ただし薬品を使えばその期間の卵は法律上販売できませんが、我々の生菌剤は納豆菌、乳酸菌、病原菌を分解する酵素などでできている有機製剤なので、卵は販売できますし、健康もたちまち回復し産卵も元に戻ります。

薬品使用で販売できないマイナスを考えると、決して高くはありません。

さらに鶏卵生産者の気持ちの中に、安全安心の卵を消費者に届けようとする、積極的な心の持ち方があるからです。

この生菌剤は目下、韓国、タイ、エジプト、バングラディッシュなどへ輸出していますが、使用数量は日本の比ではありません。

そのほかの国々は、経済的に有利な薬品依存の国となります。

ただし薬品を使用しでも、サルモネラ、カンピロバクター、大腸菌O157など、人間に食中毒を起こす細菌はなかなか消えていません。

それゆえ私は東南アジア、中国、韓国、台湾では、決して生卵は食べませんし半熟卵も遠慮します。

というのもこれらの国々の養鶏事情をよく知っているので、自己防衛のつもりです。

唯一日本では生卵も半熟卵も安心して食べています。

薬品使用に厳しい規制がある国はEU諸国で、ことに治療に使う抗生物質には神経質です。

それはとりもなおさず人間への薬品残留危害を防ぐ目的です。

アメリカも食品薬品局(FDA)は、薬品の危険性を十分認識していますが、薬品会社と畜産生産者団体の強い反対にあって、規制が緩いです。

そんな国から牛肉や豚肉、鶏肉がTPPという自由貿易の名のもとに、無制限に輸入されることを私はおそれます。

こんな状態の世界ですが、日本の生産者(ことに鶏卵)は、目に見えないところで、消費者に安全を届ける努力をしているのは素晴らしいです。


さて台湾はどうでしょう。

台湾も薬品使用には厳しい規制があり、日本同様産卵期間中の鶏には薬品の使用は禁止されています。

問題がそれが正しく実行されているかいないかです。

巷間伝わるところによりますと、これが徹底されず無断使用が横行し、見かねた政府が徹底的に実行するよう強い行政指導に乗り出したようです。

やがて日本と同じ薬品残留のない、サルモネラフリーの鶏卵が生産されましょう。それを期待します。

さらに鶏卵だけでなく、鶏肉も豚肉も牛肉もアヒルの肉も同じ状態にすることが先進国の行政です。

ところで薬品使用を軽減すれば、病気発生の危険が増えます。

これがこれからの病気との新しい闘いです。

飼養環境の整備や消毒など、物理的防疫体制だけでは防ぎきれない現実となります。

動物にダメージを与える病気だけでなく、食品としての肉、卵に感染する病原菌、サルモネラ、カンピロバクター、病原性大腸菌のO157やブドウ状球菌なども防がなければいけません。

これらの病原菌の危険をも、生産者は生産物から除去しなければいけません。

すなわち、これからの肉や卵の正しい規格は、可能な限り無薬、無菌が条件となります。

残念なことに台湾では、無薬の計画は立てられるが、無菌にすることが難しい現状でしょう。

その背景には中華料理は全て加熱する料理で、過熱により病原菌は死滅するから気にしない感覚が根強く、サルモネラやカンピロバクターの名前さえも知らない養鶏業者がいるくらいです。

しかし最近の中華料理は国際化し、コース料理やセット料理には生野菜のサラダや、刺身など新鮮さ演出する料理も出されます。

また西洋料理のレストランも増え、非加熱料理も多く見受けます。

これら加熱処理しない食品は、同じ厨房内で処理される肉、卵から、容易に汚染される危険があります。

家庭のキッチンも同じ条件で危険があります。

これらを段階的に是正するには、台湾の人たちの衛生観念の進歩と、畜産業者の生産理念の変化が大切です。

今回私が面会したのは養鶏関係者ですが、この方たちは進歩的な考えの生産者で、薬品使用を低減し、なおかつ病原菌汚染を無くす飼養管理に賛成しています。

それにはかなりの改革が必要で、現状の常識を打ち破らなくてはなりません。

安全な食品を作る方法にHACCP(危害分析管理法)があります。

畜産管理にもこの方法が取り入れられ、日本の畜産農場のかなりの数が、承認を受けています。

HACCPを行うことにより、自分の農場の欠点がわかり、安全性を高めるための是正ポイントが判明します。

それは日々の管理行動とその記録です。

その記録が正しければ、やがては生産性も向上しますし、薬品の使い方にも無駄が無くなります。

それ以上に薬品を使わなくても、健康的な動物が育てられると思います。

台湾でも農場HACCPを実行することができれば大きな飛躍です。

それは畜産業全体の発展でしょうし、台湾の利益です。

やがて台湾の消費者に安全安心を届けられる基礎が出来ます、それにより国民の健康は今以上更新するでしょう。

そんな気概を持った畜産業者が排出されることが、将来の畜産業の発展になるでしょうし、それが成功すれば台湾に、新しい豚肉、鶏肉、卵の安全基準ができます。

その目的に私たちが、また私たちが提供する生菌剤が、少しでもお手伝いできたら幸せです。


食の安全雑感

〜中国産の期限切れ鶏肉チキンナゲット騒動〜
(安いことがすべての、輸入食品の安全性を再度考える)


中国上海の食品工場で製造したチキンナゲットに、
廃棄する腐敗直前の原料が混合されていたニュースが7月の下旬放映され、
やれやれまた危険な中国製食品か、いい加減にしてほしいとの思いでした。

このニュースで驚いたことは、
このチキンナゲットが世界的に有名なファストフード大手の日本店と、
有名コンビニエンスストアーで販売されていたことです。

食の安全が叫ばれ、消費者の食の安全性に対する関心が高い今日、
日本を代表する企業の商品チェック体制と、
製品に対する責任感はどうしたのかとの疑問も感じます。

中国製品を取り扱い販売するには、この程度のリスクは先刻承知であったでしょう。

しかし製造ラインに腐りかけの鶏肉が混合される動画が、テレビ画面に映し出され、
その作業担当者から「別に死ぬようなことはないので」とのコメントには、
取り扱っていた日本企業も唖然としたことと思います。

もう一つ驚いたことは、こんな生々しい現場を取材した地元テレビ局の報道姿勢があったことです。

今まで中国製品の安全性が問題になったり、食品被害が出たり、
検査結果違法物質が検出された時でも、その実態の現場はわかりませんでしたが、
製造現場の不正を告発する撮影は、証拠としては第一級です。

これでは中国の政府当局も、工場経営者も弁明弁護の仕様がありません。

逆に工場責任者を逮捕して、原因究明とその責任追及並びに不正に対する懲罰にと発展せざるを得ませんでした。

まずこの快挙に喝さいを送ります。

以前から問題を起こし続けている中国食品製造現場の不正の実際を、
中国のテレビ局そのものが、公にした勇気にも感心しました。

行政と企業の癒着、報道機関と政府または企業とのもたれ合いなど、
企業内の内部告発以外で、外部機関の調査で実態が明るみに出ることは中国では希有のことだと思います。

私の体験の中でも、中国の食品会社と中国の検査機関との関係を知る機会が何回かありました。

だいぶ前になりますが、養鶏の技術指導で上海の食鶏処理場を訪問した時のことです。

屠体処理した生の丸鶏が、土足で歩く土間コンクリートに並べているのを見て
「土間はバクテリア汚染の危険があるので、
衛生的な箱を作りその中に氷と一緒に入れてください」と注意した時

「調理して食べるから、危険はない」との返事と
「政府の検査官も別に問題にしていない」には、
後の言葉が続かなかったことを思い出します。

その時、この国の食に対する検査機関と製造者の標準的常識が、
私たちの常識の違いをそこに見ました。

確かにバクテリアの汚染は熱処理すればその危険はなくなりますが、
生鮮食品として食べる人に、安全を送るという企業モラルの考えは皆無のようでした。

笑い話ですが「中国で生活するには、毒の食品を食べて長生きできないか、
その毒を嫌って食べないで餓死するか、どちらの選択しかありません」と
中国の知人が冗談で言った言葉が忘れられません。

ということは「期限が過ぎた原料を混合しても、フライ処理すれば危険がなく、
味も変わらないから問題ない、それよりも価格的に安いことがお客さんの利益だ」
の理屈が常識のようで、その常識の中で生きていくには、
少しぐらいの危険は我慢するのが、中国の消費者の常識なのかもしれません。

この安く作るために、廃棄直前の鶏肉を使わざるを得ない事情があったとしたら、
安い商品を強要した発注者の方にも責任があるのでしょうか?。

振り返ってみますと、こんな事態になった本質はどこにあったのでしょう。

以前、これも中国訪問時の経験談ですが、
中国からの輸入野菜に農薬が残留していることが問題になった時
「きれいなそろった野菜を作ることが条件で、
虫食いや病気で見た目が悪い野菜は日本人が買わないから農薬を使わなくては」
との返事があったことがあります。

さらに「その農薬は日本製ですよ」と追い打ちがかかりました。

また「中国では農薬を使わないと、農作物は収穫できない」と
一般の消費者は認識しているようです。

ですから、かなりの家庭では野菜などに残留する農薬を洗浄する農薬洗浄剤が
使用され、表面に付着している農薬は洗い流すようです。

このような生産体制になったことは、中国建国からの歴史的なもので、
農業の発展が国の力であり、国民への食料供給が第一の生活安定だとの考えが、
新国家共産主義の原点にあったことから始まります。

農産物を生産していた人民公社の評価は、とにかく収穫量の多寡で決まるので、
化学肥料と農薬による生産競争へとなだれ込み、食の安全性など見向きも
されない習慣が続いたことが、今日の安価で生産量第一の思想背景ができたと見ます。

とにかく安全性より収穫量が大切で、大量に生産すれば価格も安くなり、
その安さに魅力を感じた日本の食品加工会社、レストラン、スーパーマーケット、
農作物販売会社が、安い中国食品に群がったのです。

その背景に、日本の企業同士の価格競争と市場占有競争がありました。

さらに中国食品が日本に大量輸入されるようになった背景は、安くて形さえ整い、
製造者や販売者の企業名が有名なら、日本の消費者は何の抵抗もなくその商品を買い求めました。

今回の問題が起きて、報道機関が中国産食品を使用しているレストランチェーンを
調べたら、ほとんど有名な外食店舗が、
全てではないが何らかの料理の一部に使用している報告がありました。

しかし、どの店舗でも、メニューに中国産使用とは表示していません。

おそらく、今回のチキンナゲットが、
中国産であったことを知っていた消費者が何人いたでしょう。

消費期限切れのチキンナゲットのテレビ放送を見て、
中国産と知ったのではないでしょうか。

このように、安いから使う、安いから価格競争ができる、
安いからお客が満足する、安いから利益が上がる、
日本の企業にも安いものへ対する羨望がなかったとは言えません。

さらにその安さを最も歓迎したのは、中国食品の安全性をたえず疑っている、
ほかならぬ日本の消費者です。

ですから企業の選択も、消費者の要求に対するサービスと、
企業の利益獲得のためだとしたら、
安いものを求めて中国産を扱ったことを間違った経営手段とは言えません。

ただ問題なのは、その安さを提供する中国の生産体制と、
中国人の食に対するモラルと常識が、
日本企業が考えている常識とは、少し違うことをどれだけ認識していたかです。

ご承知のよう、日本の食料自給率は40%に達しないといわれます。

中国だけでなく、世界のあらゆる国から食料は輸入されます。

これらの安全性はどうなのでしょう?中国だけの問題とは思いません。

私たちは仕事柄、諸外国の鶏肉や豚肉などの生産状況を熟知しています。

薬品残留の危険、有害微生物の汚染などが心配です。

この薬品残留と、有害微生物汚染を一挙に無くせる有機的生菌飼料(プロバイオティック)を開発し、
日本をはじめいくつかの国にも紹介しています。

せめて日本人が食べる卵、鶏肉、豚肉、牛肉、牛乳からは
危険を無くそうとのポリシーで努力しています。

ただ残念なことにこの有機製剤を、中国へは紹介していません。

さて最後に、8月の初旬、今回の事件を中国政府と日本政府が話し合いました。

その席で中国側から、問題を起こした上海の企業を取り調べた結果
「日本向けに出荷した商品には、消費期限切れの原料は使用されていないので安全です」の
コメントが発表されました。

さぁ、それが事実だとしたら、カビの生えた期限切れ原料の不正商品は、
どこへ行ったのでしょう?

中国政府の発表を知った、中国人はツイッタ--で

「日本向けは安全、期限切れ商品は中国人の口に」

「よいものは輸出、悪いものは国内販売か」

「毒入りは中国人へ」

「中国人のメンツにかけてよいものだけを輸出する、日本人はそれを理解しろ」

「輸出製品は安全、日本人は安心だ」

などなど自虐的なギャグも含めてにぎやか。

ところで、この期限切れ原料のニュースが流れた結果、
日本のファストフード店は問題のチキンナゲットの販売取りやめは勿論、
その影響で売り上げは大幅に落ちました。

面白いことに、中国の同じファストフードチェーンで、
同じチキンナゲットが飛ぶように売れたというニュースが入りました。

なぜか? それは期限切れでも間違いなく鶏肉を使っていた、
他の訳のわからない雑肉でなかった、この報道が証拠になって、
正真正銘なチキンナゲットということで、売れ行きが伸びたようです。

所変われば品変わり、価値観も変わります。

この辺に中国食品に対する、中国人の常識の原点があるようです。












  〜大型化と繁殖養豚と肥育養豚との分離〜
  (産業の統括化と安心安全な肉生産で輸入豚に勝)


1. 政府も進める農業の大型化

いま日本農業は大きな曲がり角に来ています。

農産物、畜産物、食糧品すべての自由化を前提にしたTPP交渉が締結されたら、好むと好まざるにかかわらず、日本の農産物、畜産物は国際価格との競争を強いられます。

この価格差に打ち勝つため、政府は農業改革に取り組もうとしています。

その第一が農業の大規模化です。

大規模にすることにより、作業の機械化と効率化、労働力の省力、流通の簡素化が可能になり、農産物の価格が引き下げることが可能で、コメを中心とした日本農業の再生ができるとの考えです。

たしかに大型化することにより、作業の効率化は図られますが、日本の農業には農地の集約化が難しい問題として存在します。

しかし、畜産業では施設の集約化で特別大きな土地を必要とせず、また土地を分散することも防疫上好ましく、広大な土地を必要としないで大型化が図られる、産業構造的な優位性があります。

さらに大型化することで生産コストが低下することが、統計的にも証明されているのが畜産業です。

事実「物価の優等生」と言われる鶏卵は、養鶏業者の努力と大型化、機械化により、国際価格と太刀打ちできる小売価格を確立しています。

この鶏卵生産業も、輸入穀物を使い飼料会社から高い飼料を買い、国際価格より2倍以上するワクチンと薬品を使い、高い水道光熱費と労働費で生産しながらも競争力があるのです。

大型化の実態を、農水省などの統計で見ますと、昭和40年(1965年)の数えきれない小規模養鶏が、2010年の養鶏場は大型化しその数値は、1996倍と飛躍的です。

生産農家が2000分の1に減少し、大型化した農場がその羽数を集約したことになります。

ちなみに、大型化がなかなかできなかったコメ生産は、同じ45年間の間にたったの1.9倍にしかなっていませんので生産コストが下がらないのです。

同じように養豚も598倍の大型化がなされていますが、採卵養鶏ほど衝撃的ではありません。

乳牛は34倍、肥育牛は32倍、ブロイラーは50倍ですが、昭和45年当時はブロイラー産業は創世期で、農家数も少なく、すぐにインテグレート化しましたので、倍率が少ないです。

その中で養豚は、鶏卵生産の業態と比較するとまだ大型化が足りないと見ますが、1970年代と比べたら、養豚家の数は100分の1近くまで減少してます。

それなのに気になるのは、おなじ肉生産のブロイラーとの生産コスト比較では大きく差がついていることです。


2. 畜産物の内外価格差

そこで畜産物すべての国際的な生産コストを調べ、日本の生産コストとの
価格差を対比しますと、豚肉生産コストがいかに高コストであるかが
わかります。


日本の生産コストと国際生産コスト平均の違い(生体1Kg)日本円換算

     日本産原価   国際平均原価   内外価格差   倍率

鶏卵   168.1   143.68    24.42  1.17
鶏肉   190.5   150.4     40.10  1.27
豚肉   392.4   127.8    264.00  3.07
牛肉   852.8   615.8    237.00  1.38
米    206.0    61.0    140.5   3.37

なぜこれだけの価格差がつくのか調べないとわかりませんが、採卵養鶏は私の知る限り、世界の中でも生産者の努力により日本の養鶏は、生産性が最も優れた生産能力と評価されています。

また生産物そのものが、そのまま商品として流通する優位性があり、生産原価と販売価格に差がなく、生産から商品パックまで企業内で行う合理性があります。

ブロイラーはインテグレーター組織で、飼育の生産組織が契約生産で成り立ち、また屠場を持つことにより、生産原価に無駄がありません。

また、大型の生鳥を必要とする日本市場に合わせた生産性では、世界の中ではナンバーワンの技術力です。

それに比較して養豚業は、生産効率が悪いのか、種豚含め生産材が高すぎるのか、養豚家の利益が大きいからなのかは分かりませんが、生産原価が高いです。

私は韓国の畜産とは長期にわたって関係し、豚肉、鶏肉の生産原価を調べたことがあり、参考にしますと、2000頭肥育豚生産規模の農場で、生体1キロの原価は235円前後です。

日本の392円と比較して150円以上安いです。

飼料原料は日本と同じ輸入品ですし、薬品、ワクチンなども外国ブランドです。

確かに人件費の違いがありますが、飼料費が日本の233円に対し151円、繁殖費(子豚)が15円に対し5円と3分の1です。

何か産業の構造的な違いがあるのか、大型化が図られていないのか考えさせられます。

日本の原価計算の統計数字は、コスト高の弱小養豚家も入るので、平均値が高くなるきらいがあるのかもしれません。

実際企業化した大型養豚業の原価だけを集めれば、韓国より低いのかもしれません。


3. 競争力ある産業構造

前置きはそれくらいにして、この高い原価を引き下げる具体論を考えましょう。

畜産経営で生産原価を下げて利益を確保する単純な思考は大きく分けて三つです。

1)少ない餌と薬で、早く大きく育て出荷すること。
2)生産の大型化と機械化により、労働生産性を上げる。
3)餌や薬などの生産材をできるだけ安く買うこと。

生産性を上げる方法の一つが飼養頭数を増やす大型化と、衛生対策と飼養環境を高める豚舎の近代化、飼育作業の簡素化と機械化による労働の省力化などですが、もっと検討したいのは、生産組織の統合化と繁殖養豚と肥育養豚の分離などでしょう。

これは組織的、構造的な産業の変革で、今までの繁殖、肥育を同一企業で行う一貫経営とは異なるものです。

同時にこれはインテグレートされた統合組織化が必然で、それを行える企業体が出なければならず、そんな企業は限られるかもしれません。

それを行い得る企業を考察しますと、商社資本をバックとした飼料会社、食肉販売とハムソーセージなどの加工組織、大型農協、実績のある大型化した既存養豚家、などが考えられます。

その組織は餌の供給から、子豚生産、屠場まで同じ組織が行い、生産材の実質コストを引き下げ、流通の無駄を省き大量販売でのスケールメリットを狙うものです。

生産材コストの中で飼料費が占める割合はダントツです。

この価格を安くするのは、飼料メーカーが農場経営をするか、大型の養豚場が自前の飼料プラントを持つことです。

すなわち飼料から繁殖農場、肥育農場、屠場を同一組織の中に統括することで、無駄な流通マージンをスキップすることです。

その中で最も難しいのが子豚生産の繁殖業務の独立です。

前回も触れましたが、繁殖業務は優秀な豚の遺伝的改良から始まって、系統的に生産効率がよい、肉質の安定した、標準化した子豚を、年間を通して平均的に大量生産する、高度の技術を必要とする組織で、養豚産業の成否を決める業務です。

母豚から1頭でも多くの子豚を生産し、その子豚を死亡させないで25キロ前後の体重まで健康に育てれば、肥育の成績はきまります。

その条件を担うには、母豚と種雄の繁殖能力を極限まで発揮させ、無駄のない妊娠出産管理を行い、衛生対策を万全に胎児と子豚の病原菌フリーの管理が大切です。

また1母豚あたり1年間に30頭、少なくても27頭ぐらいの離乳豚を生産し、現在の一貫経営企業体の原価よりかなり安いコストで生産し、肥育専門インテグレーター養豚場に販売することでしょう。

当然、繁殖方法はコスト引き下げと、優秀系統増産が可能な人工授精がすべてで、適正な発情チェックから精液注入まで、経験ある作業員または優秀な器具の開発などで、1母豚13頭〜15頭出産の標準化が可能になります。

母豚の改良により乳房の数を増やすか、人工保育の方法を確立するでしょう。

またハイブリッド育種手法で子豚生産数の飛躍的増加に取り組むことも業務となりましょう。

このような繁殖農場部門が独立し、母豚数で5万、10万それ以上の規模の大型繁殖会社を作り、それが成り立つことが養豚経営の改革かもしれません。

勿論一貫経営組織体でも、繁殖と肥育は別農場、別勘定として、それぞれの部門の原価引き下げを図ることが大切です。

何れにしろ、日本人の優秀な技術と開発力が発揮できるのは、繁殖部門でこの繁殖部門の生産性の向上が日米間のコストを縮める最大のポイントだと思います。


4. 養豚業の将来像

大型化は新しい農場の建設だけでなく、今まで小規模、中規模で生産していた既存養豚場の集約化も当然起こり得ます。

価格競争の狭間の中で、経営的に立ち行かぬ養豚家も出るでしょうし、後継者の問題、公害問題、生体販売問題など、解決ができず廃業せざる農場の肩代わりも起こり、そんな時代の流れの中で、養豚産業は大型資本の中に必然的に統括されそうです。

既存の養豚場は、土地、建物、生産設備と機器、糞尿処理、などそのまま使用できる条件が備わり、そのまま稼働できる優位性があります。

すなわち、大型組織の委託契約農場となることで、既存農場の生き残りが図れ、生計が安定するかもしれません。

ブロイラー産業の委託契約生産農場の形です。

ことに肥育専門の委託ですと、オールイン・オールアウト方式が望ましく、場内に1頭の豚もいない期間を設けることが、衛生上重要な条件で、病気対策の最善法となります。

ご存知のよう、日本で販売されている動物薬品の使用量は養豚が抜きんでています。

繁殖部門と肥育部門の別組織化と、肥育部門のオールイン・オールアウト化が進めば、本質的な病気対策が成功し、輸入豚肉より優れた「安心安全」な豚肉を適正価格で消費者に届けられます。

その目的のために私たちは、子豚の生産を増やせる、精液の希釈液を製造し使いやすい価格で提供して、生まれた子豚の健全な発育と病気感染対策のため、薬ではない代替物の生菌剤を紹介しています。

すべて生産原価引き下げと、安心安全な豚肉生産で、輸入豚肉に負けない日本産生産に協力したいと思います。

TPPの打撃に勝てるか日本の養豚産業

 〜日本とアメリカの豚肉生産の原価の相違〜
(飼料穀物の自給率だけの違いだけではない)


4月の23日から、アメリカのオバマ大統領が国賓として訪日され、日米の両首脳が二日間にわたり、日米の間で懸案になっている問題を話し合われたことを、大方の方はご存知です。

一つは政治的に複雑な、東アジアの安定と同盟国日本の立場を明確にすること。

もう一つは経済的には交渉が難航しているTPP(環太平洋経済連携協定)の早期妥結でした。

さて問題はTPPです。

ご存知のよう、この協定は参加する国々すべての経済、科学、文化の交流を促進するため、ことに経済面の物質の流通貿易の障害、関税を撤廃し自由に物質の流通を促進するのが最大の目的です。

ところがどの国にも、お国の事情があり、すべての物質が自由になると、立ち行かない産業が何れの国にもあり、その産業とそこに働く人々を守らなければいけない政治的判断があります。

日本の場合は農産物です。

コメ、ムギ、砂糖などと、牛肉、豚肉、乳製品などの畜産物です。

コメは日本農業の基幹産業で、今までも保護して安い輸入米を防ぐ778%の関税をかけいましたが、それを撤廃したら、価格的にはコメ農家は太刀打ちできません。

ただ救われるのは、日本のコメの品質と味が日本の食文化とマッチし、早々安くなったからと言って外国米にとって代わるとは思いません。

麦は実質的には、ほとんど輸入の小麦粉が日本では流通していて、産業として成り立っていません。

砂糖も粗糖の大部分が輸入物で、一部の農家が作付しているだけです。

そのような事情から、日米間ではある程度の高関税は残してもよいとの合意点が見出されているとも聞きます。

そこで、最も大きな打撃をこうむるのが牛肉と豚肉生産の畜産農家です。

ただし牛肉はすでに実質70%近くの輸入牛肉が流通している現状と、さらに最大の輸出国のオーストラリアとは、現況の関税の半分約20%前後で妥結し、今後輸入量が増加することも考えられますが、現在でも国産牛肉の3分の1の価格で売られているので、少しぐらい安くなっても影響は微小でしょう。

また日本産の黒毛和牛の特殊性は、安い輸入牛肉に対抗できる特産品で、輸入攻勢に対して生き残れる産業との評価されていますのでまだゆとりがあります。

最も深刻なのは豚肉です。

もし関税が撤廃され、価格競争を強いられたら、日本の豚肉産業は崩壊しかねません。

その原因は日米間の生産原価の大幅な違いです。

豚肉には黒毛和牛のような、圧倒的差別要素がなく、日本で流通しているブランド豚肉と言っても、系統的に全世界に流通している豚品種の肉質とは似たり寄ったりで、特徴がありません。

さてこんな事情の日本の豚産業を知りながら、どうしてアメリカが強い姿勢で、豚肉の関税撤廃を要求しているかの事情と背景、それら一連の動きと、どうしても生産コスト高になる日本の養豚経営の問題にまで視点を広げてみましょう。

まず最初に現在までの豚肉の流通動向から、アメリカ輸入肉の推移を見ます。

いま日本の豚肉の流通量は、2012年調べで約166万トン、そのうち輸入豚肉が76万トン、国産が90万トンです。

この輸入肉は年によって違い、2010年までは、80万トンを超えていました。

さて76万トンの輸入肉のうち、約40万トンがアメリカの豚肉で、アメリカにとっては最も輸出量の多いお得意様が日本です。

さらにアメリカの優位性は、冷凍豚肉ではなくチルド肉のシェアが高いことです。

冷凍肉の多くは加工品のハム、ソーセージ向けに対し、チルド肉はフレッシュミートで、家庭消費の生肉としてスーパーの店頭に陳列され、日本産豚肉と競争しても、安価で規格化され見た目もよく、販売できる強みがあります。

ご存知の方もいると思いますが、今日現在輸入豚肉は、差額関税制度という分かりにくい制度が採用され、日本産の生産原価に比例した流動的な関税制度を採用し、日本の養豚産業を保護してきました。

たとえば差額関税の例を挙げますと、最も安い価格の1キロ65円の雑肉などには、80%近い482円の関税をかけ、1キロ524円の高級品には4.3%というように調整します。

そのような高関税がかけられても、スーパーに陳列されているアメリカ産輸入豚肉は、国産豚肉より安価なのです。

もしこの関税が撤廃され、無税で輸入されたら価格的に日本産は太刀打ちできません。

というのもアメリカ豚肉の生産コストは、日本のそれと比較しますと約2分の1以下で、110キロのマーケットサイズの生きた豚の生産費が、アメリカ13,880円に対し日本は31,140円と2.2倍の生産費との、アメリカの大手豚生産会社調べの報告があります。

その報告内容を分析してみましょう。

1頭110キロの生きた豚を生産する農場生産原価で、価格は日本円で換算したものです。

        日本産            アメリカ産

飼料代   19,657円(63.13%)      7,561円(54.48%)
労働費   4,436円(14.25%)        882円(6.34%)
薬品治療  1,376円(4.42%)        450円(3.24%)
水道光熱  1,346円(4.32%)        350円(2.59%)
繁殖費   1,046円(3.36%)          2,700円(19.45%)
生産管理  2,735円(8.78%)          1,015円(7.31%)
 と建物費
その他    553円(1.78%)        912円(6.57%)
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
合計      31,140円            13,880円

という分析数字になります。

日本産はアメリカ産に比べ2.2倍の生産原価です。

アメリカの輸出企業の豚肉パッカー(生産会社)の分析で、アメリカの養豚産業の優位性が強調されているかしれませんが、現在のスーパー店頭での価格を比較しますと、高い関税がついていながら、アメリカ産豚肉の優位性は否定できません。

それを裏付けるよう、日本の農水省が平成23年度(2011年)行った、養豚の原価調査の数字があります。

それを参考にしますと、1頭生体118キロ換算で、31,792円の生産費になっていますので、アメリカ生産会社の発表数字と大幅に違わず、信憑性もあります。

この報告の中で圧倒的に違うのが飼料代です。

1Kgの豚肉に使用した餌の価格が、日本では178.7円に対し、アメリカ産は68.7円と日本は2.6倍です。

豚肉のコストの中で最も重い比重の飼料代が、2.6倍も違ったら話になりません。


さてその辺の事情から調べてみましょう。

第1番 穀物の自給率の相違

アメリカはご存知のよう農業国で穀物輸出国です。

当然飼料穀物は国内産で、隣の畑で収穫された穀物が輸送費もたいしてかからず、畜産農家は安い原価で手に入る優位性があります。

それに比較して、日本の飼料穀物はほとんどアメリカ、南米などからの輸入品で、輸送費、船積料、荷揚料などの経費がかかりますので高くなるのは当たり前です。

しかしその経費は養豚農場で使用する飼料価格の中ではそれほどではありません。

輸入されてからの国内での経費が大幅にかかるので高くなるのです。

輸入原料はそのまま豚に食べさせるのではなく、豚の発育や繁殖に適応した配合飼料にしなくてはならず、その加工と流通コストも侮れず、価格に添加されるのです。

また飼料配合工場を稼働する電気料、熱を加える飼料の燃料費など、アメリカは日本の2分の1以下でしょうし、また豚のいる農場に運ぶ輸送費などは、おそらく50倍ぐらいの違いがあるでしょう。

というのもアメリカは豚農場に隣接して配合飼料工場があるのに、日本は飼料プラントがある港湾からかなり離れた、畜産公害で騒がれない、山の中に養豚場がある違いが輸送費の大幅な相違となります。

事実、飼料コンビナートから専用トラックで運ぶ輸送費は、ガソリン代と高速料金、ドライバーの労務費などを計算しますと、数量や距離により飼料原価の10%にもなる場合があります。

そもそも畜産の発展過程を歴史的に見ますと、穀物農家や草地を多く持った農家が、余剰の穀物、耕作しない農地の雑草を有効利用するため、動物を飼って育て卵を取り、乳を搾り、肉を生産していた、すごく牧歌的な家内産業が基本で、それで家畜といいました。

当然飼料代は販売できない残り穀物や残飯、放牧された牛や豚や鶏は勝手に草を食べ育ち、ほとんど原価計算の必要ない生産物ができた原点が畜産でした。

今日はそれが発展し集約され巨大産業となり、飼料原料生産と養豚業は別組織と姿を変え、それぞれの専門分野で発展を遂げ合理化されてきましたが、あくまで飼料は地産地消の観念が強く、アメリカはトウモロコシ、ヨーロッパは麦が主体の飼料のよう、飼料を自給することの優位性は見過ごされません。

その点で、飼料穀物を自給できない日本の畜産経営は、最初から大きなハンディキャップを持っています。

本質的には、穀物(植物)カロリーを有効に動物カロリーに転換する産業が畜産業です。

さらに説明すれば、穀物カロリーコストを、いかに効率的に安いコストで肉や卵に変換するかが、畜産経営の目的です。

そのコスト競争のスタートで、同じ栄養価の飼料価格が大きく違っては、技術的に生産性を上げたとしても勝負になりません。

この基本的な環境と構造の違いが、日米の圧倒的生産原価の違いになります。


第2番 飼料は原料なのか商品なのかです

アメリカの例でお話ししたように、飼料は豚肉を生産するための原料で、その原料と加工費は利益を生まず、その飼料を食べた豚肉の利潤が飼料の利益ともなります。

この考え方は、世界の畜産を語るとき重要な要素で、豚肉生産あるいは鶏肉生産組織の発展と巨大化は、飼料と種畜と仔豚、養鶏では雛などは原料、豚肉、鶏肉を作る生産材との考えで、最終製品をいかに安くまた規格統一した肉を作るかに徹し、生た生産物を屠殺して肉として市場に供給できる屠場プラントを持ち、農場から食卓までの統合組織を作ったことで、生産原価を引き下げ発展に貢献してきました。

それを畜産の、バーチカルインテグレーター組織(垂直統合組織)と言います。

ところが日本のように、外国との取引や輸入の諸条件を熟知し、政府の貿易規制の条件をクリアし、手続きに遺漏のないよう万全を尽くすことで飼料穀物を輸入出来る条件は、畜産農家には到底無理で、飼料の供給はその条件を知るものの権利となりました。

また戦後の食糧難時代、食糧管理法の政府統制があり穀物は勝手に輸入はできず、また国内農家保護の目的で穀物には高関税をかけ、飼料に使う穀物は免税ですが保税工場の認可を受けなければならず、その許認可は経験と組織のあるものしか取得できない過去があり、輸入穀物は当然利権を生みました。

さらに輸入飼料穀物は適正に諸原料を配合して飼料にする技術が必要で、豚肉生産農家では無理で、輸入商社あるいは配合飼料会社経由でなければ、飼料は入手することのできないシステムがそこに生まれました。

そこで日本の配合飼料は商品として、養豚農家に売られるようになりました。

輸入者の経費と、配合工場の運営利益を上乗せするのは、適正な商行為で、決して問題ではありませんが、隣の畑の穀物を、利益なしで利用するアメリカの飼料コストとの相違は、本質的に対比するのが無意味かもしれません。


第3番 薬品費と防疫コスト

以前、私は東南アジアの養鶏のコンサルタントの仕事をしていた時、ある組織から頼まれ、日本と韓国、台湾、東南アジアの同一銘柄のワクチンの価格を調査したことがありました。

驚いたことに、日本の価格が2倍から3倍高いことでした。

同じよう抗生物質やビタミン剤など同じ傾向で、この事実を見ても日本の生産コストは、諸外国に太刀打ちできず、まして生産物の輸出などもってのほかと感じたことがありました。

なぜ高くなるかの要因はいくつもありましたが、そのころはワクチンなどは国家検定があり、その検定を受けるのに経費がかさみ、輸入ものも国産ワクチンも押しなべて高価格になる体質でした。

それに加えて、日本の流通組織のメーカーや輸入商社から代理店、販売店までの段階が末端価格を押し上げている事実も無視できません。

輸入物は、運賃、通関料、その他経費が掛かり、原産国より高くなるのは仕方ないとして、国産品も同じ高価格になるのは、日本の生産体質の問題もあります。

日本産は商品開発の原価と販売価格を考えるとき、販売範囲をどうとらえ、可能なマーケットサイズを勘案して、価格を決定します。

たとえば豚のワクチンを例にとれば、日本市場だけを対象にしているか、世界のマーケットを対象に開発しているかによって、生産数量が違いますし、施設の規模も原材料コストも違ってきます。

当然販売価格も量産により割安になり、どの国でも使用できる国際化商品になります。

それが日本市場だけを対象にすれば、少量生産となりコストも上がります、当然国際価格には太刀打ちできません。

そんな国産品でも過去は、日本産保護のために、外国産の輸入をなかなか許可しない歴史があり、日本の畜産業は世界の潮流に後れを取っていた時代がありました。

私は、たまたま養鶏の生産者として、日本のワクチンの高価格システムの実情を調査したから知っていたのですが、過剰な保護貿易の弊害が現在の畜産業の、高コストの基本体質を作ったような気がします。


第4番 繁殖費の相違

原価計算のの中で、大きな数字の相違があるのが繁殖費です。

繁殖費とは肉豚を作るための、母豚と種雄豚を飼育し子豚を産ませ、離乳後60日ぐらいまで育てる費用です。

アメリカがコストの約20%ぐらい2,700円と高いのは、おそらくこの離乳した健康的な60日令の子豚を購買した価格と思われます。

これは現在の日本とアメリカの生産機能とシステムの相違です。

しかしこの生産システムの違いが、生産原価の違いの大きな意味を持つものとも思われます。

アメリカは子豚生産組織と、肉豚生産組織が別々の組織として機能し、子豚生産組織は60日までの子豚を生産し、それを肉豚生産者に販売する、子取り専門の組織で、ある意味では繁殖専門の優れた技術集団です。

養豚業で最も熟練度を要求されるのが繁殖です。

現在はほとんどが人工授精で繁殖を行いますが、雄と雌の生理を知り、的確に妊娠させ数多くの子豚を生産させるのは、プロ中のプロで高度の技術を要求されますし、また経験が必要です。

この難しい技術は専門家に任せ、技術がなくても誰でもが飼育できる、肉豚生産だけを行っていれば、肉豚生産原価は高くならず、また種雄豚、母豚の飼料費は必要なく、60日までの子豚の飼料費もかからないので、消費飼料量が違いアメリカと日本の飼料費の開きもなくなります。

現在の日本の養豚業の大手はほとんどが「一貫経営」と呼ばれ、繁殖豚から肉豚まで同じ組織が包括するシステムで、種雄から母豚を飼育し、受精、妊娠から子豚生産、さらにその豚を肉豚として出荷するまで、すべてを一つの組織が行うことです。

当然飼料量も、肉豚だけでなく繁殖豚から子豚分まで計算しますから、総量として多くなります。

しかし、自分の農場内で子豚を生産するので、その生産費はトータルでは肉豚の生産費に加味されますので、繁殖費としてはアメリカの原価より安くなり、4.3%の1000円前後です。

分業がよいか、一貫経営が得かの議論はのちに譲りますが、日本の10倍の規模の頭数を生産しているアメリカの生産規模になりますと、子豚生産だけを専門化してしまった方が、合理的かもしれません。

EUのなかのデンマークは養豚王国で、子豚生産では世界1の能力がありますが、すべて国内で肉豚にするのではなく、お隣のドイツに子豚として輸出販売することで経営が成り立っています。

ちなみに日本の鶏卵生産システムは現在、卵を生み出す前まで飼育する専門の大雛育成業者と、その大雛を買い、採卵鶏だけを飼育する業者の分業があります。

それと同じ組織体がアメリカの養豚業にもみられるということです。

    
第5番 労務費は1人あたりの飼育頭数

子豚から肉豚まで生産している日本の方が高くなるのは当然としても、1頭の豚生産に掛かる労働の合理化は、アメリカの方が進んでいると思えます。

日本では出産した子豚は分娩舎の中で哺乳のため母豚と同居し、離乳された3週間から60日ぐらいまで育成舎、その後肥育前期舎、100キロを超える肉豚まで育てる後期肥育舎と4回の段階で居住場所が変わります。

その移動には手間がかかり労働費がかかります。

アメリカは60日目の豚が搬入され前期肥育舎で過ごし、おそらくその後1回の移動で出荷されますので、労働費は少なくなります。

それと生産農場の大規模化で多頭飼育されますので、飼料給与、飲水施設、換気空調システム等の機械化も省力の要因になります。


第6番 建造費と償却費の相違

日本の畜舎でも建築基準法の対象になります。

地震をはじめ災害に対する対応が求められ、それを順守することで建築費は高くなり、また償却費も高くなるのは止むをえません。

建築材料も細かくは調査していませんが、資材一つ一つはアメリカの方が安いと思います。

ちなみに、東南アジアで養鶏場建設に関与した過去、空調が完備しオートマティックな給餌、給水システムの密閉型鶏舎の建設コストは、そのころの日本でのコストの3分の1であったことを思い出します。

さらに畜舎を建設する用地を取得する価格も馬鹿に出来ず、山の中の安い用地は道路、電気、水道など諸施設にも莫大な費用が掛かり、それが生産コスト上昇の負担にもなります。


第7番 水道光熱費

この相違はいまさら述べるまでもなく、世界で最も高い電気料金、高い燃料費、また水道料金は、これだけ比べても競争になりません。


このように豚肉原価の相違を分析すればするほど、日本の畜産業の価格的競争力は話にならず、この高コスト体質を改善するには、ドラスティックな発想と、畜産に使用する薬品、ワクチンの許認可、飼料原料になる資材の積極的開発、屠場制度改善など、いろいろありますが、豚肉だけでなくミルク生産、鶏卵生産、鶏肉生産すべてが、価格的にも諸外国とそれほど違わないシステム構築が必要かもしれません。

いままでの高関税で、日本の畜産を守ってきた制度が無くなろうとする時、養豚農家はどうしたらいいか、お互いに知恵を出し合う時代です。

いままでの日本の農業システムが大幅に変わろうとします、まさに農業制度維新です。

政策や制度に頼らず、産業も本質的に自由化され、企業として自由化の波を利用し、競争に勝たなければいけません。

それには日本の養豚には強い味方があります。日本産の豚肉は安全で、安心して食べることができると信じ切っている、日本の消費者です。

この1億2千万の日本人消費者を味方につける、美味しい豚肉を生産することです、それが価格もアメリカに負けかければ、さらに消費者の期待の添うことでしょう。

次回はそんな思いを込めて、いくつかの解決策を自己流で考えたいと思います。

最後に、同じようアメリカからの輸入飼料穀物を使用して、豚肉生産をしている韓国、台湾の生産コストの比較を、同じアメリカの大手豚生産会社の調査から取り上げお知らせします。

生体豚1ポンド当たりのコスト、USドル計算。

日本 1.26ドル   韓国 0.94ドル   台湾 0.94ドル
〜薬剤耐性菌対策は、抗生物質から生菌剤に〜
(薬を生産現場から追放する消費者パワー)


2015年3月4日、アメリカのハンバーガー大手の「マクドナルド」社が、
抗生物質、抗菌剤使用の鶏肉は一切使用しないと発表し、ファストフード
業界に大きな波紋を投げかけました。

その内容は、「今後2年間かけて、同社のアメリカ国内の14000店で
販売するチキン商品の原料鶏肉は、飼養期間中全ての薬品を使用しない飼育を行ったものを使用する。」

というもので、単に残留薬品のない鶏肉とは一線を画す無薬チキンの採用で、
新しい価値観を標榜した確固たる内容でした。

ブロイラー肉の薬品規制は、出荷1週間前の最終段階だけ薬品を投与しなければ、
それ以前に薬品を多投しても、薬品の残留が無いとの想定で、販売可能の規定があります。

マクドナルドは初期から最終出荷までの全期間、
一切薬を使わない完ぺきな無薬チキンを採用、
同社に納入している生産組織のその旨を依頼したようです。

全ての薬品の中には、抗コクシジュウム薬の「イオノフォア抗生剤」の
サリノマイシン、モネンシンなども含まれています。

「鶏を見たらコクシジュウムがいると思え」と言われるくらい、この原虫病は
厄介な病気で、世界中全ての鶏がこの薬品の厄介になっています。

それまで使用しないとはものすごい決断です。

この決断した背景は、同じファストフードのメキシコフード店や鶏肉使用の新興店が、
高価格だが無薬チキン使用で、販売が急激に伸びている現状に危機感を感じての採用と思われます。

当然「ケンタッキーフライドチキン」など、鶏肉専門店へもこの流れは
波及すると思われますし、世界中に網羅されている、
マクドナルドチェーン組織への影響も考えられます。

さてこのように、鶏肉はじめ豚肉、牛肉、鶏卵、牛乳などすべての畜産生産物
への、抗生抗菌剤の使用と薬品残留が大きく問題視され始めました。

これは今始まったことではなく、1970年代から家畜への抗生剤多投は
薬剤耐性菌(スーパー バグSuper bug)を作り、人間の病気治療に深刻な影響を
及ぼすと問題になっていました。

アメリカのあるコンシューマーレポート(消費市場報告)の発表によりますと、
アメリカのスーパーマーケットで売られている鶏肉の50%から、
耐性菌スーパーバグが検出されているようです。

農商務省は畜産動物への抗生物質不使用を勧めますが、生産市場がそれを
了解し実行する状態にいかないようです。

何故了解しないのか、それは病気の多発と経済性追求から来ています。

産業の大型化と機械化が、抗生物質を使用せざるを得ない飼育環境となり、
病気発生に悩まされています。

さらにある種の抗生物質は、成長促進の経済効果目的に連続投与され、
確かにその効果は認められているようですが、耐性菌造りの可能性は最も高くなります。

実際、アメリカで使用されている抗生物質の総数は、2012年の発表を
見ますと畜産用で13540トン、そのうちの60%は成長促進剤としての使用です。

ちなみに人間用への使用量は3300トンですから、畜産用が断然多く、
これが問題になる背景が想像できます。

日本の2012年抗生物質使用量は、畜産、水産両方合わせて1084トンで、
成長促進目的より治療予防用の比率が高いです。

人間用は517トンですので、畜産用と人間用の比率は2対1で、アメリカの
4対1の比率から見ると、薬品使用量は少ないですが、耐性菌問題はアメリカ同様深刻です。

さらに深刻なのは中国ではないか思います。

2011年の資料ですが、中国の抗生物質の生産量は合計で約21万トン、
畜産への使用は10万トンでアメリカの7倍、この数字も脅威ですが、
人間への使用が同じ10万トンを超える数字になるのはさらに脅威です。

人口一人当たり換算でアメリカの約8倍、日本の20倍にもなる容量が、
直接人間に使用されている現実は、抗生物質依存の医療現場ということになり、
畜肉の残留薬品の危険より、耐性菌が直接的にできやすい現状に驚きます。

このような残留薬と耐性菌の問題が、消費市場や医療機関などから、
目に見えない圧力となって、食肉鶏卵生産現場にも押し寄せ、
今回のタイのバンコクで開催された、VIVアジアの展示会の出展傾向にもそれが表れ、
薬剤に代わって有機的素材のオンパレードでした。

代表的なのは「生菌剤(probiotic)」「酵素(enzyme)」
「有機酸(organic acid)」「オリゴ糖、酵母細胞壁(prebiotic)」
「大豆高タンパク飼料、ペプチドタンパク(high protein、peptide protein)」
「機能性ハーブ(medicinal herb)」など、畜産動物の病気対策と、
健康管理を増進する特徴ある素材で、出展各社とも研究成果の
エビデンスを裏付として説明をしていました。

私たちも、生菌と酵素を混合したプロバイオティック「サルトーゼ」を
展示、参会者の関心を集めました。

さらに興味ある傾向は、発展途上国と言われる東南アジア、西アジア、
中近東の諸国の畜産関連業者並びに生産者に、特別の関心を持たれたことです。

その一つは薬品耐性菌への配慮もありますが、さらに深刻な事実は、
長期間使用を続けた結果、抗生物質が無効化し、
病気の発生が抑えられない現実があります。

ことに養鶏のコクシジュウム、サルモネラ、大腸菌症、クロストリジューム、
ブドウ菌症など腸管疾病の治療と、水産養殖のビブリオ菌などへの効能が無くなっているようです。

耐性菌は人間への影響が多く取りざたされてきましたが、畜産動物の
細菌感染の治療のため、長期間使用したため、有害バクテリアはすっかり
薬剤耐性ができて、鶏や家畜の病気治療が困難になってしまったようです。

実際に、西アジアの国々や中近東の或る国では、すでに「サルトーゼ」使用により、
予防治療不可能であった腸内疾患を、見事に解決しはじめていました。

中近東のある国立大学の畜産研究室では、自費でサルトーゼの薬品的効果を
試験するため、ブロイラー雛を使用し、抗コクシジュウム剤と、サルモネラ、
クロストリジューム対策の抗生物質と、サルトーゼを比較しました。

この試験は、発育途中の21日目の雛に、コクシジュウム原虫、サルモネラ菌、
クロストリジューム菌を強制感染させ、治療効果と死亡率、肥育率、飼料
要求率の結果を測定した画期的な試験で、各病原菌に対する治療予防と、
経済効果の両方を検知した素晴らしいテストでした。

さらに面白いのは、腸内細菌の変化データです。

ご存知のよう、人間も鶏も腸内の有用菌(善玉菌)が多く、
有害菌(悪玉)が少ないことが、免疫力も強く健康なことには違いありません。

この腸内細菌が、サルトーゼ投与区の鶏糞1g中善玉菌の乳酸菌が20億個に
対し、薬品投与区は同じ鶏糞1g中たったの200万個と少なく、
その逆に悪玉菌は10倍以上と多いことが判明しました。

即ち抗生物質は病原菌を殺す目的で使いながら、実際は善玉菌を殺し腸内
細菌叢のバランスを崩し、免疫力の弱い鶏を作り、
それがため薬を投与し続けなければならない悪循環を作ります。

こんなことが、大学の研究室試験で証明されました。

その結果を踏まえても、サルトーゼは各種病気に対する予防治療効果が高く、
さらに少ない餌で最も多くの肉を産出することが証明されました。

たまたまこの試験を実行した大学の、養鶏畜産飼育研究所の獣医学博士の
教授が、この展示会に出席され、私どもの展示コーナーで「サルトーゼの
素晴らしさは薬品を上回る」と、ご自身の研究試験の結果を参考に、
来場者に力説していただいたことは非常に効果的でした。

もっとも全てのプロバイオティックがこのような機能があるとは思いません。

サルトーゼ独特の生菌の能力と特殊酵素の機能性が、
有害菌を抑制し有益菌を増殖したのです。

さてこのような機能を持ったプロバイオティックはじめ、薬に代替する
有機資材が出現したら、耐性菌の問題解決も前進するでしょうし、
さらに安心して食べられる食肉、鶏卵になります。

そのうえ、鶏や豚や牛が飼育されている環境の改善が進めば、
動物の健康も増進され、薬使用量も減少するでしょうし、
家畜に対する本当のアニマルウエルフェア(動物福祉)が実現できるでしょう。

ただコストがその分上がり、家庭の支出が増えることを若干我慢していただくことを、
消費者にお願いしこの項を終わります。



〜アジア最大の畜産、養鶏、水産養殖の展示会〜
(世界的に安全安心な卵、肉、養殖魚の生産を希望)


畜産、養鶏、水産養殖のアジア最大の展示会「VIV ASIA」が、2013年3月13日から15日までの3日間、タイ国の首都バンコクの国際展示場「BITEC」で行われました。

私どもの会社「ピィアイシィ・バイオ」も展示出展者として一昨年に続き参加し、飼料添加物ホールに2コマのスペース用意し、大変忙しい3日間を過ごしました。

この展示会は1年おきに開催され、タイで開催されるようになってから今回で11回目、22年の歳月が経過していることになります。

この展示会の主催者は、オランダのVNUと言う組織で、1960年代豚の生産会社と政府が、畜産動物のより高い生産性向上のため、さまざまな関係業者を集めてスタートしたもので、さらに1978年からは家禽産業(養鶏)も参加、合同拡大し集約的な動物と農業のための見本市として発展し、VIVと名付けられました。

VIVとはオランダ語で「Vakbeurs Intensieve Veehouderij」の頭文字をとっておりますが、よく分からないので英語に翻訳しますと、Livestock Intensive Expositionとなり、日本語に直訳しますと高度な集約的な畜産の展示会となります。

1970年代から世界的に鶏卵と畜肉の需要が拡大し、さらに産業として大型化と機械化が進み始め、牧歌的な家畜産業が近代的な食肉産業に大きく変化し始めました。

当然、育種、栄養、薬品、ワクチン、飼養管理、畜舎構造、自動化生産設備、鶏卵食肉の処理機械など、あらゆる構造と機能が革新的に進歩し、それを取り巻く情報も豊富となり、そんな情報を一堂に集めて一挙に展覧する事業が成り立つようにもなりました。

そんな背景と狙いがあって、この展示産業が発展拡大し、今現在ヨーロッパをはじめロシア、中国、インド、トルコ、南アメリカなどさまざまな地域と国々でこのVIVは開催され、鶏卵食肉の生産消費拡大の波に乗り盛況を極めているようです。

このVIV ASIAも最初は1986年と1989年に東京で開催され、当時に晴海にあった国際見本市会場に私も見学に行きましたが、アジアの東端の日本では、東南アジアや西アジアから人が集まらず、その後地理的にアジアの中心に位置するタイのバンコクに移転、現在の成功を見るようになりました。

当初はバンコク市内にある小さな展示会場「Queen Sirikit(クイーン シリキット)」で行われ、その第1回目の展示会に、その頃私どもが販売していた飼料添加剤のタイの代理店からの強い要請で、ピィアイシィ・バイオへの改称前の養鶏産業研究所として出展した記憶があります、1993年でした。

それから22年、このアジアの展示会は拡大に拡大を重ね、多くの出展者とそれを見学に来る見学者、さまざまな研究セミナーに集まる聴講者など、主催者発表では今回2013年の初日の13日だけで3万人が来場したと言うことです。

「バンコク国際貿易展示センター」の広い6部屋の会場に散会している展示者の数は770社で48ヶ国から関係業者がもっとも得意とする、施設、機械、物品など、畜産、養鶏、水産養殖の技術の先端が一堂に展示されている模様は、この業界に生きる人にはさまざまな参考を与え、将来展望の基礎にもなったでしょう。

私はラッキーなことに、鶏卵食肉産業に60年近く関係し、産業が拡大してきた歴史を半世紀以上身をもって体験していますし、また客観的に観察もしてきましたので、ここまで歩いてきた過程もそれなりに熟知しています。

その間、育種改良の進歩は驚異的で、ことに鶏卵、鶏肉の生産性の向上は目を見張るばかりです。

1羽の採卵鶏が1年間に生産する卵の数は、60年前は230個でしたが現在は330個と増えていますし、鶏肉(ブロイラー)においては、2.5キロの体重にするのに80日要したものが40日で達成されるよう改良され、さらに飼料の摂取量も2分の1に節約されました。

それがため「卵は物価の優等生」と褒められ、鶏肉もいつでも安価で手に入れることが出来る商品となったのです。

豚肉産業の改善も、人工授精技術の進歩や希釈液の改良で、子豚生産が飛躍的に増大し、肉豚の増体重、飼料効率向上とあいまって、安価で買い求めやすい価格で消費マーケットに提供でき、おそらく長い間豚肉は値上がりしない状態です。

これらは、育種改良の進歩と生産の大型化と合理化が生産原価を引き下げ、消費者はそのため経済的に有利な鶏卵と食肉を堪能できました。

その反面、経営的に成り立たず、この産業から撤退せざるを得ない農場が続出、淘汰と集約化で現在が成り立っています。

しかし拡大と合理化だけでは解決できない問題が多く噴出し始め、ここに来てこの産業はさまざまな解決しなければならない課題が発生、さらに大きく変化を求められています。

その第一は生産物の安心と安全を標榜すること、第二に食料としての飼料の要求量を減らすこと、第三に家畜が出す臭気と害虫をどうして減少するかの公害対策です。

今まで生産物を如何に安く作るか、安く作ることで利益を確保できるか、それには大型化機械化が必要だと、人間本位の生産面だけで経済性と生産性を求めたため、動物の生理と環境が忘れられ、その反動で、流行性の伝染病はじめあらゆる病気の発生を招いたのもこの拡大化でした。

鳥インフルエンザや豚や牛の口蹄疫に代表される法定伝染病はじめ、サルモネラ、病原性大腸菌、カンピロバくター、リステリアなど人間への感染が恐れられる病気の発生、そのほかさまざまな家畜独特な病気の発生で、この産業は苦労の連続でした。

それがため、病気の治療予防のために膨大な数量の薬品が使われていることも事実です。

この薬品の代表は抗生物質と抗菌剤です。

ご存知のようこれらの薬剤は、人畜共同で使用されるもので、もしこれらの薬剤が鶏卵、畜肉に残留していますと、それを食べる人間に薬剤耐性が現れ、同じ系統の薬品を使用する治療効果が薄れます。

これは重大問題で、人間の食料として生産した鶏卵、畜肉を食べたために、病気治療が不可能になっては困りものです。

これらは危険な肉と卵の生産となり、安くなった背景に薬漬けの管理があったとしたら、消費者は当然のこと敬遠します。

今回の展示会場でも、薬を使わず安全な製剤で健康な動物飼育を目指そう、のテーマの展示が目立ちました。

われわれは日本で20年前からそれを実行し、安全性を目指す農場から理解を得られ、無薬の鶏卵、畜肉の生産の資材として、納豆菌、乳酸菌を強度に活性を高め、病気を予防治療まで可能な生菌剤「サルトーゼ」を作り、日本一の市場性を持つようになりました。

この商材はVIV ASIAの来訪者の注目するところとなりました。

それは何処の国も同じく国民の健康を考えたとき、薬漬けの畜産が如何に問題かを熟知しているからです。

韓国、台湾はじめ東南アジア、西アジアの国々から、また中東各国、さらにヨーロッパからはさらに強い関心をいただきました。

次に公害問題の対策です、畜糞の臭気は発酵堆肥を作るときさらに強烈で、地域住民とのトラブルが絶えません。

その解決に、私たちは日本で実績を上げている、天然のフルボ酸を勧めています。

飼料の効率的な利用は将来の穀物不足を視野に入れたら等閑視出来ない問題で、今後飼料原料を発酵や酵素触媒などで消化促進が出来る、新しい技術を開発の必要が出てきますし、食べ残しの残渣物の利用など、畜産を取り巻く将来は、なお一層の研究が必要でしょう。

これに加えて最近、動物飼育に対する環境改善です。

すなわち飼育する条件を人間本位の考えから、動物本位に変えて、狭い場所にぎゅうぎゅうに詰め込む飼育状態から、動物がゆったりのびのび暮らせるスペースを作ること、あるいは鳥かご(ケージ)飼育や、豚房のストール(狭い柵)など、動物が好まない環境で飼育することを、条例で禁止する国もかなり出始めました。

動物愛護の「アニマルウエルネス」の精神で、そのような環境で飼うことが、肉になる運命の動物でも、生命の維持に快適な条件を与えることは、誰も反対できませんが、コスト的には経費がかかることはやむを得ないでしょう。

残念ながら大型化、合理化、集約化の流れとは若干異質のものですが、有機的な鶏卵、鶏肉、豚肉などはこんな条件で飼育したものだけが、有機認定されるようになるのではないでしょうか?

VIVの展示会もそんな情報を公開し、未来志向の知恵を交換し、国境を越えた同業者同士の友好が成り立てば、大変意義のあるものでしょう。

これは畜産と水産動物の展示会ですが、あらゆる産業が新しい情報を公開する展示会は、世界的に隆盛のようです。

ことにさまざまな国から情報を求めて集まる展示会は、平和を象徴するもので、より安全で安心な畜産物が世界的に生産流通することは、人類の究極の願いです。

穀物高騰と旱魃被害

~「2012年の養鶏産業の課題」新聞発表した私の意見~
     (物価の優等生「鶏卵」はなぜ安い)


アメリカの中西部のアイオワ、オハイオ、イリノイ、インディアナなど主要穀物生産地帯が異常な熱波による旱魃に見舞われ、所に寄ればまったく収穫が出来ない地域まである、未曾有の危機となっているようです。

アメリカは世界のトウモロコシ生産量の40%を賄う、最大の生産国であると同時に輸出国です。

その世界の穀倉地帯が大打撃となれば、世界の穀物価格、とりわけトウモロコシ、大豆、小麦の価格は高騰し、果ては供給問題まで影響をいたしかねません。

ご承知のとおり、日本の畜産動物の飼料主原料であるトウモロコシの90%、大豆の大部分をアメリカから輸入している関係から、もしこのまま不作が継続すれば飼料価格は上がり、その影響で肉、たまごの価格も上昇せざるをいないでしょう。

こんな天候異変から来る危機を、私は昨年2011年からなんとなく予測し、養鶏産業の専門誌「鶏鳴新聞」の新年号特集「2012年の業界の課題」に、飼料穀物不足の意見として、天災と人災による食糧危機と飼料高騰に対する対応を心がけるべきとの一文を、12月末に執筆し投稿しました。

食は人間の生命維持の本質的物質であり、電力不足で工業生産に支障がきたしても、生活にすぐに影響しませんが、食べ物がなければ餓死が始まります。

その食糧問題に対する危機意識を、畜産産業を例えとして私見を述べたものです。

以下はその論説を再度ここで紹介いたします。


2012年新しい年を迎えましたが、昨年3月11日東日本を襲った未曾有の大震災の被害が回復されない現在、まして原発放射能の脅威に、被災地のみならず日本全国が不安な今日、素直におめでとうと申し上げられないのは、まことに遺憾です。

被災地の方々には重ねてのお見舞いと、尊い生命を失われた方々に深い哀悼を申し上げ、一日も早い復興を祈ります。

さて、地震と津波はたしかに天災ですが、原発の破壊と放射能汚染は人災だとの世論です。

このように今世界は地球は、天災と人災の危機がいつ起ってもおかしくない状態です。
 
それが2012年以降の食糧、飼料産業、畜産養鶏産業にまで暗い影を落とすのではないかと予測します。

天災は予期しないもので、地震、津波、噴火、大雨、洪水、寒波冷害、猛暑、日照り旱魃など、異常な自然現象と気象による災害が、世界の何処かで発生し、農作物生産に大きな被害を与えることがまず心配です。

さらにヨーロッパの金融不安、中東アラブの政治的騒乱、世界的な景気後退など、まさに天災と人災が入り混じった不確実の世紀の始まりを想起させます。

また昨年(2011年)70億人を越え、毎年8千万人以上増え続ける世界の人口を養う食糧が、安定的に供給できるか否かが深刻な問題になります。
 
(中略)

畜産業界にとっては、飼料穀物の供給不安と価格騰貴は業界の死活を握ります。

その要因が異常な気象現象による収穫減、原油高騰によるバイオエタノールへの転換、発展途上国の畜産物需要拡大による穀物消費の急増、投機マネーのの流入などによる、供給と需要のバランス失墜による相場の乱高下の結果、価格が暴騰高止まりになることを恐れます。

(中略)

現在飼料穀物の90%をアメリカに依存している日本の現状は、旱魃、冷害などの異常気象で生産に支障をきたしたとき、今まで通り優先的に供給する保障はありません。

1970年代初め、大豆の不作により輸出禁止令を時の大統領ニクソンが発表し、大きな政治問題化したことを思い出します。

近くはロシアの小麦不作による輸出禁止など、主要穀物は自国民のために生産しているのであって他国民を養うためのものではない、こんな判断で輸出禁止策が決してないとは言い切れません。

それだけ穀物は食糧は生命本質を脅かす鍵であり、また外交的戦略物資としてパワーを持つ物質です。

いま、アメリカと日本は軍事面で安全保障条約が締結されています。

同じよう穀物でも安全保障供給条約結ぶことが大切かも分かりません。

世界の貿易は自由化関税なしのFTAとかTPP締結に動いていますが、不作による輸出禁止の処置のほうが、TPPによる農作物輸入の脅威より、日本の畜産業界にとっては大打撃です。

(中略)

こんな不安を解決するには、飼料穀物の供給を多角化することです。

その方策ととして供給国を増やしたり、開発輸入を進めたり、本質的には国産の自給率を高めることでしょう。

さらに、使用面での飼料の効率化と飼養技術の向上で、飼料節約化への努力でしょう。

飼料の価格上昇は即生産コストの上昇です。問題はこのコスト上昇を誰が負担するかです。

ましてデフレ経済の中で、失業が増え給与所得は上がらず消費は冷え切っていル時、さらに消費税引き上げが2-3年後に行われたら、鶏卵、生肉全ての需要は落ち込み、上がったコストを消費市場はなかなか受け入れが難いでしょう。

そうなると、そのコスト上昇は生産者の辛抱と欠損で補うことになりかねません。

(中略)

(注)(飼料効率化と生産コスト引き下げの反面、卵、生肉に対する安全対策がおろそかになることへの心配として、次の点も発表文の中で指摘しました)


鶏卵や生肉のサルモネラ、病原性大腸菌、カンピロバクターなどの汚染が、人間の中毒として問題視されないよう充分注意しなければならない。

病原菌のなかには強烈な毒素を出す株も見つかり、ことに生食文化が定着している日本の鶏卵は今まで以上にサルモネラ、カンピロバクターなどの汚染に注意が必要で、その安全性を生産者は担保しなければならない。

と言って抗生物質等の薬剤による対策は、生産物への薬品残留が問題ですし、さらに薬事法にも抵触するので断じて行ってはならない。

いま世界の潮流は、化学薬品から有機的代替物質に変わってきて、我々が開発した生菌飼料と有機素材が日本のみならず、各国から問い合わせが増えている傾向は、飼料の効率利用と生産性向上だけでなく、残留薬品のない病原性汚染の少ない生産物志向を目指しているからでしょう。

さらに、病気予防の観点からワクチンや抗生物質だけに頼らない、動物そのものに高い免疫を付加し、基本的抗病性を持たせる事が、飼料高騰対策の一環になるともいえます。

2012年は飼料値上げ、消費停滞で生産物価格が低迷、厳しい年になるかもしれないが、そんな時こそ将来に対する産業として残りうる態勢を、官民挙げて作るスタートの年にしたいです。

 (以上でおわりです)


このような予測が不幸にも的中したことは、喜んでよいのか悲しんでよいか戸惑うところですが、一つ確実にいえることは、世界の食糧の生産量は急激には伸びませんが、消費のほうは毎年限りなく増加していることです。

今後、供給が少なく、需要が多くなれば穀物の価格は当然上がり、穀物を主原料にする畜産生産物の価格は、当然上昇します。

畜産物だけでなく、小麦粉が主原料のうどん、パンなど主食系統食品、大豆原料の味噌、醤油から納豆、豆腐さらに大豆油まで値上がりは必死でしょう。

ただ皮肉なことに現在まで、日本の輸入農産物原料の商品は、大幅な値上がりをしていません、まして鶏卵、鶏肉、豚肉、牛肉など値上がりがしていない代表的商品です。

この不思議な現象の背景は極端な円高です。

トウモロコシの価格にしても、20年前の1992年1トン100ドルのシカゴ相場が、2012年は320ドルと3.2倍値上がりですが、日本の価格は1992年13000円、2012年25600円と1.9倍です。

まさに日本の飼料価格は円高のおかげで、アメリカほど値上げをしていません。

ちなみに1992年は1ドル130円、2012年は同じく1ドル79円の為替相場であった関係が、日本のメリットにもなっています。

さらに畜産物の安さの秘密の一つに、生産性の向上と、円高による鶏肉、豚肉そのもののの輸入増加が挙げられます。

生産性向上の努力は、省力化、機械化による労働集約化で、一人当たりの生産性があがったこと、さらに飼育環境の温度、湿度、光線などの自動コントロール化により、動物の性能を充分発揮させる快適な畜舎建物など、科学的な技術向上によることも寄与しています。

それにもまして最も影響した要因は、養鶏の場合遺伝的な育種改良による、生産性向上です。

ちなみに古い話で恐縮ですが、私が養鶏を始めた1960年代、1年間の平均産卵率は70%前後で260個前後でしたが、いまの採卵鶏は90%以上の生産で、年間330個以上の産卵をします。

鶏の体型も小さく丈夫で、大きな卵を継続して産卵するよう改良され、当然飼料の量も1割以上少ない状態での成績です。

鶏肉の産業の改良はもっと顕著で、2キロの鶏を育てるのに70日近かった日数が、今は35日で2キロになり、45日飼育すれば3キロにもなります。

飼料の要求率も体重2キロの生鳥ですと3.0から1.5に短縮しました。

すなわち1キロの肉を作るのに3キロの餌を必要としたものが、1.5キロの餌で1キロの肉が生産できるまで改良が進んだと言うことです。

このような目覚しい改良があって「卵は物価の優等生」と褒め称えられてもいます。

その裏には多くの養鶏家の廃業と倒産があって、生産が集約され、大農場化されたことも安い卵生産つながったのです。

もう一つ輸入鶏肉とか豚肉が大量に出回っていることです。

これも円高による安い輸入肉の攻勢があり、価格を冷やす要因にもなっていました。

しかし今回の穀物高騰を受け、輸出国も生産コストを度外視して、ダンピング価格で日本市場に輸出は不可能でしょうから、輸出豚肉、鶏肉の価格も当然飼料価格上昇分だけ値上がりするでしょう。

そうなれば、生産価格を下回っていた市場価格も徐々に値上がりします。

「銭湯の価格と盛りそばの価格と鶏卵の価格は一緒」と言われた終戦直後の物価から現在を比較しますと、卵の1個15円前後はいかにも安いですが、そんな価格で供給できる産業のからくりを理解してもらえたと思います。

さて、今後の世界の食糧事情がもっと厳しくなり、もし輸入穀物がなくなり国産の飼料だけで生産した場合、おそらく1個50円以上の卵の価格となるでしょう。

それ以上、現在の日本で飼養されている、鶏、豚、牛の頭羽数は、激減せざるを得ません。

これらはひとえに、食糧の自給率の問題に帰す話です。


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