韓国の口蹄疫と鳥インフルエンザ(その2)

〜260万の牛、豚、550万の鶏が殺された韓国〜
(防御の手段の無い日本の養鶏はどうする、鳥インフルエンザの脅威)

前回に続き、韓国の豚牛に大発生した口蹄疫と、鶏のインフルエンザの状況とその対策、さらに今後将来にわたっての防御への考え方について述べたいと思います。

さて読者の皆様は、なぜ人間の病気ではなく、またお隣の韓国で問題になっている動物の病気にそんなにまでとらわれるのかと疑問でしょうが、これは将来、私たち人類の生活と健康と生命に重大な関係がある事柄になると予測されるからです。

たかが動物の病気と簡単に考えないでください。

この動物の病原菌はやがて人類をも感染の対象とする恐れもあるし、お隣の国あるいは遠い国と思っていても、地球は一つの丸い球体、病原菌には国境も人種も無く、それからそれへと感染媒体を見つけては、自分の勢力を無限に広げる本能的遺伝子があります。その犠牲になるのが最終的には人間です。

現在では人間の体温や細胞と、動物との間に違いがあり、動物の細胞内で繁殖するウイルスや細菌は、人間には感染しませんが、それがどのような形かで変異し、人間の細胞内でも繁殖、細胞を破壊する病原体に変わるかもしれません。

私はそれを恐れます。

さらにウイルスや病原菌に対し、抗生物質や消毒薬などで撲滅を図る段階で、ウイルス、病原菌がそれらの化学物質に抵抗し、殺されない抗体と病毒性を強め、人間に反撃する性質に代わるかもしれません。

そのようにならないよう、またさせないよう、ウイルスや病原菌と対処しなければいけないでしょう。

前回メールマガジンで発表した、韓国口蹄疫の発生頭数は、1月11日現在のものでしたが、その2週間後1月27日現在の韓国政府の発表では、殺処分頭数が牛豚その他合計で270万頭、134箇所4466農家が対象で韓国中北部全ての道、市、群にまたがっています。

これだけでも畜産業にとっては大打撃ですが、そのうえさらに鳥インフルエンザの発生が逆に韓国南西部地区を中心に、2月26日現在550万羽の淘汰殺処分に及んでいます。

ブロイラー雛からレイヤー(鶏卵生産鶏)、種鶏、アヒルまで、この感染は終わるところを知りません。

この火の手は京幾道(キョンキドウ)にまでに広がり、私どもの生菌剤代理店の一社からは、17万羽の大きな採卵鶏の種鶏孵化場が感染し、全群殺処分したとの情報が1月24日にもたされました。

17万羽といいますと、韓国全体の卵生産目的の雛の3分の1が今年いっぱい生産できないことになり、来年以降卵の生産が30%少なくなる計算になります。

卵の価格上昇は必死です。

それだけでなく、口蹄疫が発生した後の、豚肉、牛肉の不足は大変なもので、価格上昇はとにかく輸入品の肉類の氾濫となることを畜産業者は心配します。

さらに今年は韓国はかなりの国とFTA協約を締結し、無関税の肉類の輸入自由化が始まろうとしています。

この輸入肉の食味に、消費者が抵抗無く慣らされたら、韓国産の豚肉、牛肉、鶏肉は今後苦戦は免れません。

韓国のある新聞のゴシップ欄に、今回の口蹄疫の大発生を起こさせたのは、韓国を肉輸出の大きなターゲットと見た輸出国の謀略で、ウイルスを密に撒き散らしたのだ、と実しやかに噂されるほど激しい発病現場です。

軍隊が大量投入され、殺処分から埋葬まで「弾丸が飛び交わされない戦場のようだ、意気消沈し何もかも失った生産者がかわいそう」24日に電話した韓国の友人が、畜産農場の悲劇を報告していました。

さいわい彼が販売している私たちの商材(フミン酸と生菌剤)を使用しているいくつかの養豚農家は、奇跡的に病気の発生がなく「生菌剤とフミンがウイルスに強いのか?」との質問までありました。

「免疫抗体が高くなることは確かだが、薬ではない」と返事するにとどめました。

いずれにしろ韓国の畜産会が岐路に立たされる年になりました。

ウイルスや病原菌を防御する体制と心構えが甘かったのか、初期の対応が悪かったのか、またどうして全国に広がったのか、大いに今後検証する必要があります。

1月12日にわが社を訪問した、もう一人の代理店社長は、「生糞のトラック積みが問題だ、その証拠に高速道路沿いに口蹄疫の発生が見られる」と語っていました。

事実だとしたら、前回このマガジンで私が指摘していた危険因子が、その通りの被害をもたらしたことになります。

こんな単純な危険因子を何の抵抗も無く許している、農林行政の怠慢が指摘されなければいけません。

またワクチン接種の遅れも指摘されています。

公務員にありがちな確実と慎重な行動で、決定を遅らせ全てが逡巡している間に、ウイルスは人間の意思決定より早く、動き回った結果全国に飛び火しました。

そうなると人災です。

偶然渡り鳥がウイルスを運んできたなどと、自然界の不条理に原因を押し付けられない現実です。

遅まきながら、全ての家畜にワクチンを接種する決断が下ったようですから、ワクチン抗体が付与された後の発生はなくなるが、それでウイルスが全滅したわけではなく、ウイルスが飛来しても感染しないだけです。

心配は野生の鹿や猪などワクチン接種が不可能な動物が山野に生息し、その動物間でウイルスのキャッチボールが行われますと、ウイルスは永遠に生き続けます。

またワクチン接種を全群に行えば、これは汚染国です。

牛豚の肉は清浄国へは輸出できません。

しかし韓国は畜産品の輸出で国力を高めるわけではなく、国産の新鮮でおいしい肉を国民に供給することが大事です。

しかし今回の口蹄疫の発生で被った被害は、推定20億ドル以上になるでしょう。

日本円に直して1800億円、甚大です。

今後同じような悲劇を繰り返させないためにも、ワクチン接種で病気を抑制できるなら、積極的に免疫抗体産生の防御体制に切り替え、生産者の不安をなくすことが韓国の国益でしょう。

一方これも無ワクチンの鶏に、鳥インフルエンザが燃え広がっています。

こちらの損害がトータルでいくらになるか終息しない限り分かりません。

やがてこれもワクチン接種により今後大発生を起こさない態勢になるのでしょうか?。

東南アジアの国々全域、お隣の中国でも口蹄疫や鳥インフルエンザのワクチンを全て使用しています。

この2つのワクチンを使用しない国は、日本と韓国だけでしたが、韓国はすでに口蹄疫のワクチンは接種開始し、鳥インフルエンザもこのまま被害が継続すれば、緊急ワクチン接種の手段をとらざるを得なくなります。

ところで、なぜいままでワクチンを許可しなかったのかの疑問があります。

その理由のいくつかに、以下のことがあります。

疫学的な問題としては、口蹄疫も鳥インフルエンザも、いろいろなウイルスの形があって、一つのワクチンだけでは防ぎきれないだろうとの見解です。

また経済的にワクチンの費用がかかる。

病気は本質的には感染病防御することによって防ぐのが正しく、もし一箇所で発病しても、徹底的に防御することによりウイルスを撲滅できるとの自信(過信?)。

これらの伝染病を発病させないこと、ワクチンを使用しないことが、畜産先進国としての矜持で誇りです。

下世話な言い方ですと面子です。

さらに現実の問題としての影響は、畜産物の輸出入への規制にからむ問題があります。

もしワクチンを使用しますとその国は汚染国と認定され、生産した畜産物は清浄国には輸出できません。

逆に今まで発病も無く、ワクチンも使用しない清浄国であったので、汚染国からの安い畜産物は防疫上禁止することが出来たのが、理論上禁止できなくなります。

ことに日本の場合、安い畜産物が湯水のごとく輸入されますと、畜産業そのものの存在が危殆に瀕します。

このような複雑な思いもあって、このワクチンの使用には慎重にならざるを得ないのです。

さて、お隣韓国はついに矜持を捨てて、ワクチンを許可しました。

もっとも安い畜肉の輸入は、FTA締結で防げない現実があります。

だったら生産者の保護と動物愛護、病気拡大で被る国家的損害を防ぐほうが、政治として正しい判断かもしれません。

畜産農家も、防ぐ手段の無かった凶暴な病気の対策が出来、安心して生産に励むことが出来るメリットがあります。

さて日本も昨年の口蹄疫騒動で多額の損失を経験しました。

この悲劇は二度と起こさない予定が、こんどは鳥インフルエンザと形を変えて再度日本の防疫体制に自然界のウイルスは挑んできました。

この悲劇が一箇所で終息することを望みますが、目に見えないウイルスは日本国中ばら撒かれていると見たほうが正しいでしょう、なぜかといえばこの運搬者は野生の渡り鳥、野鳥、野鼠、野生動物、昆虫、そして人間と物資の移動、さらには季節風までが仲間になります。

そんな自然界の物理的周期と循環作用に、人間の英知がどれだけ対応できるかが、これからの勝負でしょう。

ただ気の毒なのは、こんな目に見えない自然界からの攻撃を、防御する手段を持たない養鶏業者のおびえを、当局はどう見るのでしょうか?