東日本大震災と台湾人の心

〜150億円の義援金が物語る日本への気持ち〜
(世界中から助けられた大震災の教訓)

「日本は大災害が発生し大変でした、多くの犠牲者が出たことお悔やみします」

4月4日から8日まで、台湾へのビジネス出張途中、面会した多くの仕事関係者からいただいた災害に対するお見舞いの言葉です。

心の底から出る言葉に対し「ご心配いただいて感謝します」深々と御礼をする私に「日本と台湾は特別な関係で、私たちは日本と日本人には本当に親しい気持ちを持っています。今度の災害にも、どの国の人より心痛めます。ですが日本人は強い優秀な民族で、必ず復興し昔より繁栄しますよ」

なかにはこんな丁寧で、心温まる励ましの言葉をいただき、一層恐縮させられました。

「義援金も日本円に換算すると100億円ぐらい、台湾人が寄付してます」
私たちの会社の台湾代表社員のH氏の説明はより具体的です。

彼自身も私宛のメールで、月給のうち10万円を義援金に寄付したいとの申し出が震災翌週にあり、私は感動させられました。

その気持ちを良とし「私たちの会社も私自身も、義援金を寄付する予定があるのでそのとき一緒にしよう」との返事をしたほどでした。

弊社の社員H氏の気持ちは、台湾を代表する台湾人の日本の災害に対する偽らない気持ちと信じます。

台湾と日本の関係は、歴史的にも深く、人々の交流も多く、精神的にも感情的にも友好度は深いものがあります。

それだから今回の災害には、同国人のような感情で、何とか援助しなければと考える人の多いことも確かです。

私の古い友人の中には、1999年9月に起きた、台湾中部大地震にいち早く駆けつけた日本の救助隊のイメージが台湾人の心の底に深く刻まれているので、今回の東日本大震災でその恩返しをしなければとの気持ちもあります、と説明します。

そのときの日本の救助隊の、寝食を忘れ不眠不休で活動した話は、いまでも美談として語られていると、台湾の友人から聞かされます。

他の国の救助隊と比較して、日本人の献身的活動は群を抜いていた、日本びいきの気持ちがあるにしても、聞かされている私たち日本人にはうれしい話です。

そんな気持ちの台湾です。

3月11日震災直後、台湾政府は迅速に救助隊と、政府予算の中から1億台湾円(日本円2億8千万)の義援金を、日本政府に申し入れています。

決断は非常に早く、いの一番でしたが、実際に救助隊が日本に到着したのは、翌々日13日と14日で合計63名。遅れた理由は日本政府から援助を受け入れる返答がすぐになかったからです。

その間、中国からの救援隊が12日来訪し、それを確認してから日本政府が申し込みを受託したようです。

こんなところに日本政府の優柔不断さがあり、もし中国に気兼ねしての処置だとしたら、もってのほかです。

災害救助は一刻を争うもので、人命の救助、火災の消化、災害者の避難、緊急な医療処置など、どれもこれも待ったなしの非常事態です、政治的な思惑や面子の問題ではありません。

その救助隊は同時に沢山の救援物資を運んできました、簡易な発電機500台、毛布、マスク、インスタントラーメン、非常用飯米、などなどその数量はトータル500トン。

被災地には大変ありがたいものばかりです。

勿論今回の大震災には、世界各国から救助隊と支援物資、義援金など温かい支援の数々を頂き、日本人として感謝の気持ちいっぱいです。

そんな中、震災後初めての訪問国が台湾でしたので、台湾の人々が日本に寄せる気持ちが厚く、それを直接聞いたり感じたりしただけに、私の心はより以上揺さぶられました。

私たちの訪問中も、義援金募集の会合やチャリティー演奏会など開催されてると聞きました。

4月1日現在で一般国民から集まった義援金が合計で日本円換算で100億円を越えたらしいです。

弊社の台湾代表のH氏が話したのはこの数字ですが、滞在中の8日間で義援金はまだまだ集まり続けていました。

H氏は台湾円で50億以上になるでしょうと言います、3倍すると日本円で約140億円となります。

義援金として、また一般国民の寄付金としては群を抜いた金額で、2400万人の人口の国としては破格の数字になります。

はたして、台湾の中部大地震のとき、私たち日本人はどれだけの義援金を拠出したか、恥ずかしい限りです。

私の友人の中には「原発放射能被害が深刻になったら、いつでも台湾に避難してください、喜んで受け入れますから連絡してください」真顔で援助を申し入れます。

これも本当の話ですが、地震と津波で家をなくした東北の被災者の方にも、ホームステイの準備が充分あるから、気兼ねなく台湾で長期滞在してもらってよいとの家庭が、何軒も名乗り出ているとも聞きます。

放射能汚染で野菜が不足するなら、100トン以上の野菜を無償供与する決議が、台湾農業委員会でなされた話も聞きますし、台湾芸能協会は率先して義援金チャリティーで3億円集めた、ある福祉団体は義援金会合で60億円を集めた、ある企業は日本円で10億円を日本の赤十字に直接寄付した、などなど、日本への温かい思いやりが絶えず話題になります。

そうなんです「私たちと日本は親戚のようなもの、いつでも困ったら相談してください」台湾人の多くがこんな気持ちを、日本と日本人に持っていることを、私たちも心に銘じましょう。

日本でも有名な前大統領の李登輝さんが、震災直後に日本人の皆様にとしたメッセージがあります、それを要約して伝えますと。

「日本の皆様の不安や焦り悲しい思い、私は刃物で切り裂かれたような心の痛みを感じます。どうぞ元気を出し自信と勇気を奮い起こしてください」

日本教育を戦前に受け、日本の大学で学び、日本人以上に日本的な精神の持ち主の李登輝さんの、日本人を思う心のこもった言葉です。

世界から援助され、復旧と復興を期待されている日本、大地震と大津波、原発事故の放射能汚染という三つの試練を乗り越えることが、義援金を拠出していただいた世界の人々、とりわけ台湾の人たちに対する恩返しでしょう。

心からありがとう。謝謝。