グローバル時代と留学生

〜日本に留学して感じたグローバル化の発表会〜
(上手な日本語を駆使して話す若い国際人)
「グローバル時代の中でどのように生きるか」

こんなタイトルで、日本に留学している男女7人の学生に、
意見を発表してもらう会合が「NPO法人アジアの新しい風」の主催で開催されました。

「グローバル化の時代」こんな言葉を最近よく聞くようになりました。

それだけ、世界が地球が一体化し、国境がない世界にしようということなのでしょう。

どんな国でも場所でも、どんな人種でも言語でも、どんな生活習慣でも宗教の
違いでも、同じ人間同士だから交流を重ね理解しあい、地球人として友好を
築き上げることが必要だ、こんな理念から出発している概念だと思います。

大変理想的で、この概念に反対する人は少ないでしょうが、
本当のグローバル人間を作ることは果たしてできるでしょうか。

こんな疑問に答える発表会であり、それも日本に留学している若者(学生)に、
この概念を語らせる試みはある意味では興味があります。

最も彼等や彼女たちは、母国を離れ言語や生活習慣の違う日本で、
それぞれの分野の勉学に励んでいるのですから、
すでにグローバル化を実践している人間の一人と言えるでしょう。

ことに今回このテーマで、自分の意見と考察を巧みに編集したパワーポイントで
発表できるのは、かなり優秀な留学生かもしれません。

その多くが日本に留学してから1年目、2年目の学生達なのに、
流暢な日本語を駆使し、歴史的な事実と比喩、さらに冗談とをまじえながら、
自分の考えをわからせようとする努力に敬服しました。

「グローバク化のスタートは多言語を理解すること」

ある学生の意見の中にあった条件ですが、これは基本的な国際人としてのスキルかもしれません。

まず言葉があってお互いの意志が通じ、人格が理解し得るのです。

この学生は母国語と日本語をすでにマスターしていますので、
国際人としての基礎を習得してます。

このように若いうちから、多言語に接していくことが、
グローバル時代の重要な要素かもしれません。

しかしなかには「言語は単なる道具であって絶対条件ではない」との意見もありました。

「言語より大切なことは心で、お互いの人格と品位を重んじることができて、
本当の交流ができる」との考えです、これは最も大切な理念かもしれません。

ところが「言語は大切で、なかでも英語は国際共通語ですので、まず英語を
マスターし、そのうえで他の言語を習うことが、グローバル化には大切」
と現実的な考えもあります。

「もっと大切なことは、意識と心です。その国の価値観と文化を受け入れこと」

「異文化の理解と異文化とのコミュニケーションができること」

「自分のスキルと専門知識を持つこと、知識や経験は言語を超える」

「自然科学や化学、電子工学などの研究は、
テーマや目標は共通でグローバルなもの」

「グローバル人間には包容力と自己責任と使命感が必要」

「育った自分の国の歴史や文化をしっかり知ったうえで、
他国の文化や歴史を理解しなければいけない」

などなど、哲学的観念論から、今行っている研究課題などから、
現実的なグローバル化の概念を語ってもいました。

たしかに同じような研究テーマの真理は一つでしょうから、その研究を通じて
世界の人々と交流することは実際的です。

また面白い比喩も沢山あり、中国からの留学生からは

「歴史的に日本のグローバル人間のはしりは、遣唐留学生の阿倍仲麻呂
(あべのなかまろ)で中国語は勿論、そのころの中国(唐)の政治の高官としても活躍もした」

阿倍仲麻呂の名前は今の日本の若者も知らないかもしれません。

西暦700年代の中国への留学生で、百人一首の中の有名な
「天の原、ふりさけ見れば春日なる、三笠の山にいでし月かも」の和歌があり、
中国では有名な詩人李白や王維などとの親交がありました。

この留学生は、この歌も口ずさみ中国と日本の交流を図った国際人として評価もしました。

厳しい話としては、現地の日本の会社に勤務し、
日本語通訳をした経験をもつ留学生からは

「日本人の上司が日本の習慣と考え方、仕事のやり方を強要し、私たちの国の
価値観を否定し続けていて、英語も現地語も話せず、多くの現地人と
コミュニケーションができなかった。これは国際社会で通用しないと思った」

「香港の映画俳優ブルース・リーはグローバルな人間、
伝統的な中国武術を世界に知らせた功績」

「日本の男性アイドルグループの嵐は、日本を代表するグローバルグループ、
その証拠には多くの外国の若者の心を捉えフアンを増やした。
日本の首相は知らないが嵐は知っている」

このアイドルグループ嵐の名は、世界にこのグループ名を「嵐を巻き起こす」
勢いで有名にする目的で、付けたと聞きますので、留学生の話題に出たように、その目標は果たせています。

現実の話とすれば、人間のグローバル化より、このような歌や音楽、
スポーツや映画、ファッションや食べ物(日本料理)などは、自動車や電気器具やカメラ
などとともに、国境がなくグローバル化への道は早く実質的だ。

今回の留学生の話にも多く出てきた、日本のアニメや漫画は、
グローバル化の先端ポップカルチャー(pop culture)でしょう。

宮崎駿のジブリの世界、ドラえもんやワンピースなど漫画を見て、
日本語に興味を持ち、さらに日本文化を知りたくなり、留学のきっかけを作っています。

このように、人間の交流も大事ですが、その国の文化や言語を知らせるには、
歴史的な伝統芸術文化より、大衆向け文化(ポップカルチャー)の方が影響力が大きいです。

多くの国の大衆の中に、これらのアニメや漫画をまねたコスプレ、
さらにゲームソフトからゲーム機、やがてスマートフォンのゲームなど、
オタク文化を根付かせ、それが日本と日本文化を知るきっかけになり、
日本旅行から日本人との交流に発達する、それが実質的なグローバル化の早道かもしれません。

「中国にいるとき知っていた日本国が、留学して知った日本国とは違うことを
知ったのもグローバルな知識です」と発表した中国の留学生もいました。

こんな話や、グローバル化へのヒントをたくさん与えてくれた、日本へ留学
している学生たちの意見発表会でした。

ちなみに発表者の国籍は、タイ、ベトナム、中国でした。