怖いウイルス病

〜ウイルスとはどんな病原体〜
(免疫力を強くして病気を防ごう)

「口蹄疫(こうていえき)」初めて聞いたり見たりした牛や豚の病名が、これほどテレビや新聞、雑誌に取り上げられたのは、まったく珍しいことです。

それ以前に騒がれた「鳥インフルエンザ」「豚インフルエンザ」など動物名がついた、流行性感冒(インフルエンザ)は、人間に感染し世界的なパニックになるのではないか、すなわちパンデミック(世界的感染)になると言われ、マスコミをにぎわしまし、人々の関心を集めました。

ご承知のように「口蹄疫」は人間には感染もしませんし、病気にもなりません。

それなのに、なぜ新聞やテレビが連日報道したかと言えば、黒毛和牛の本場の宮崎牛と、日本最大の生産量を誇る豚生産量に大打撃がおきることもあったでしょう。

それと法律で決められた病気として感染家畜の殺処分し、感染の拡大を最小に収めようとした意図が崩れ、後から後から発病家畜が続々と出てきたことが、ニュースとなたのでしょう

合計で30万頭を越える、牛、豚を屠殺し、埋没する作業は、誰が見ても虚しくやるせないものでした。

6月終わりになってようやく終息を迎えようとしていますが、物質的損害は市場価格で計算したら、100億200億はくだらないでしょうが、それより多くの作業費やワクチン代、屠殺代、廃棄処分代、想定利益、風評損失、イメージ損失、生産ブランクの損失などなど計算しますと、1千億円以上になるかもしれません。

まして、不幸家畜を処分した畜産農家の、再建資金や心のケアーを考慮に入れたら、莫大のものになります。

こんな大損害を出した原因が、口蹄疫ウイルスの感染によって起こったことは、皆さんよくご存知と思います。

鳥インフルエンザも新型(豚)インフルエンザも一般の風邪も、さらに恐れられているエイズなども、ウイルスが原因で起こる病気です。

一体全体ウイルスとはどんな物体で、こんな恐ろしい被害が起きないようにするに、はどうすればいいのか、みんなで少し考えましょう。
ウイルスとは地上でもっとも小さな微生物です。

普通の顕微鏡では見えず、電子顕微鏡の中で始めて正体を現します。その小さいことは70ナノマイクロメートルとか100ナノマイクロメートルといわれます。

1ナノメートルは1ミリの100万分の1という大きさですので、これは本当の極小の微生物となります。

考えて見ますと、細菌などの微生物は、自分で繁殖する能力があるので完全に生物ですが、ウイルスは自分自身では繁殖することが出来ず、繁殖が可能な細胞の中で始めて繁殖が出来る半端な生き物で、繁殖が自ら出来ないとなると非生物なのか分かりません。まったく化け物か妖怪のような不思議な物体です。

病気を起こさせる細菌は、遺伝子の核(DNA RNA)を持ち、外から栄養素を取り込み、タンパク質、糖類、脂肪など合成して、細胞をつくり、それを囲む細胞壁を持ち、自分で活動し中には線毛や鞭毛と言う尻尾を動かして移動もしますし、条件が整ったら分裂して仲間を増やします。

ところがウイルスには細胞も核もなく、あるのはタンパク質のDNAかRNAどちらかの遺伝情報だけです。

さらにウイルスは、遺伝情報だけで増殖に必要な物質もエネルギーも作ることが出来ない、生物としての欠陥物質ですが、巧みなことに他の生きている生物に取り付いて、その生物の細胞とエネルギーを借用して仲間を増やす、ずる賢い生体機能を持っていて、生物界のどこか目立たないところで、繁殖の機会が来るまで辛抱している、恐ろしいやつです。

このようにウイルスは、取り付いた細胞の中で、自分の遺伝子情報をどんどんコピーし、細胞のエネルギーと蛋白を利用し、あっという間に仲間を増やします。

この間がウイルスの暗黒期で表面からは姿が見えません。言い換えれば潜伏期とでも言うのでしょう、仲間を作りそれを再構築し集団となり、細胞を破壊するようになって、初めてウイルス性の病状が顕性化されるのです。

ただし、なんでもかんでも細胞であったら取り付けるかと言いますとそうではありません。

まずウイルスの種類によっては、受け取ってくれる細胞に、そのウイルスを受け入れるレセプター(受容体)がないと細胞に入り込めません。

ひとつの例は、植物に発生するウイルスは、なかなか動物には取り付きません、レセプターがないのです。同じ動物でも人間に取り付くウイルスが、牛や豚に取り付く話はあまり聞きません。これも同様にレセプターがありません。

レセプターがない限りそのウイルスは細胞に入り込めません。

こんな条件を「種特異性」と言います。さらに話を進めますと人間でも、肝臓細胞に取り付くウイルスは、肺細胞に取り付いて肺炎を起こしませんし、肺炎を起こすウイルスは肝臓ではお呼びではありません。

これを称して、「臓器特異性」とも呼んでいます。

ところが今回の口蹄疫のように、牛から豚、ヤギから鹿まで、偶蹄類の動物に発生し、足と口周のぜんぜん異なった部位に症状を出すマルチウイルスは、大変数が少ないく、それだけにこの病気の対応の難しさが問われるのです。

もうひとつ厄介なのが、変異するウイルスです。鳥インフルエンザが騒がれたのも、元は豚のインフルエンザだったものが、人間に感染する新型インフルエンザになったように、いつの間にか姿と性質を変えることが出来るウイルスが増えてきたことも、不気味です。

といって、すべてのウイルスが、自分たちの特性に合った、宿主がいたからといって、簡単にレセプターに侵入することは出来ません

取り付くことの出来ない細胞がたくさんあります。種特異性も同じ、細胞のレセプターも同じなのに、入り込むことが出来ない理由は、先客がいてこのレセプターと細胞を占拠しているからです。その先客の名前が免疫抗体です。

この免疫抗体が居座っているかと言えば、その昔同じ仲間のウイルスがレセプターを通して細胞の中に入り、増殖し細胞破壊を起こし、細胞宿主を痛めつけたことがあるので、その細胞はそのときの記憶を忘れず、レセプターにそのウイルスを特別に防ぐ、抗体と言う守備隊を派遣し、おなじウイルスが侵入しようとすることをブロックしていたのです。

細胞が記憶を生涯忘れなかったら、終生免疫抗体と言って、同じ仲間のウイルスは、生涯この細胞宿主に取り付くことが出来まません。

もうひとつ短期的に、レセプターを守っている傭兵がいる細胞があります。

それはウイルスの仲間を真似たり、またはおとなしく飼いならしたり、都合よく利用したりして細胞に取り込み、活動を控えめにした反応を起こさせ、人工的に抗体守備の傭兵を作り、守らせています。

その傭兵がワクチン抗体です。

ワクチンについては説明の必要がないでしょうが、ワクチン抗体の傭兵の弱いところは、いつまでも持続してレセプターを守ってくれないことです。

パートタイマーのように時間が来ればなくなります、さいど新しくワクチン抗体を作らなければいけませんので面倒です。

少し面倒ですすが、ワクチンで防げるのなら、あらゆるウイルスのワクチンの抗体を、作ればいいのではと考えられますが、それが難しい。

ウイルスの仲間は、少しずつタイプの違う形で、何千何万いるか想定が出来ないほどの種類がいることです。

これを全部に対応するとしたら、考えただけで不可能です。それとウイルスは形を変えたり、新しく生まれたりたえず千変万化の様相を呈します。

これら新しき、古き、大きい、小さい種類の異なったウイルスは、いつでも何処でも、隙さえあれば細胞レセプターのありかを探していることです。

それに対する防御傭兵を作るワクチンも、そんなに種類が用意されませんし、またワクチン抗体の低下や不全などで効力に疑問があったりして、細胞宿主は絶えずウイルスの侵入に戦々恐々の体です。

さらに困ったことは、このウイルスは動物、植物だけでなく、微生物すなわち細菌にまで取り入ることです。

細菌に取り入ったウイルスをファージーと呼んでいますが、このファージーは細菌から細菌へと渡り歩き、ある細菌が持っている特長を次の細菌の特徴と一緒にすることが出来るので厄介です。

薬品に対する抵抗性のある細菌などは、このファージーの形をしたもので、細菌とウイルスの連合体のようなもので、始末が悪いです。

さてもう一度、ウイルスと防御対策について、ワクチン対応も含め考慮しましょう。

一昨年世界的に大発生すると言われた、豚由来のウイルスによる新型インフルエンザが、当初ワクチン不足による抗体産生が出来ないと、大衆の不安をあおり、大衆もワクチン接種もあきらめ、打たずにいようと開き直ったら、病気の発生はいつの間にか収まったようですが、そのあとになってワクチンの準備がすっかり整ったようで、すっかり後手になる珍現象も生まれます。

それだけウイルス性疾患は、発症の想定が不規則で、防御が難しく対策が後手になることが多いのです。

宮崎の口蹄疫の発生も、予見できたなら早期出荷もしただろうし、消毒から防疫対策まで万全を期すことが出来たでしょう。

何で発生したか、発生範囲が何処まで拡大し、いつ終息するかが分からない限り、基礎的な対策を地道に行うより方法がありません。

誰の責任だ、政府が手抜かりだ、行政の対応が悪いと言っても、解決にはならないのがウイルス性疾患の特徴です。

新型インフルエンザのワクチン生産問題にしてもそうです、パンデミックだ、世界的流行だと騒ぎ、死者何万人と想定する報道が絶えず聞かされたから、パニックになりワクチン不足で行政の責任が追及されました。

そうして今日現在、1億5千万ドーズのワクチンが準備されましたが、その時には、この病気の発生はなくなり、ワクチン接種も誰もしません。

懸命にワクチンを作らせ、緊急輸入させたこれらのワクチンの処分はどうするのか心配です。

残念なことに、ワクチンの有効期間は1年間、その1年間の間に発生の症状も兆候もなかったとしたら、すべて無駄になります。どこかで再度新型インフルエンザが発生することを願っている関係者もいないとは言い切れません。

それより、もっと政府、報道機関が冷静だったら、こんな騒ぎが大きくならず、損失も少なくて済んだでしょうが、すべて後の祭りです。

このようにウイルスの病気は不条理で、時には恐ろしい悲劇を生み、いつまでも常駐して病気を長引かせたり、ぱっと咲いてぱっと散るような、短日時で終わるような、気まぐれ性質もあります。

そこでわれわれ生物体は、どんなウイルスの侵入にも負けない、基礎的免疫抗体をもつことが大事になります。

レセプターを通じて、細胞に入ってきたウイルスが、自分のコピーを作る前に、邪魔をしてコピーを作らせない働きをする機能が自然治癒力といいます。

これは人間、動物、植物がもつ、自然に備わった防御力であって、自分の生命体に入った物体が、有利のものか不利のものかを見分け、不利のものには特殊蛋白を作って防ぎます。これが自然の中で自動的に行われることが、自然治癒力です。

たとえば切り傷が自然に治るのは、自己を再生する自然治癒力で、その生物の遺伝子の中に組み込まれた再生能力です。

これらの再生能力をはじめ、細菌感染、ウイルス感染、がん細胞などの、非自己の活動をいち早く察知し、それの拡大を防ぐ手段を構築できることが、自己防衛で自己治癒力であり、自己免疫抗体力です。

これらの自己治癒力を司どっている物質の第一番は、動物では血液です。

血液は細胞に酸素、栄養素、免疫物質を全身に分配する三つの役目があります。

この血液が順調に流れなかったり、酸素、栄養素が少なく、また免疫に大切な白血球のなかのマクロファジー、好中球と、血小板に異常があれば、自然治癒力は衰えます。

そのほかにリンパ球での免疫のなかに、B細胞とT細胞があります。B細胞は抗体という特殊なタンパクを作り、ウイルスを捕らえ増殖させません。T細胞はNK細胞(キラー細胞)をつくり、感染した細胞もろともウイルスをやっつけます。

このような相互的なシステムが備わり、一定の体内環境の標準化を絶えず図っていることを、恒常性(ホメオスタシス)といいます。

このような状態を細胞に認知させることが大切で、動物、植物問わず、恒常性を作ることがウイルス対策でしょう。

この恒常性を失うことがいくつかあります。人間を例に取れば、生活習慣、ストレス、脳活性などの不全です。

生活習慣は病気を呼び、高血圧、糖尿病、動脈硬化などの引き金になり、過食、飲みすぎ、喫煙、肥満、ストレスは免疫力にダメージを与えます。

脳神経の安定があれば、精神的に落ち着き、ホルモンの活力も活発になりますが、不安定ですと免疫抗体の増殖ができません。

それと酵素の活性力です、私たちの体はあらゆる酵素で活動します、のその酵素を力も大切です。

ところが、宮崎の口蹄疫が大きな地域に拡大した原因のひとつに、大群飼育で家畜同士が隣接していたことと、狭い場所で肥育されている拘束動物特有のストレスがあったことです。

そのストレスは大群飼育だけでなく、病気予防のためのワクチン接種、健康増進と病気予防のための薬剤投与、これらの薬剤は、悪玉菌を抑制するためですが、必要な善玉菌をも殺します、これは免疫力を落とします。

ことの肥育牛、肉豚生産は早く大きく太らせるのが目的で、和牛は肉に脂肪が入ることが価地を高めます、肥満家畜は人間のメタボと同じで不健康、当然、生態の免疫力低下なども考えられます。

畜産農場は、肉になる豚、牛だけでなく、生まれ立ての子供から、その母親、元気のよいものから若干病気がちな家畜まで、種々雑多です。

ウイルスはどの家畜にも侵入しますが、弱い病気がちな家畜、免疫力のない小さな子供などでは、ウイルス感染への抵抗力は少なく、一度発生した農場のウイルスは力を増し、それからそれへと宿主を変えて、仲間を増やします。

こうなると発生家畜の淘汰より、新しい発生頭数の方が多く、この追いかけっこが大発生になりました。

すべて結果論ですが、「モシ if」があったとして、ウイルスに暴露感染されても、免疫抗体の自然治癒力があったとしたら、発生しなかったかもしれません。

動物、植物に限らず、強い体質と免疫力を作ることが、ウイルスと病原菌を防ぐ最大の防御方法です。

この項おわり

来週は、免疫力アップと病原菌防御の素材、天然のフミン酸とフルボ酸の技術会議のため、カナダへ出張しますので、お休みします。