フミン酸の力(2)

〜かき養殖を蘇らせる「フルボ酸鉄」〜
(東日本大震災から立ち直る気仙沼の植樹祭)

今週6月6日の朝のテレビニュースで、ある植樹祭の映像が流されていました。

宮城県気仙沼湾に注ぐ河川上流の山への植林です。

この植樹祭の歴史は長く22年にわたり、毎年全国からの多くの参加者も集め、すでに5万本を越えるブナ、ミズナラなどの広葉樹が植えられてきました。

ところが今年は3月11日の東日本大震災があり、この植樹祭も実行が危ぶまれましたが、予想を上回る1200人を越えるボランテア参加者が全国から参集し、盛大だったとニュースは伝えます。

この試みは1989年、気仙沼のかき養殖業者の畠山重篤氏の努力によって薦められたものです。

テレビ画面にはこの推進者畠山さんの姿も映され、大津波で壊滅的な崩壊にあい、全ての養殖いかだが流され、再起不能を予測しただけに、人々の温かい支援の手で、再度かき養殖産業を復活させられる喜びを語っていたのが印象的でした。

この植林の目的は、山々が開発と言う美名で荒らされ禿山になり、そこから湧き出る河川にもともと含まれていた栄養素が枯渇し、その水が流れ込む海が、無機質な砂漠化となり、植物プランクトン動物プランクトンを始め、海藻、魚介類の成育が阻まれ、かき養殖にもその被害が顕著に現れ、その危機的な状態を救うために始められた運動でした。

その後、山々は緑を取り戻し、流れる水には有機質が含まれ、栄養豊かな海を取り戻し、気仙沼のかき養殖は蘇ったのです。

「森は海の恋人」この言葉は、この成功を物語る山の植林と豊かな海との関係を書き下ろした出版物で、勿論執筆者は畠山さんです。

私も興味深く読ましてもらいました。

題名が示すとおり、森と海は切っても切れない恋人関係で、広葉樹林が生い茂る山々が秋になると落葉し、その堆積物が有機質の栄養を育て、その山に降った雨が地中の栄養素を取り込んで川となり、その水が豊かな海を育て、海藻が繁茂し魚介類が成育する、大自然の循環する営みをあらわしたものです。

ただこの本に書かれた中に、生物の生育と繁殖の鍵として「鉄」と「フルボ酸」が重要な働きをしていることを強く訴えていたことを記憶しています。

この「フルボ酸」とは、今回のテーマの天然フミン物質の中に含まれる一つの化学物質で、植物や動物の死骸などが、何百万年と長い時間堆積し発酵、酵素触媒などの有機的化学変化で生まれた、フミン物質の有効機能成分の中心になるものです。

このフミン物質は山林の落ち葉が腐食した土壌などにも、植物の化学変化で微量に含まれます。

それゆえその土壌を伝わって湧き出た水には、有機質の栄養素と、それを動植物に効率よく吸収を促進させる、フミン酸とフルボ酸が存在します。

ことに水に溶解する性質のフルボ酸は、湧き水に溶けやすく、一方水に溶けないフミン酸は土壌の中には存在しますが水の中に極少数しかはありません。

湧き水に溶け出したフルボ酸は鉄分と相性がよく、その鉄分を挟み込んで抱えているて、これを科学的に「キレーション」といいます。

吸収しにくい無機質の鉄分は有機質のフルボ酸と一緒ですと、植物動物が吸収しやすい状態にしなり、ことに「フルボ酸鉄」として一緒に吸収されたとき、植物、動物は生き生きと蘇り、成長は著しい違いとなります。

ご存知のよう鉄は酸素を必要とする好気性生物には絶対無くてはならない微量成分で、私たち人間も動物も、また植物もさらには小さな昆虫から微生物まで、酸素と一緒に鉄を必要としています。

鉄と酸素があって生命活動が維持され成長もし子孫も残せます。

たとえば人間の血液の中にある酸素は、赤血球ヘモクロビンの中に有って体全体に酸素を供給しますが、その酸素は鉄と一緒に存在します、血液が赤いのは赤血球のなかのヘム鉄で、これがなければ酸素供給ができません、よく言われる血が薄いとか貧血とかは、鉄分供給が少ないことも原因の一つです。

鉄は無機質でそのままでは吸収できず、有機鉄に変えなければなりませんが、有機質に変える物質の一つがフルボ酸です。

このフルボ酸と一緒になった鉄が海水に溶け込み、植物プランクトン、動物プランクトンを増殖し、それを餌に魚介類が繁殖する食物連鎖が起ります。

養殖かきもこのフルボ酸鉄のおかげで成長し、栄養豊かな美味しいかきとして育ち、気仙沼の養殖かきを有名にしました。

畠山さんの著作の中にもこのフルボ酸鉄の重要さが強調され、その知識を与えてくれたフルボ酸鉄研究の第一人者、その頃の北海道大学水産学部教授、松永勝彦先生(現四日市大学)との出会いが紹介されています。

その松永先生の著作「森が消えれば海も死ぬ」の中にも、鉄の重要性とフルボ酸との錯化(キレート)による動植物生育のメカニズムを詳しく説明されています。

畠山さんが述べている「森は海の恋人」とまったく同じ主張です。

ことに先生は、国土の乱開発により、海が海岸が死んでいくことへ警鐘を鳴らしていますし、それを蘇らせるものが鉄でありまたフルボ酸だと断定しています。

余談ですが、私ども会社のスタッフが最近、松永先生から連絡がありお会いしたときも、日本の海岸線が「磯やけ(砂漠化)」状態になっている現状を憂いていたようです。

また弊社の「天然カナディアンフルボ(フミン酸)」に大変興味を持たれ、ロッキー山脈で育った天然でありながら70%を越えるフミン酸フルボ酸の含有率に興味を示されていました。

先生はフルボ酸と鉄との関係について、いくつかの実験をしていますが、そのなかのクロレラ繁殖実験で、フルボ酸鉄の有無がクロレラの生長に大きく影響するデータは、そのまま海浜のプランクトン成長と海藻繁殖のデータに使えます。

海藻繁殖の成功は、さらに畑作や田んぼの野菜や穀類の生育と同じと想像されます。

その通り、全ての農作物は窒素や燐酸などが栄養素として吸収される場合、鉄が必要で、その鉄はフルボ酸鉄でないと吸収ができず効力が発揮できません。

そもそも鉄の電解質は、Fe3+の三価イオンで、同じ電解質のフルボ酸とは結合しやすく、また土壌の微生物繁殖と肥料分の窒素、燐酸、カリの吸収にもイオンを調整し、作物繁殖への影響もよくなるのです。

その証拠に、インドの南部バンガロール地方での弊社フミン物質の実験で、農産物の生育が約3倍も大きくなって現地の人を驚かせましたが、土壌が赤茶けた酸化鉄の多い土質のため、いままで吸収されなかった鉄分を、フルボ酸がキレートして作物に栄養を与え、生気を取り戻した作物が、びっくりするような成績となったようです。

フルボ酸は鉄のキレートだけでなく、空気中の酸素窒素を土壌に取り込みやすく、また水分の保水力が強く、保肥料力も強いたく、さらに電解質物質としてのフルボ酸は、病虫害対策になるので、全て総合的に生産性が向上したのでしょう。

もっともこの成績も、私どもが供給した天然のフミン物質だから可能だったので、フルボ酸が含まれない今までインドで市販されていたフミン酸では、このような現象は起らなっかたようです。

後日談として、インド南部地方では大変な評判となり、インド農業の一大変革が行われるのではないかと期待されています。

勿論農薬と化学肥料を使用しない農作物生産目的です。

フルボ酸にはまだまだ興味ある機能が沢山あります。

人間への作用では医学分野の素材として多くの研究者が開発をしていますし、食品としてはイオンバランスの調整能力が評価され、運動選手などの筋肉の疲れと収縮運動の促進があげられ、また酸素供給量を増やし、血液への取り込みを活発にするので、マラソンとか登山などには最適と言われています。

天然のイオン素材ですので、そのまま飲んでも山間のフルボ酸鉄の湧き水と同じ、ミネラル水として健康効果は計り知れません。

フルボ酸には天然のハイドロキノン(水酸基キノン)が含まれていますので、化粧品の美白効果としては群を抜くでしょうし、低分子なので、肌からの浸透力が高く、皮膚の表皮と真皮、コラーゲン質への栄養供給剤として物質をキレーションして浸透させ、酸素たっぷりの美しい肌をつくり、抗酸化力の高い性質だけにシミシワそばかすなどの予防になります。

フルボ酸の消臭効果は、いま日本の畜産業者の中では評判となってます。

畜糞の臭い公害は地域住民との最大のトラブルとなっていますが、フミン酸およびフルボ酸使用で驚くほどの消臭効果を挙げ、問題解決に役立っています。

水で抽出した液体フルボ酸を何百倍かに薄め、噴霧使用し効果を上げています。

フルボ酸自体は無臭で人畜無害、かえって人間動物の健康増進と病気予防に役立つため喜ばれます。

それほどにマルチな機能を持ったフルボ酸は、これからの食糧生産と社会生活の安心安全のため、非常に注目されると思います。

ただし人工的なフルボ酸には効力の期待できないものも多く、中には健康を害するものもあるとの報告もあります。

私たちは1億年昔の木々が堆積してできた地層から掘り出した天然物で、純粋なフミン物質の中に含まれているフルボ酸が、多角的機能があることを付け加えます。

東日本大震災の傷跡も消えないのは気仙沼のかき養殖だけでなく、大津波で塩水が冠水した田畑もあります。

この塩害対策には、もっとも有効的に塩分を中和し、土壌のphを弱酸性の適性数値に短時間で成し遂げる、天然フミン物質がもっとも廉価な改良剤になるでしょう。

次回は天然フミン物質の農産物の成果を挙げます。