プロバイオティックとプレバイオティック

〜有用微生物による腸内健全化が健康の源〜
(畜産の生菌剤の能力は、人間のプロバイオティックより優れる)

養豚の業界紙から、私たちが扱っている「畜産用プロバイオティックとプレバイオティック」について原稿を執筆して欲しいと依頼され、先週拙文を提出しましたが、これらプロバイオティックやプレバイオティックは、必ずしも畜産動物だけの問題ではなく、本来は人間の健康維持に、重要な役割を果たしているものと思い、この題材を取り上げました。

業界紙が私どもに原稿を依頼したのは、すでに長い年月畜産用のプロバイオティックを販売している実績があり、その商品の紹介も兼ねてのものでした。

もっともこの依頼は、当社だけでなく他の有力畜産用プロバイオティック、プレバイオティックの製造者へも執筆を頼んだ「プロバイオティック、プレバイオティック」特集号の企画によるものです。

と申すのも、畜産業界ではこのプロバイオティックとプレバイオティック商品が、すでにかなり普及して、現在鶏、豚、牛などの畜産動物と水産養殖に抗生物質の代替製剤として使用されていますので、こんな企画が注目されます。

ことに私どものプロバイオティック製品は生菌剤と言い、動物の腸内で発生する疾病対策と同時に、サルモネラ菌、病原性大腸菌など、人間にとっての有害な菌が、生産した肉、卵などに移行汚染し、人間に危害が及ぼすのを阻止する目的で、生産農場に普及しています。

その背景には、畜産生産物の薬品残留皆無を目指す生産農場の意向が、抗生物質から生菌剤に変更機運となって現れ、その生菌剤のなかには抗生物質と同じ目的を要求されるものまであります。

このように、畜産で使われるプロバイオティックは、人間が目的とするのとは少し違い、生産に寄与しその上、生産物の安全も陶冶しようとする、いくつかの目的を持っています。

まして抗生物質、抗菌剤など薬品排除の使用基準には、かなりのリスクもあり、プロバイオティックでは防ぎきれない、病気発生の問題も抱えながら使用しています。

それと比較しますと、人間用のプロバイオティックは、健康を保持向上しようとする健康志向の強い人たちに愛用され、その人たちをターゲットに商業化したプロバイオティック商品で、直接的に病気を治したり、効果の即効性を保障もしていません。

それだけに使用しない人も多く、また使用していても何処が良くなったか自覚しない人もかなり多いでしょう。

それと比較して畜産用は、卵の生産性、肉の増量、飼料要求率向上、斃死率などはっきりと数字に違いが現れ、使用費用と効果の経済性まで検討され、プロバイオティクの性能の良し悪しが比較されますので真剣です。

さてプロバイオティックとプレバイオティック、似たような発音の品物は、何が違うのかの説明から入りましょう。

プロバイオティックは「生菌剤」と言う様に、生きた菌で微生物製剤です。

その生菌は腸内に入って、腸管に存在している有用常在菌と仲良くし、有害菌を排除する協力をし、また有用菌を増殖する応援団になる性質を持つことが大切です。

それがため、プロバイオティックの代表菌は、人間の腸内に多く存在する「乳酸菌」「ビフィズス菌」などがあげられます。

そのほか広範囲に「納豆菌(枯草菌)」「糖化菌」「酪酸菌」なかには「酵母菌」までが仲間に入ります。

ただしこれらの菌は、そもそも体内で増殖するその人独自の腸内細菌叢でないため、ひと働きした後体外に排出される「通過菌」です。

一方プレバイオティクは菌ではなく、難消化性の食品です。

代表的なプレバイオティックは「オリゴ糖」です。

その他食物繊維、難消化性の多糖類、澱粉などが上げられます。

これらの食品は、腸管の上部消化管で加水分解せず吸収されず、大腸、結腸までまで届き、結腸などにある菌の栄養となって、その菌叢がより健全に発育し、健康的な腸管を作る、そのことにより宿主、すなわち人間の全身的健康効果を勝ち取ることを目的としたもので、作用は間接的です。

この理論はまだ新しいもので、1995年英国のギブソン(Gibson)博士が発表した、腸管の有用菌を選択的に増殖するには、有用菌の増殖培地を与え作ることが大切で、ことに善玉の偏性嫌気生菌(酸素が嫌いな菌)が育つ、大腸、結腸の菌叢を増やすには、途中で消化吸収されない、難消化性食品が大事でその食材を「プレバイオティック」と命名したことにより、がぜんプロバイオティックに代わり話題になりました。

ご承知のよう、私たち人間の腸内には100種類以上、100兆個以上、重さにして約1.5キロのさまざまな菌が常駐し、ある菌は消化酵素を出したり、ある菌は酵素の働きを助けたり、ある菌は食物の分解を早めたり、腸管機能の健全化を促進させる働きに貢献し、仲間を増やし子孫を増殖し、やがて死菌となり排泄される、新陳代謝を行っています。

排泄物の半分あるいは三分の二が腸内細菌の死骸とも言われ、その活躍は大変なものです。

この菌叢を大事に育て有害細菌に占領されないために使われるのがプロバイオティクとプレバイオティックだと解釈していただくのが、一番分かりやすいです。

ただ私はプロバイオティックの代表「乳酸菌」製剤が、果たしてどれだけの働きをしているか疑問のときもあります。

実際、乳酸菌飲料やヨーグルトを飲んだり食べている人だけが腸内が健全かといいますと、必ずしも当てはまらず、そんなもの一回も食べなくても、快便、快食で健康体の人たちを多く知ってますし、プロバイオティックの虜になりながら、いつも胃腸を壊している人も知っています。

東日本大震災でヨーグルト製品が市場から消えて一ヶ月ほど姿がありませんでしたが、胃腸障害が多発したとは聞きません。

そんな現象を見ますと、本来人間の体や腸管は自発的に必要な微生物菌叢を自然に作り、その餌になるプリバイオティックは、天然オリゴ糖を含む、タマネギ、ニンニク、麦類、ニラ、ネギ、大豆などで代用し、腸内有用菌の繁殖を促進させたのでしょう。

生菌のプロバイオティックにしても、乳酸発酵の漬物、麹菌発酵の味噌、枯草菌発酵の納豆など発酵食品と、さらに自然界に無数存在する有能プロバイオティックを、知らずのうちに食物と一緒に摂取し、腸内細菌叢を作っていたと思われます。

このような意見は、畜産のプロバイオティックとの対比があるからです。

畜産のプロバイオティクは、生産性向上剤で病気を治し、成長を促進し、美味しくて安全な肉と卵を作るはっきりとした目的を持っていますし、臨床的な生産性対比試験でも、試験区、対照区の比較が数字上はっきりと検証されます。

その比較においては人間用のプロバイオティックは、目的も作用効果の検証も貧弱です。

まして私どものプロバイオティックが作る有能酵素は、腸内での有害菌の抑制から、有害菌の出す有毒素の分解まで可能性があります。

そのような能力を求められるのが、畜産のプロバイオティックです。

そんな機能は残念ながら、人間のプロバイオティックにはありません。

またそんな機能を付加したら、プロバイオティックでなく、薬品としての登録が必要でしょう。

ところで、私は毎朝ヨーグルトを食べています。

牛乳の乳糖が時として消化に問題を起こすことがあり、ヨーグルトの発酵した乳酸菌入り牛乳は、消化も吸収も安心です、さらに多分私の腸管のコンディションを整え、私の健康に寄与していると思います。

人間の健康は「腸内の健全化から始まる」の例えがあるよう、私も「腸管健康のためヨーグルトを食べる」これが習慣になってからかなりの年月になっています。

もしも買い置きがなくなったり、ホテルの朝食になかった旅行中など、ヨーグルトを食べなかったそんな日は、何か大きな忘れ物をしたようないやな気分が残ります、それもストレスになるとしたら、腸管には悪い影響で、健全化がはかれません。

このようにプロバイオティックを摂取し始めると、やめるのが少し怖くなります、だから続けます、腸管は決して悪くはならないはず、そんな気持ちが働く、人間とはこのような心理の持ち主なのです。