安心安全な無薬の鳥肉生産

〜日本では無理、韓国最大鶏肉生産会社H社の覚悟〜
(壊疽性腸炎被害撲滅に新兵器)

今週、8月23日から1週間、私は韓国に滞在しています。

目的は、来年2011年7月から実行される、畜産飼料への抗生物質、抗菌剤の添加禁止の法律対応のためです。

幸いのことに私どもの扱い商品のいくつかが、抗生物質無添加による生産性低下を防ぐことの出来る、性能を持っているため、韓国の畜産業者何社かが、使用を検討しているからです。

以前にも述べましたが、韓国のこの抗生物質禁止処置は、ものすごい英断だと思います。

薬がなければ生産が出来ない畜産経営なのに、上意下達で薬をやめよとは、無鉄砲な話で畜産業者は対応に戸惑うばかりでしょう。

しかし韓国政府は、長い将来、薬を使い続けることは、薬の効能が慢性化し効果がなくなり、使用量も増加、その肉や卵を食べる人間の健康にも影響し、さらに問題の耐性菌がますます増えて、人間の病気治療が不可能になるとの判断もあります。

さらに抗生物質が大量に入った畜糞を、畑に還元し有機肥料とうたっても、農薬より薬害が多いかもしれません。

と言うことは美しい国土を創生しようとする「グリーングロス」の精神にも反します。

と言うこともあって、畜産の飼料に抗生剤を禁止することによって、慢性的化学物質依存の考え方を変えようとの、展望も見えます。

ご存知のよう、日本もアメリカも中国も東南アジアの諸国も、薬漬け畜産といってはばからない事実が、現在もつづいています。

いままでの韓国もそのひとつで、私の知る限りでは、日本以上に薬依存の畜産でした。

「できるだけ使わないよう」「有機畜産物がのぞましい」とのコメントは今までも発していましたが、なかなか徹底しませんでした。

そこでこの政令が発令されたのでしょう。

さて話を現実の動きに戻しましょう。

韓国最大のブロイラー生産の組織にH社があります。

年間で1億5千万羽ほど、月に1200万羽の鳥肉を処理し販売しています。

これは韓国全体のマーケットシェアーの35%ぐらいに当たります。

1社で35%も大きいですが、月産1200万羽と言いますとこれもかなりのものです。

ちなみに日本最大の生産農場でも月産400万ほどですから、その大きさが分かります。

この会社のトップ経営者数名が来日し、「無薬鳥肉」生産の方法について私と話し合い、その結果先方に私が訪問し、施設と飼育状態などを観察し、具体的な方策を討議しようとなりました。

この会社の経営姿勢ははっきりしていまして、政府の方針が出た以上、それに沿った商品開発に努力し、どんな困難のことがあろうと成功させようとの、心構えがあります。

その心構えを知って私どもも喜んで協力しようとなりました。

ただ聞いていくうちに、これは並大抵のことではない、かなりの覚悟と、対策方式の確立と、成功させる責任が生じることを感じました。

もうひとつ大きな問題は、慢性的な病気発生の被害がなかなか収まらず、抗生物質でも解決できなかったものが、有機的手法で成功するかの不安です。

ことにその具体的内容を聞いて、ますますその難しさを知らされている今日です。

少し専門的な話になりますが、鶏の病気は人間と同じようにたくさんあり、鳥類ですので鳥類独特のものもありますが、ワクチンなどの開発で多くの病気は対策がとられ安心ですが、鶏には病状が現れない感染症がかなりあり、それに気をつける必要がありそうです。

問題になるのは人間に感染する病気で、サルモネラとかカンピロバクター、病原性大腸菌などで、肉や卵を通じて人間に中毒を起こすものです。

サルモネラはことに鶏卵を通して人体に入り、食中毒を起こします。

これについて、幸いなことに私たちが提供しようとする、生菌剤(プロバイオティック)はこれらの病気抑制には、抗生物質より効果が高いので、今後についてはサルモネラ、大腸菌フリーの鶏肉も卵もH社は作れます。

一番問題になるのは「壊疽性腸炎」のクロストリジューム(Clostridium perfringens)菌の感染症です。

この病原菌は人間にも感染し、破傷風、ポツニュルス中毒などの困った病気の原因菌です。

この菌は偏性嫌気性菌といって、空気が嫌いな菌で、酸素に暴露されますと生きていけない菌です。

ところが生命力が強く、どんな隙間にも、鶏舎の床の割れ目でも、土壌の中でも芽胞(カプセルのようなもの)をつくり、その中で長生きをします。

そして鶏などが敷き藁や糞など啄ばむと、それと一緒に腸内に入り繁殖するとき毒素を出し、その毒素で鶏は腸炎を起こし、血便を流して死にます。

わたしも残念なことにその昔、この病気を発生させ、原種鶏農場の値段の高い原種の鶏を1万羽ほど殺し、莫大な被害を被った経験があります。

こんなややこしい病気が、慢性的にH社の各農場から発生してると聞かされ、それが営業成績に影響していると知れば、この対策を真剣に考えざるをいません。

いままではこの病気の発生時に、おそらくペニシリン系かテトラサイクリン系の抗生物質を使ったと考えられますが、この薬は現在でも飼料添加は禁止されている要指示薬で、獣医師の処方に基づいて使用が義務付けられ、また使用治療後1週間以上無投与の期間をおき、肉や卵に薬品残留がなくなってからでないと、市場に出荷できません。

理由は簡単で、これらの薬は人間の治療薬として常時使用されているので、肉、卵に残留すればそれを食べる人間に薬剤耐性ができ、いざ病気になったとき、これらの薬品が耐性が出来た人間に効かないと困るからです。

ところがこれがなかなか守れないのが現状で、治療のため使用しても、それは秘密とナイショにしておこう、が使用者の常識になっている畜産業界でした。

勿論これは犯罪で薬事法違反です。

韓国はこれらも含め、使用の規制を厳しくしようと言うのが来年からの取り組みです。

H社は法律遵守の精神からも、一切の抗生物質を使用しない硬い方針ですので、私どもの製品にその責任が重くのしかかります。

生菌剤というのは薬と違い、病原菌を殺したり繁殖を阻害するのではなく、良い菌のグループを腸内で増やし、悪い菌の存在を圧迫するような働きで、有害菌の存在をなくします。

これが通常のヨーグルトとか乳酸菌飲料あるいは納豆菌などの働きですが、当社の生菌剤は少し違って、菌が増殖するとき生産する酵素が、病原菌の細胞壁を壊し、病原菌が増殖しないようにする働きがあります。

ことに酸素が好きな生菌剤ですから、サルモネラなどの酸素があるところで繁殖する菌にはことに効果的ですが、壊疽性腸炎を起こす嫌気性の菌とは出会いが少なくなります。

しかしもし出会えば殺しますがすべてではないかもしれません。

そこに少し心配がありましたが、私にはさらにもうひとつ秘密兵器が用意できます。

それがカナダ産の「フミン酸」と「フルボ酸」の天然有機酸です。

この商品いついては、有機農産物の生産の最も効率的素材と紹介し、まして韓国では政府が補助金まで付けて、有機土壌と農産物を作る優れものとして推奨しています。

このフミン酸の特徴に空気中の酸素を取り込む性質と、空気があるなしにかかわらず働く電解質機能があります。

壊疽性腸炎のクロストリジュームは空気に弱く、酸素に当たると繁殖できません。

すなわち酸素を鶏舎にどんどん取り入れるよう、床面の敷き藁の下にフミン酸を撒きますと、それだけで嫌気性細菌は生きていけません。

さらに、電解質は菌の細胞のイオンバランスに影響し、繁殖を妨げます。

またこの嫌気性菌は有機酸に弱く、天然の有機酸であるフミン酸はそれだけで、菌抑制剤です。

また、この有機酸は生菌剤の繁殖と活性を補助し、体内はもとより、排出された生菌剤が床面の敷き藁のなかで繁殖することを助け、乾燥消臭の効果を倍贈させます。

そのうえ液体のフルボ酸を、飲み水に添加し飲ませることで、細菌性、ウイルス性の病原菌感染の防御に役立つと思います。その裏付けは農作物で実証済みです。

ご存知のよう、野菜から果実まで農作物はあらゆる病気との闘いです。

それがため対策として農薬に頼わざるを得ない現状でしたが、このフルボ酸の葉面散布で、ほとんどの病気の克服が出来、農薬使用が大幅に減少した実際がたくさんあります。

ただし農薬でも殺菌剤でもありませんので、効果効能は謳えませんが、農家が自由に殺菌剤代わりに使用する分には、誰も文句は言えません。

これにより安全な野菜を作り、かなりの利益を上げている農家のいくつかを私は訪問もしました。

今回はそれが鶏の病気です、それも完治が難しい状況で、毎回毎回飼育するたびに損害を出していた、しつこい病気です。

それと天然の電解質物質との闘いになります。

勿論それだけでなく、生菌剤があらゆる病気と闘う主役であることには変わりません。

いずれにしろ、化学物質でない天然資材を使用することが、無薬の有機鶏肉の絶対的条件ですので、この生菌剤とフミン酸、フルボ酸の天然有機物質は頼もしい助っ人です。

さらに付け加えれば、私が培った50年以上の鶏の飼育に対する経験と、知識、対応する知恵があって、成功に導くと思います。

とにかくなんとしても成功させなくてはいけません。

韓国で薬がなくても鶏が飼育でき、安心安全な鳥肉を韓国の消費者が食べることが出来たとしたら、韓国政府の、いや韓国畜産の大勝利です。

日本もアメリカもまして中国など決してまねの出来ない、韓国の大勝利です。

この大勝利はやがて世界に波及し、アメリカの牛肉も、カナダの豚肉も、タイや中国の鳥肉も、薬の残留がなく有害菌の汚染が心配しなくても良い時代が来ることを期待します。

それは畜産の飼養革命と言っても良く、農業の、食料生産の改革です。