豚肉、鶏肉、卵の安全性

〜台湾の病気発生状況と薬剤多投の現実〜
(経済的発展淘汰かな生活が安全な肉と卵を作る)

先週、2014年8月26日より28日まで、台湾に仕事で滞在しました。

台湾には、年初めの1月14日から5日間と、7月の第1週にも6日間訪問しましたので、今年は合計3回になります。

その目的はほとんど畜産に関連した、養豚、養鶏場、または飼料会社や取引先の数社です。

そのなかで問題を抱えているのが養鶏場で、ことに種鶏孵化場では生産した雛にまで病気が移行し、生産者との間でクレームが生じている事実を聞かされました。

それがため飼育時に発生する病気対策と、それに対応する予防治療方法、また生産物へ移行しない方策、加えて鶏肉や卵の安全性を確保する飼養管理の話に集中します。

ことに台湾は、鳥インフルエンザ、豚の口蹄疫が終息せず、さらにサルモネラ、大腸菌、クロストリジューム、コクシジュームなど、感染性病気が蔓延し、生産性が落ち込んでいる現状があり、この解決は早急にしなければなりません。

それらの感染症の中には、人間への感染で食中毒を起こす危険もあり、また病気治療に薬品の大量投与で対応する危険が重なり合っている現実を知りました。
ご存知のよう、いま世界全体が食品の安全性に、ことに畜産物の薬品残留と病原菌の汚染ついては、強い関心を持っています。

それは国内で生産するものから、輸入食品全てに対して同じですが、ことに国内産についてはより監視の目が官民ともに厳しくなっています。

ことに経済的に発達し、国民の生活レベルが向上した国々の、食に対する安全性への関心はひときわ高く、台湾もこの数年、政府指導で生産段階から流通段階まで、食品生産上衛生的な危害が発生しないよう厳しい監視が行われていると聞きます。

私の知る台湾の20〜30年前までは、食料生産の現場も、食品市場も食堂も衛生管理がよく整っているとは決して言えない状態で、私が肉や卵の生産現場で衛生面での欠陥を指摘しても「台湾ではかまいません」との答えでしたが、たしかに最近の台湾は急激に変化しています。

ことに食堂の美的水準は、厨房からテーブル、サービスをするウェイトレスからウェイターまで、衛生的マナーと行動は隔世の感があります。

「衣食足りて礼節を知る」ということわざがありますが、豊かさが人間の心と常識を変えていき、見えないところでも正しい行動と、責任を負う心ができるのです。

前に中国での経験で、病原菌が感染した肉でも加熱すれば問題ないと言った生産者の話をしましたが、これは心が貧しさの表れで、中国と中国人の食物に対する常識と無責任さと無智を物語るものです。

病原菌に感染した事実の究明より、結果問題を起こさなければ良いではないかの心では、安心安全の食品はほど遠いです。

ところで私が関係する台湾の畜産業者の中には、まだ心の貧しい、自分だけがよければその肉や卵を食べる人への思いやりが欠ける人が見受けられます。

その一つの表れが、薬品の多投です。

ご存知ない方も多いので少し説明しますが、牛、豚、鶏にも人間と同じように四百四病があります。

ウイルス病からバクテリアの感染症、原虫病から回虫などの寄生虫、ダニや羽虫また蚊などから感染するマラリア的病気など、そのすべてに薬品が開発されています。

また病気によってはワクチンが開発されています。

これらの病気に感染すれば、生産者は薬品を使い治療予防するのは当然で、そのことが即安全性に問題があるとは言えません。

ただし薬品の効果だけに頼りすぎ、大切な病気感染を防ぐ環境整備や、従業員の衛生管理の知識と実行を忘れ、問題が起きたら薬で解決する習慣と、さらに病気侵入を恐れ、予防的に常時使つづけることが問題なのです。

使い続ければ病原菌も薬に対して抵抗力を持ち、病気はいつまでたっても治りません。

さらに困ったことは、畜産に使用する治療薬の多くが、人間の感染症に使用する抗生物質や抗菌剤とダブることです。

これらの治療薬は肉や卵の中に残留することもあり、その肉や卵を人間が食べていますと、知らぬ間に病原菌が薬剤に耐性ができてしまい、本当の病気になった時すべての抗生物質が効かなくなることです。

こんな病原菌を「スーパーバグ」と呼び、全ての薬剤に抵抗性を持つ多剤耐性菌となるのです。

本来薬剤で治る感染症の細菌が耐性があるため治らず、その結果全世界では年間500万人を超える命が失われているとも言われます。

当然この多剤耐性菌の増加原因に、畜産業界の薬品使用の多さが問題にされます。

家畜家禽に発生する病気の治療薬の乱用と、さらに配合飼料に成長促進剤として使用されている薬剤の長期間多投が、他の治療薬の薬効にも影響し、感染症が治りにくくなり、だんだん投与量が増加しなければならない結果も生みました。

畜産物生産は経済行為ですので、コストが少なく生産量が増えれば利益を生みますし、また価格も低下し消費者も喜びます。

それがため、薬害が少ないと認められている抗生物質などが成長促進剤として各国の政府は認証しています。

日本も台湾も同じです。

これが恒常的に長期的に使われていることが、病原菌にどのような変化と耐性を作ってきたかの検証はできていません。

病気を予防したり治すために使う薬が、さらに病気を呼び起こす発火点になる、皮肉な現象にもなっているかもしれません。

さらに問題なのは、この抗生物質が動物腸内に生息する善玉菌を殺して、腸管内の環境が脆弱になることです。

こんな弱い腸管を作っては非常に危険です。

動物の腸の健全性はその動物の健康と免疫向上を図る大事な器官で、善玉菌の乳酸菌やビフィズス菌が失われては、成長も生産性も落ち込みます。

私は台湾の幾つかの飼料会社の研究所の研究員との面会を重ね、台湾の実情と薬品の現状を聞く機会があり、多くの病原菌に薬品耐性ができ効果が無くなっている事実を知りました。

それは今まで、安易に薬品だけを頼りに病気対策を立て、まして大量購入すれば単価が安くなる薬品会社の戦略にはまった結果です。

この話は台湾だけでなく、世界共通の現状のようですが、ことに発展途上国の生産者は、病気対策に考えなしに安易に薬品を使いすぎています。

また薬品会社も代理店も自社で作った都合の良いデータを、知識の薄い生産者説得に使用、営業的に無償サンプルなどばらまいて使用量を増やさせます。

使用量が増えると、薬品残留の肉や卵が増えることで、人間への危害はますます増えますが、生産現場ではそれには神経を使いません。

翻って日本の現状はどうでしょう。

確かに国としての薬品使用量は台湾より多いです。

それは飼育している動物の数が多いからで、実質的には一頭当たりの使用量は台湾よりかなり少ないです。

それは日本の生産者が、可能な限り薬品を使わない生産管理を行い、動物を飼育する環境整備と、畜舎の清掃と洗浄、消毒と燻蒸などバイオセキュリティーの徹底をし、健康管理を図る管理システムを構築した農場が増えたことです。

さらに薬を使わないで動物を飼育する、矜持(心の誇り)を持つ生産者が多く輩出されたからでしょう。

そんななかで、養豚だけは薬品使用量が多いことが気になります。

アメリカなどから沢山の豚肉が輸入されている今日、それを迎えうつ国産の豚肉の安全安心は大丈夫なのか心配です。

鶏卵は薬事法で薬品使用が禁止されていますので、産卵期間中はつかいません。ただし卵生産時でも鶏は病気になりますが、それでも薬が使えません。

使ったらその期間の卵は販売してはいけない法律があり、もし販売したら営業停止など、企業存続に影響する事態になります。

これは大変なことです。

幸いなことに私たちが開発した生菌剤(プロバイオティック)は、腸内で発生する感染症の細菌の増殖を強力に防ぐ能力が優れていて、多くの養鶏家が採用していただいています。

欠点としては薬品より高価なことです。

ただし薬品を使えばその期間の卵は法律上販売できませんが、我々の生菌剤は納豆菌、乳酸菌、病原菌を分解する酵素などでできている有機製剤なので、卵は販売できますし、健康もたちまち回復し産卵も元に戻ります。

薬品使用で販売できないマイナスを考えると、決して高くはありません。

さらに鶏卵生産者の気持ちの中に、安全安心の卵を消費者に届けようとする、積極的な心の持ち方があるからです。

この生菌剤は目下、韓国、タイ、エジプト、バングラディッシュなどへ輸出していますが、使用数量は日本の比ではありません。

そのほかの国々は、経済的に有利な薬品依存の国となります。

ただし薬品を使用しでも、サルモネラ、カンピロバクター、大腸菌O157など、人間に食中毒を起こす細菌はなかなか消えていません。

それゆえ私は東南アジア、中国、韓国、台湾では、決して生卵は食べませんし半熟卵も遠慮します。

というのもこれらの国々の養鶏事情をよく知っているので、自己防衛のつもりです。

唯一日本では生卵も半熟卵も安心して食べています。

薬品使用に厳しい規制がある国はEU諸国で、ことに治療に使う抗生物質には神経質です。

それはとりもなおさず人間への薬品残留危害を防ぐ目的です。

アメリカも食品薬品局(FDA)は、薬品の危険性を十分認識していますが、薬品会社と畜産生産者団体の強い反対にあって、規制が緩いです。

そんな国から牛肉や豚肉、鶏肉がTPPという自由貿易の名のもとに、無制限に輸入されることを私はおそれます。

こんな状態の世界ですが、日本の生産者(ことに鶏卵)は、目に見えないところで、消費者に安全を届ける努力をしているのは素晴らしいです。
さて台湾はどうでしょう。

台湾も薬品使用には厳しい規制があり、日本同様産卵期間中の鶏には薬品の使用は禁止されています。

問題がそれが正しく実行されているかいないかです。

巷間伝わるところによりますと、これが徹底されず無断使用が横行し、見かねた政府が徹底的に実行するよう強い行政指導に乗り出したようです。

やがて日本と同じ薬品残留のない、サルモネラフリーの鶏卵が生産されましょう。それを期待します。

さらに鶏卵だけでなく、鶏肉も豚肉も牛肉もアヒルの肉も同じ状態にすることが先進国の行政です。

ところで薬品使用を軽減すれば、病気発生の危険が増えます。

これがこれからの病気との新しい闘いです。

飼養環境の整備や消毒など、物理的防疫体制だけでは防ぎきれない現実となります。

動物にダメージを与える病気だけでなく、食品としての肉、卵に感染する病原菌、サルモネラ、カンピロバクター、病原性大腸菌のO157やブドウ状球菌なども防がなければいけません。

これらの病原菌の危険をも、生産者は生産物から除去しなければいけません。

すなわち、これからの肉や卵の正しい規格は、可能な限り無薬、無菌が条件となります。

残念なことに台湾では、無薬の計画は立てられるが、無菌にすることが難しい現状でしょう。

その背景には中華料理は全て加熱する料理で、過熱により病原菌は死滅するから気にしない感覚が根強く、サルモネラやカンピロバクターの名前さえも知らない養鶏業者がいるくらいです。

しかし最近の中華料理は国際化し、コース料理やセット料理には生野菜のサラダや、刺身など新鮮さ演出する料理も出されます。

また西洋料理のレストランも増え、非加熱料理も多く見受けます。

これら加熱処理しない食品は、同じ厨房内で処理される肉、卵から、容易に汚染される危険があります。

家庭のキッチンも同じ条件で危険があります。

これらを段階的に是正するには、台湾の人たちの衛生観念の進歩と、畜産業者の生産理念の変化が大切です。

今回私が面会したのは養鶏関係者ですが、この方たちは進歩的な考えの生産者で、薬品使用を低減し、なおかつ病原菌汚染を無くす飼養管理に賛成しています。

それにはかなりの改革が必要で、現状の常識を打ち破らなくてはなりません。

安全な食品を作る方法にHACCP(危害分析管理法)があります。

畜産管理にもこの方法が取り入れられ、日本の畜産農場のかなりの数が、承認を受けています。

HACCPを行うことにより、自分の農場の欠点がわかり、安全性を高めるための是正ポイントが判明します。

それは日々の管理行動とその記録です。

その記録が正しければ、やがては生産性も向上しますし、薬品の使い方にも無駄が無くなります。

それ以上に薬品を使わなくても、健康的な動物が育てられると思います。

台湾でも農場HACCPを実行することができれば大きな飛躍です。

それは畜産業全体の発展でしょうし、台湾の利益です。

やがて台湾の消費者に安全安心を届けられる基礎が出来ます、それにより国民の健康は今以上更新するでしょう。

そんな気概を持った畜産業者が排出されることが、将来の畜産業の発展になるでしょうし、それが成功すれば台湾に、新しい豚肉、鶏肉、卵の安全基準ができます。

その目的に私たちが、また私たちが提供する生菌剤が、少しでもお手伝いできたら幸せです。