逆流性食道炎

〜肥満とピロリ菌抑制で増えた逆流性食道炎〜
(動物性高たんぱく高脂肪食の胃酸過多が増加の元凶)

2012年8月に受けた胃カメラ内視鏡検査結果報告書を見ながら「食道下部にヘルニアが見つかり、胃酸がこのヘルニアに入り胸焼け症状が起きるのでしょう、そんな症状の含め『逆流性食道炎』といいます」と主治医の判断を聞かされました。

逆流性というのですから、食べ物など食道の蠕動(ぜんどう)運動で胃へ到達するよう上から下に流れているものが、逆に胃から食道に逆戻りしてくる症状を逆流性と称し、逆流物質が強酸性の「胃酸」であるため、胃酸に対する防御粘膜がない食道は炎症を起こし、さまざまな不快症状が発生する病状を「胃食道逆流症」あるいは「逆流性食道炎」と言うようです。

胃食道逆流症は逆流していても炎症がなく、非糜爛(びらん)性の逆流症状で、逆流の数も少なく胸やけなど顕著な症状が少ないものを指し、逆流性食道炎は炎症があり逆流が多く、胃もたれ、吐き気、ノドの不快感、胸焼けがはっきり症状として表れ、生活に支障を与えるようなものを言います。

逆流性食道炎とは、非常に判りやすい病名ですが、私の主治医から聞くところによりますと、最近この病気が増えているといいます。

その原因はどうも食生活の変化によるもので、日本食から欧米の高カロリー食に変わり、肥満の比率が増加していることと比例しているようです。

肥満者は大食いで早食い、なおかつ動物性の高蛋白、高脂肪の食品が好きです。

それが胃酸を多く分泌する結果となり高じて胃酸過多となり、増えた胃酸が食道へまで逆流する症状を引き起こしているようです。

肥満でなくても、食生活が肉類や脂肪過多の食品が好きな人や大食の人は、同じように胃酸過多となり逆流性食道炎になりやすい傾向にあるようです。

加えて、大酒飲み、喫煙者、ストレスに弱い人、神経過敏な人などが、食道の蠕動運動が支障をきたすことが多く、この病気になりやすく、ことに老人は蠕動運動が鈍くなるのと、食道下部の括約筋が緩んでくるので、逆流する胃酸や食べかすを防げず、食道炎が顕著に増加するようです。

さらに面白い現象として、ヘリコパクター・ピロリ菌対策が普及し、ピロリ菌除菌が進んだから、逆流性食道炎が増えてきたとも巷間言われています。

ご存知のようピロリ菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こす元凶といわれています。

この菌が繁殖していますと胃酸はピロリ菌中和のため少なくなり、その結果胃の粘膜の炎症ともなるのですが、逆に胃酸が減少する分、逆流性食道炎が少なくなるようです。

これは傾向的現象のようで、必ずしもピロリ菌が少なくなったので逆流性食道炎が増えたのかどうかの確証は難しいです。

しかし現象としてピロリ菌はなくなったが、胸やけするようになった、との報告も多いようです。

こう見てくると、逆流性食道炎は近代病で、生活習慣や食品の変化、医療技術の進歩もその原因になっているといえます。

私の場合の最大原因は、月並みですが老化のようです。

言い訳ではないですが大食でもなく、脂肪食は好まず、煙草は吸わず酒もほどほど、ストレスも楽天家で感じないほうなので、加齢による下部食道括約筋の弛緩と、それに伴うその辺りのヘルニア症状が、食道炎を引き起こしたと考えられます。

ただし、若いときから胃痛や消化不良などに胃弱体質に悩まされ、30歳前後には十二指腸潰瘍と診断され、長期間投薬治療の経験もあり、いまでもレントゲン検査で十二指腸の球部が変形していると指摘されます。

潰瘍を患ったのですから、もともとは胃酸は多いほうなので、こんなことも逆流性食道炎の引き金にもなっているでしょう。

この胃酸過多や胃弱体質も精神的なものが作用していることが多く、若いときの激しい感情と感性が神経を敏感にさせ、その動きが胃腸の神経に緊張をもたらし、その緊張が胃酸を多く分泌し、病的な症状となっていたと思います。

若い時代は、胸が騒ぎ胸がキュンと締め付けられるような失恋の痛手とか、受験に失敗し落ち込んだ自信喪失とかで、胃腸がキリキリ痛むような若い感受性でしたが、今はまったく胸焼けの質も変わり、失われた昔の胸苦しさを懐かしむくらいです。

いま起っている胃の不快感は、食道、胃の老化による器質的変化によって起る病的なものと言われ、まったく色気も艶気もありません。

ただしこれも長い年月生きてきた証(あかし)と割り切ることで、前向きに対処しましょう。

さて、この病気はすぐに命に別状をきたすものでなく、放って置いても構わないようですが、長期間放置しますと食道が狭くなる狭窄症や、物を飲み込むことが下手になる嚥下(えんげ)障害になることもあるようです。

それゆえ症状によりますが、対策としての治療法は薬剤の投与です。

胃酸が過剰にならないような制酸剤が一般的です。

ことに胃酸を抑制する薬に炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、などがよく知られ、そのほかH2ブロッカー、さらに新薬の「プロトンポンプ阻害剤(PPI)」が効果が大きいようです。

プロトンポンプとは、胃酸を胃の中に送り出す働きのポンプですが、そのポンプの働きを止めて胃酸の放出を抑制する薬のようです。

目的はあくまで胃酸過多による障害、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療薬です。

胃酸を抑える薬ですから、胃の中の酸が少なくなれば食道に逆流することも少なくなるでしょうし、少なくなれば胸焼けや胃の不快感が無くなります。

ただし私はこの薬は飲んでいません。

医者はどうしますかと聞きましたが、薬に頼らず普通の生活の中で様子を見ましょう、と返事をしました。

別に意地を張ったわけではありません。

自然体の中で老人性障害を受け止め、その病気が治るか悪化するかの流れを見守り、どうしても我慢できない状態になったとき治療をしようと決めて
います。

80歳を過ぎ、青壮年の時代のような元気な、細胞、臓器、血管、官能期間ではないです。

劣化していく肉体に対し、それを黙って受け入れようと思います。

ただし、自然の食品のなかに、肉体の劣化を遅くする成分は無尽にあります。

そんな成分を上手に抽出した食材を毎日いただいていることは加えましょう。