インフルエンザワクチンを考える

〜ワクチン免疫効果の是非が問われる難しさ〜
(豚も鶏も人間も同じ仲間のインフルエンザウイルス)

「ワクチンを接種していてもインフルエンザに罹りました」

私の周囲の人たちの中に、数名こんな方がいます。

そもそもワクチンは効果が無いものなのか、ワクチンで作った免疫抗体価を
超える強毒なウイルスの攻撃を受けたのか、
またはワクチン株と違うウイルスに感染したのか、
感染した本人も医療関係者も簡単にはわかりません。

しかし現実は、インフルエンザに感染しないため、高いお金を払ってワクチンで
予防したのに発病した事実だけ残ります。

「インフルエンザのワクチンの効果はない」

「だから私はワクチンを打たない」

「打たないでいてもインフルエンザに罹らない」

などの声もたくさん聴きます。

その逆に、「ワクチンをしていたので、周りの人大勢がインフルエンザに
罹ったのに私だけ罹らなかった」などの声もあり、

「ワクチンのおかげで、インフルエンザに罹ったが、軽くて済んで寝込む
ようなことがなかった」との話もあります。

「やはりワクチン予防しなくては、ことに高齢者は」そんな意見も多いです。

相談する医者の多くは、やらないよりやった方がよいと結論付けます。

私も毎年11月下旬ごろ、インフルエンザワクチンを必ず接種します。

すでに15年間ほど続けています。

「なぜワクチンを打つのですか」と聞かれたら。

「安心のためですよ」と答えます。

実際ワクチンを打ってあるという安心感と自信は、インフルエンザ流行の話を
聞いても、私は大丈夫という精神的な安定感が、免疫力を高くしているのかもしれません。

効果がないと言われるワクチンですが、幸いなことにここ何年にも渡り、
高熱が出て下痢嘔吐、全身倦怠筋肉痛など、
顕著なインフルエンザ症状の風邪をひたことはありません。

今年の正月も発熱をしましたが、7度2分ほどで安静に寝ていたら一晩で
平熱になりましたので、普通の風邪だったのでしょう。

もしかしてインフルエンザウイルスに感染だったかもしれませんが、
ワクチンを打っていたから軽度の症状で済んだのだと思います。

さていま私たちが摂取しているワクチンは、
三種類のウイルスを弱毒化した死毒ワクチンで、
受精鶏卵で培養して製造したものです。

この三種類のウイルス株は、1968年〜1990年に大流行した
「香港カゼ」と言われたH3N2のA型株とB型、2009年に流行った
「豚インフルエンザ」と言われたA型H1N1株です。

余談ですが、養豚業者からはH1N1の株の名称を「豚インフルエンザ」と
言わないで欲しいとクレームが出ています。

ところでこの株と同じウイルスが今年の流行になっているかどうかはわかりません。

いや同じ株でも若干の変異があると、ワクチン効果はなくなります。

また鶏卵を培地としてウイルスを増殖している間に、
鶏卵のなかでウイルスが順化し、変形しているかもしれません。

そうなりますとウイルスの毒性が無くなり、ワクチンとは名ばかり、
ただの水を打っていることになります。

それでも近代の科学は進歩していて、疫学的分析と診断が定着しているので、
効果ないワクチンはないと思いますが、ワクチン製法の方法は検討の必要もあろうかと思います。

そもそもワクチンは、私たちの体にウイルスや細菌など異物侵入を防ぐ
免疫力を高めるために行うもので、一度軽い病気を起こさせ、
抗体という物質が細胞の中に充満し、新たな病毒ウイルスが侵入しても、
安住して増殖する細胞を無くし、追い出して発病させないシステムです。

これは先天的にもっている防疫機能でなく、後天的な防御法で獲得免疫とも言います。

ところがこの免疫力は、弱毒化したウイルスでワクチンを作りますから、
強度感染した真正のインフルエンザ発病で作った獲得免疫と比べたら、
抗体価は低いし全ての細胞に抗体が行き届いてない人がいるかもしれません。

または体質によりその時の健康状態により、ワクチンの免疫抗体が上がりにくい人もいます。

言い換えればワクチン効果は、パーフェクトではないと言えます。

そこで効果が高かったとか低かったとか、発病がなかった、
発病してしまったなどと、両極端の評価がされるワクチンになるのです。

ところで私は、畜産動物との接触は長く古いです。

この畜産の病気対策のワクチン接種は、人間と同じいやそれ以上数が多く、
過去にワクチン投与の病気管理のプログラムをよく作ったものです。

そのさまざまなワクチン種類の中で、呼吸器病系のワクチンの効果率が
最も不安定だったとの実感を持っています。

ことに鶏の伝染性気管支炎(IB)などは、絶えずウイルスの形が
変わり対応が難しく苦労しました。

鶏の法定伝染病のニューカッスル病も呼吸器病で、
過去は死毒ワクチン注射で面倒でしたが、現在は弱毒化したウイルスを使う生ワクチンで、
飲み水かスプレーで接種し、呼吸器機関の上皮粘膜で免疫抗体を作ります。

さらに伝染性気管支炎のウイルスと一緒にした、二価ワクチンとなり効果と
作業の能率化、簡素化に貢献しています。

ただし経験的にいいますと、健康的な生体で畜舎環境がよくきれいな空気で飼育されている動物と、
汚い畜舎で病気がちな動物に、同じワクチン接種した後、
血液採取し中和抗体価の数値をはかりますと、その数値が健康なものは高く、
不健康は低い結果が示され、かなりの相違があることも発見してます。

これは私たち人間も同じで、慢性病や生活習慣病、空気汚染がひどくストレスの多い環境、
不規則な生活と過度な飲酒、喫煙の習慣などと、
ワクチン効果とは比例するものと思います。

話題になっている鳥インフルエンザに触れましょう。

ご存知の方もいるでしょうが、数年前に日本で発病したウイルス株(H5N1)と、
今年の冬発生している株(H5N8)は違いますので、
ウイルス対応も難しくなります。

中国で2〜3年前採取されたウイルス(H7N9)は、鶏の発病は軽く、
人間への感染がかなりの数になった新しい形の株でした。

いま韓国で流行している株と、日本で今年発病したものは非常に似ていますので、
おそらく渡り鳥などで運ばれたものでしょう。

台湾で現在大発生している株は3種類(H5N2 H5N3 H5N8)あり、
日本と韓国とは違うものです。

このように、インフルエンザウイルスは人間、鶏、豚などに発病する株は、
基本的には同質のウイルスでその数は144種類になると言います。

それゆえ、144種類のワクチンをすべて製造は不可能です。

その中で過去に人間に感染発病させた、数種のウイルスを弱毒化し、
ウイルスを殺しその死んだ細胞を注射する死毒ワクチンを私たちは注射してるのです。

もし鶏の呼吸器病ワクチンのよう、生きたウイルスをワクチン化できたら、
真正の感染者が現れる危険がありますが、抗体産生効果は高いと思います。

死毒ワクチンの注射は、筋肉注射で確実性はありますが、
効果の方は効く効かないで問題を投げかけるものになっています。

さらに幼児や学童など、注射の痛さにおびえる姿も考えると、
飲水やスプレーの生ワクチンの開発が待たれと思うのは私一人でしょうか。

それにしても、困ったウイルスのインフルエンザですが、
まずは身体を健康に保ち、自然の免疫抗体を沢山付加することで防ぎましょう。