韓国AIの大打撃と韓国人

〜再建可能か3260万羽の被害〜
(過去の発生記録が生かされない杜撰な対応)
〜鶏卵1個35円に暴騰〜

韓国の養鶏産業が鳥インフルエンザ(AI Avian Influenza)で壊滅的打撃を受けています。

2017年1月23日現在で、鶏、アヒル、ウズラなど333農場で発生し合計で3260万羽の淘汰と死亡が確認されています。

この数字は韓国農水省の発表によると、最も被害の大きいのは卵生産の採卵鶏で合計2305万羽、全国の飼養羽数の33%に該当します。

約3分の1の採卵鶏がAI感染で生産現場から消えたことになり、さらに発生農場の周囲の卵の移動も禁止されますので、鶏卵市場への出回りはさらに減少します。

その数量は政府発表で、最大で1日当たり3000万個から4500万個になるようです。

4500万個は韓国の人口と同じくらい、国民の一人も卵が食べられないことになります。

鶏卵の市場相場は、出荷される卵の数量で決まりますので、この不足で相場は暴騰し、消費マーケットでは1個320ウォン(35円)と昨年同時期と比べ73%の急騰です。

政府も1月末からの旧正月(春節)を控え、国民生活に影響を考え急遽無税輸入を決定し、この難局に対応するようです。

このように今回のAI発生の余波は、市民生活にも影響しましたが、それ以上に一番大きい痛手を受けたのは養鶏産業で、被害にあった農場は将来立ち直れるかどうかが問われてもいます。

さらに加えれば、韓国の経済全体にも影響し、農産物、畜産物の国内生産の是非までも問われることになるのではないでしょうか。

過去45年以上韓国の農畜産生産市場と交流した私の経験から、独断と偏見で推察しますと、この打撃は養鶏農家の再生意欲をそぎ、鶏卵鶏肉の国内生産に支障をきたし、やがて輸入品にとって代わる前兆にも成り得ます。

そうなりますと産業は壊滅しますが、国民の生活には支障なく、安全な肉や卵を自由に選択して輸入すればよく、価格も安いかもしれません。

現在畜産生産物の輸入攻勢にさらされているのは、日本の畜産生産市場も同じです。

もし韓国同様のAI大発生を想定した場合、韓国と同じ様に産業は再生できないかと言いますと、少し違います。

少し違うことは日本と韓国との農場規模と経営者の信念と食品生産に対する観点の違いです。

それはさらに言えば日本人と韓国人の基本的な性格の相違かもしれません。

仕事と生産物に対する愛着心と誇り、同じ失敗を繰り返さないための、教育知識と実行手段の違いが、産業の優劣の差となり、打撃に耐えて再生するエネルギーの差となります。

それは、地震や津波で破壊された瞬間から、立ち上がりのため努力し、それに協力し合う周囲の助け合いの輪(和)の違いかもしれません。

これが日本の力でしょう
〜水鳥の渡り鳥が発生元〜

さて話をAIに戻しましょう。

採卵鶏以外の大きな被害は、アヒルが245万羽です。

全飼育アヒル数877万羽の28%に当たりますからこれも大被害です。

韓国でのアヒルの消費量は意外と多いです。

鶏肉と同じマーケットで消費され、同じような料理法で好かれます。

ご案内のよう、アヒルは本来水鳥です、また飼育法も大きな柵の中で放し飼いされてます。

そこに池や水田や小川など水があれば、アヒルは喜びます。

ところでこのアヒル飼育が、AIの大発生の元凶になっているのです。

AIは鳥(鶏)インフルエンザと名前がついているので、採卵鶏やブロイラー鶏の病気とお思いでしょうが、本来は水禽類で病気で、それが鶏に感染し、大打撃を与えたのです。

水鳥のなかでは食用としてのアヒルが最も多く、ことに中国、台湾、韓国はじめ東南アジアでは目立ちます。

このアヒルからのAI発生がどの国でも多いです。

述べたようにアヒルの飼育環境は自然的な要素が多く、鶏ようなの鶏舎もなく、病原菌侵入に対する消毒施設や防疫体制は脆弱です。

もし北方シベリアなどから、AIウイルスを持った白鳥や野生の鴨類の水禽類が飛来し、アヒル飼育場の水場で休息し餌を食べ排便をしますと、ウイルスが拡散し飼育中のアヒルに感染、その感染を重ねるたびにウイルスは高病原性を増し、飼育中のアヒル全てに感染します。

飼育農家が発見した時はすでに多くの感染アヒルとなり、死亡が一斉に発生しています。

それが元凶になり、その地域一帯の家禽飼育農場に拡大し、採卵鶏、ブロイラー鶏、種鶏、アヒル、ウズラなどに瞬く間に感染、大きな被害となります。

韓国政府の発表でも、ウズラの殺処分が245万羽、その他採卵鶏の種鶏、ブロイラー鶏、ブロイラー用の種鶏、地鶏などです。

その中で私が注視したいのは、ブロイラーの種鶏と採卵鶏の種鶏に感染していることです。

ことに被害が大きいのは採卵鶏種鶏が43.7万羽死亡淘汰されたことです。

この数字は韓国の種鶏の51.5%に当たりますので、これからの採卵鶏の雛生産数量が減少し、AIが収まった後の産業が元の飼養羽数に戻るのに支障をきたし、AI発生まえの羽数に戻るまで3−4年かかるのではないかと心配します。

さすが韓国政府もその重大さに気付き、採卵鶏のコマーシャル雛の輸入を許可し、補助金を出し手頃な価格で農場に搬入できる対策をとるようです。

それはさておき、この種鶏場への感染は、困りものです。なぜかと言いますと

種鶏場は養鶏産業のリーダー的存在で、飼育管理から衛生管理、良質雛生産を行うことで、その雛を購入し鶏卵や鶏肉を生産する農場に、利益をもたらせなければいけない立場にあるからです。

非常に重要な仕事です。

ところがこの本質的常識に、種鶏場が産業の要という常識に、韓国の種鶏場は気が付かないようです。

この常識欠如を経験したのは、45年前にさかのぼります。
〜衛生管理、防疫管理が分からない韓国〜

45年前、アメリカの育種会社の代理店として韓国にブロイラーの種鶏農場の特約種鶏孵化場設立のため訪問したとき、韓国種鶏場の実態を知り愕然としました。

わたしは当然、産業のリーダー的存在の種鶏場の存在を期待し、またそれを実行していることを前提に種鶏場を探しましたが、完全に裏切られました。

衛生管理も病気予防意識も、飼養管理と作業の手順もでたらめ、施設は汚れ、従業員の意識と知識は貧しく、種鶏飼育管理の基本の理念に答えを求めましたが、無駄でした。

そのころの日本の種鶏農場も大規模なものではなく、中には家族農場もありましたが、雛に対して種鶏場としての責任を持って、良質な雛を生産するためには努力を惜しみませんでした。

そんな日本の農場の管理姿勢を見ているだけに、韓国人の意識の相違に疑問を持ちました。

2ー3日かけてかなり多くの候補農場を訪問しました。

自薦他薦の多くの農場は、韓国を代表する農場で、代理店になるにふさわしい農場との触れ込みが多く、期待しながら訪問しましたが、期待するものはありませんでした。

その時感じたのは、韓国の地域によっての差別意識、地縁や血縁の関係からくる意識、学閥や出身校の意識、政治や軍隊や財閥などの権勢力など、また自分を売り込むためには競争相手の欠点を大げさに報じるなど、商売とはいえ嫌な裏側を見たような気もします。

結果、政治家がオーナーの農場、財閥系の子会社、畜産大学の傍系農場、既存大手種鶏孵化場、などなどの中から、名もない地方の若い青年の農場に決めました。

その理由は、産業の発展のために無菌の安全な生産性を発揮する雛の生産を約束したからです。

その約束の中には、私たち日本人の養鶏に対する考え方や、技術の指導を受け付け、それを実行してもらうことが第一条件でした。

何故それを条件にしたかと言えば、大手の種鶏場の各候補は、今までの経験と実績を誇張しましたが、生産現場を拝見し、従業員の作業に対する態度や衛生理念の欠陥が目立ち、さらに飼育されている鶏が管理が悪く、いろいろな病気に感染し、生産性が低く、中には種鶏に病気が蔓延し、雛を通して、養鶏場に病気を感染させる恐ろしい病気も散見したからです。

この点を問いただしますと「韓国はこれでも通用するから」とか「病気を無くすことは不可能」とか「そんな難しいことを条件にされるのなら」「この生産性で利益が出ているのだから」などの答えが返ってきて、私の主張した韓国全体の生産性向上のために病気を無くそうとの提案が無視されました。

結果私の主張を素直に受け入れ、真面目に取り組もうとした青年に韓国を託しました。

これは私の韓国養鶏産業への、技術指導の付き合いの最初でしたが、45年前ですが種鶏場、原種農場の責任と誇りを持ってもらう考えを教えたときのことを思い出します。
〜韓国報道機関もあきれる日韓の病気対応の違い〜

さて今回の大発生の陰に、私が昔杞憂した韓国人の性格「夜郎自大」(自分の力量を知らずに誇る)農場が、AIの恐ろしさを甘く見て、対策を怠ったのではないかと心配します。

またAIの発生の兆候が見たので、急ぎ生産物を出荷する違反、数羽AI症状で死亡したのに、家畜保健所への報告を怠り、さらに農場主が他の農場を訪問したり、また発生農場の鶏糞搬出など、公には発表されてない実際が、あったのではないかとも疑いたくなります。

今回のウイルスは過去に発生が見られなかったH5N6で、この新株は渡り鳥により1か月後の2016年11月末に日本の新潟で採卵鶏に、青森にアヒルで感染が見つかりました。

その意味では日韓は同じウイルスの被害国でした。

それゆえAI発生に対する日韓の対応の違いが、被害規模の違いとなったとの見方が識者の間で語られるようになりました。

AI被害の歴史は長く、今回初めて発生したのではなく、日韓ともここ十数年この病気と闘ってきています。

その経験から日本は対策に万全の組織と行動体制が構築、韓国はそれなりだったことになります。

まして2014年には1400万羽からの被害を出した韓国、この苦い経験が少しも生かされていないのが不思議です。何故でしょう?

それを知る一つに、韓国の報道機関の発表があります。

この報道は日本と韓国のAI発生に対する対応の比較を冷静に報道しています。

「韓国」

野生の渡り鳥の水禽の死骸からAIウイルスが検出されたのが2016年10月末、行政当局は何も対策せず養鶏家にも知らさず、その1か月後に採卵養鶏場から発生、4−5週間で3000万羽以上の損害となりました。

鶏のAI発生の報告あって5日後、国の関係省庁の次官会議が開かれ、地方の行政と合同で対策本部が設立、部長は農林畜産食品大臣があたり、拡散を防御するため国民すべてに協力を呼びかけ、また発生農場での殺処分には警官、軍隊にも協力を要請。

防疫体制は最高レベルの(4)、「深刻」という状態を発表、発生農場周辺の家禽関係の車両の移動は禁止、食肉の処理販売の車両も出入り禁止、消毒の励行と、感染農場の非感染の生鳥をすべて殺処分の励行。発生農場の周囲500メート以内の家禽類は殺処分、消毒薬無償支給など対策。

政府の指示で殺した鶏の原価100%が保証、発生農家は80%、防疫規定違反した行為があった場合5−40%減額される。
「日本」

11月末新潟と青森で鶏とアヒルに発生、ただちに緊急対策本部が設けられる。

本部長は安部総理、国と地方行政対策実行部隊が編成、発生報告後24時間以内に全群殺処分、その後72時間以内に埋設処理と迅速に遂行、合計羽数は60万羽を超える。

その後2017年までに7か所、北海道、宮崎、熊本、岐阜など合計で114万羽(1月17日現在)の発生です。

全て野鳥によるウイルス伝播と診断、鶏から鶏への感染なし、発生場所が日本全地域に広がっているが、発生農場からの拡散はない。

農場経営者の早期発見と届出の迅速、それを受けた行政の対応の速さと、発生周囲の車両の消毒、防疫斑と地域在住の獣医師、場合により自衛隊の協力で、発生確認の即日に全群殺処分、埋設の作業が迅速に行われている。

この初動対応の差が日韓の家畜防疫の理念の差で、3303万羽被害の韓国と、114万羽の日本の差となっている、これは28倍の差となりました。

これが報道機関発表の要約です。

ちなみに飼育全羽数は日本は韓国の2倍以上、採卵鶏は育成鶏を合わせ1億7千万、ブロイラー2億、種鶏800万(育成鶏含め)が大方の数字ですが、AI発生羽数は少ない。

報道機関はさらに韓国の政府の対応と養鶏業者のモラルの低さを嘆き、防疫に対する基本理念が日本と比較し50年の遅れがあると指摘しています。

私が45年前に感じた、自分の農場は大丈夫、自分がやっていることは正しい、自分だけ良ければ他人は構わない、誰も注意しないからすこし不正をしても、自分の鶏を殺されたら損だから隠す、自分の儲けを優先、などなど利己的性格を、韓国報道も鋭く指摘しています。
〜韓国養鶏家も認める、先進国と後進国の差〜

さらに今年に入り、AI対策の違いを勉強するため日本を訪れた、政府機関の役人と養鶏協会の総合コメントがあります。

韓国と日本の相違は、

1、養鶏生産地の密度の違い 韓国は小農場が固まっている。
日本の大農場は民家のない山にある。
2、アヒル飼育数が少ない。
3、発生農場への対応する人員の数の違い
4、発生時の対応の速さの違い
5、韓国は中国が近いから感染の危険が多い
6、養鶏先進国日本と、後進国韓国との違い
7、役人の質の違い

などのコメントを出しています。

報道機関も視察団も、誇り高い韓国人気質を捨てて、日本人のものの考え方、真面目さ、妥協を許さない使命感、滅私奉公するボランティア精神など、いろいろ知り畏敬の念を持ったようです。

それでも韓国国内で飛び交うツイッターには、AI大発生に何もしなかった朴大統領の責任は重大、などの書き込みが多くあります。

それ以前に、何十万という群衆による連日の退陣デモで、大統領の職務権限を奪っています、その何もできない過去の人朴大統領に矛先を向けるのも、韓国人の本性なのでしょう。

一昨年修学旅行の学生の命を奪った「セウル号」の事件、初動対応が早ければあの大事故にならなかったとの日本人識者は多くいます。

事件が起きても所在不明だった大統領、いの一番に船を捨て逃げ出した船長、こんなことが韓国人の本質とは思いたくありませんし、少なくとも私の知る韓国の友人達は違います。

さて、ともあれ日韓両国に発生したH5N6型のAIが完全収束に向かうことを念じるだけです。

この原稿を書いているとき新しく宮崎県でブロイラー17万羽の発生の知らせがありました。

やれやれ。